Revi《リヴァイ》部〜青春倶楽部復活譚〜

しらたぬき

さよなら私のドリーム計画

私は秋山愛あきやまあい!

すがすがしい朝、桜咲く並木道を行く私は今日から女子高生だ!

デュフフ!! 思わずスキップしそうだぜ!!

同時に今までの苦しさもかみしめて泣きそうにもなるが。


私が合格したのは憧れの名門女子校「桜扇女子高等学園おうせんじょしこうとうがくえ ん!!」

通称”オーセン”って呼ばれて親しまれてる。

ここはお受験の難関校で、受かるまでは本当に地獄の毎日だった。


中学ではガリ勉でオタクで根暗の陰キャ。

オーセンに受かって、華々しく高校デビューするんだって心に決めていた。

こんな陰気臭い自分から抜け出したいという強い想いが私の原動力になったってワケだ。


合格が決まったらすぐにコンタクトにしてメガネは捨てた。

髪も真っ黒から校則にひっかからない程度のダークブラウンに染めた。

いいじゃん。意外と悪くねぇぞ。


これでもうネクラでえない私とはオサラバッッ!!

祝福するかのような桜吹雪の中、こうして私は約束された栄光の未来へと繋がる通学路を歩んでいた。


オーセンに着いて入学式に出席した私は感動もそこそこにソワソワしていた。

もうね、まったく校長先生の話とか頭に入ってこないんだわ。


だがそれにはちゃ〜んとした理由がある。


オーセンに通ってるいとこのお姉ちゃんから、ある部活のウワサを聞かされていた。


その名も“異文化交流会いぶんかこうりゅうかい!!”


表向きは海外交流のていをなしている。

だが、実際には他校の生徒、特に異性との交歓会こうかんかいの場と化しているらしい。


なにせ一流の名門女子校だ。相手もただの男子高校生ではない。

交歓会こうかんかいにやってくるのは名門学校やブランドのある学校の男子ばかりだ。

良家の跡取りもいれば、資産家のおぼっちゃまも居る。

当然、将来有望な医学部志望者や弁護士志望者などエリート男子もワンサカ。


学園内部からのタレコミである。信憑性しんぴょうせいはかなり高い。

中学時代にそのウワサを聞いた私に電撃が走った。

鮮烈な高校デビューをキメて、玉の輿こしにのりてぇなぁと。


その時から私は固く決意したんだ。

絶対にオーセンに合格して“異文化交流会”に入る。

そしてい遂とげるステキな殿方とのがたを探そう―――と。


ぐふふ。んん〜たまんねぇなァ。

そんなかんだで私は入学式の最中だというのに気が気でなかった。

膝の上に置かれた部活案内のパンフレットを開きたくてウズウズする。


一刻も早く楽園パラダイスの扉を叩くぜ!!

薔薇色ばらいろの妄想している間に入学式は終わっていた。

感動に涙したり、楽しそうに合格を実感する女生徒たちをよそに、私は血眼ちまなこになってパンフレットをめくった。


「――――――――あったッ!! “異文化交流会”ッ!!」


私ははやる気持ちを抑えながら部室棟へ移動した。

思わず小走りになっていた。


「はぁ……はぁ……ここが……ここが憧れの……!!」


思わず息を荒げてしまった。鼻からも吐いたり吸ったりしている。

部室棟3Fの窓際、角部屋にその扉はあった。確かに「異文化交流会部室いぶんかこうりゅうかいぶきつ」と書いてある。


私は深呼吸をすると胸を張って扉を開いた。

こんにちは!! 私のリア充ハイスクールライフ!!


「初めまして!! 私、新入生のあき…………」


私は固まった。

なんか、こう、想像しているのと違ったんだな。これが。

だって、そこにいたのは男子受けしそうな可憐かれんな女子達では無かったんだから。


まず目に入ったのは普通の部室なのに逆立ちをして器用にバランスをとっている少女。

スカートの下にスパッツをいてはいるものの、スカートは真っ逆さまに垂れ下がっている。

お腹に至っては丸出しだ。


チラリとブラまで見えている。胸はヒジョーに大きく、重力に正直だった。


「うおデッカ!!」


何を隠そう私はガチの貧乳コンプックスなのだ。神経質に反応せざるを得ない。

ゆえに思わずその”圧”に押され、腰を抜かしそうになってしまった。


「お……? しんっ、にゅぅせいっか……?」


次に目にとまったのはイスにそっくり返って座り、エレキギターを構えた少女。

こちらを見るとニヤリと笑いながら器用な手さばきで指先をスクラッチさせた。


♪テレレー↑テレレー↑テレッ↑テレ↑テレレレー↑レー↓レー↓ ギューゥンムッ!!


「イイェーイ!! ロックだぜェ~~~~ッ!!」


(うるせェ~~~!! エレキギターをスピーカーに繋いでやがるし!!)


ドンッ!! ドンドンドンドンッ!!


隣の部室からの激しい壁ドンの音が響き渡った。

待てよ、確かここは角部屋でこっち側に部屋は無い……。

すぐに考えるのを止めた。


まだ居る。白衣でメガネをかけたいかにも知的そうな少女。


「おや、計画通りですね……」


(とか意味深につぶやいてら)


なんだかちょっと前の自分を見ているような気がして寒気がした。


その奥には優雅そうにお茶をしているゆるふわガールが居た。

まさに私の想像していた異文化交流会部員像とピッタリだ。


「あらあら、うふふ…………」


そうそう、これだよ。これ。お嬢様みたいだし、こうでなくっちゃな!!


一番奥の窓際にはまるで刑事ドラマのようにブラインドの間から外を見つめる少女、いや、幼女が居た。

周りの反応に気付いてか、彼女は振り向いた。

そしてアニメ声のようなキンキン声で語りかけてきた。


「やぁやぁ。新入生さんかな? ようこそそ、Reviveリヴァイブへ」


(背ェ低ッ!! これホントに高校生かよ!? 小学生だろ!!)


そして、思わず聞き返した。


「え……? 今、なんて言いました?」


「だーかーらー。ここは”Reviveリヴァイブだよ。わっかんないかな~」


ナメてもらっては困る。私とて伊達に受験勉強してきたわけではない。




「……”Reviveリヴァイブ”  生き返る、よみがえる、回復する、復活する、復興する、再び流行する という意味ですね?」


「おー、さすがオーセンに受かるだけはあるね。発音もバッチリ。それに、Web辞書のコピペみたいな模範解答もブリリアントだね~!」


妙にカンの良い私は答え合わせの前に気づいてしまった。


この”Reviveリヴァイブ"とは英単語の"Reviveリヴァイブ”と部活名をかけて「リヴァイ部」なのではないかと。


「そう!! ここは”Reviveリヴァイブ"と部活名をかけて名付けたReviリヴァイ部なのでーす!!」


(うわ~、当たってもちっともうれしくねぇ!! 嘘でしょ⁉ ここは異文化交流会なんだ!! そうだろ⁉)


もう一抹いちまつの希望にかけるしねぇ!!


「ま、待って下さい!! ここって異文化交流会の部室ですよねぇ!?」


私がそういうと部室は少しだけ沈黙に包まれた。


あれ……私……間違った事……言って無くね……?

……言って無くね?


すぐ幼女は声をかけてきた。

それは私のドリーム計画をブチ壊す一言だった。

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