パズル
天川裕司
パズル
【意味怖】タイトル:(仮)パズル
▼登場人物
●夢子(ゆめこ):女性。30歳。OL。
●流鏑馬(やぶさめ)君:男性。30代。夢子の会社の同僚。夢子の片想いの相手。セリフなし。イメージだけで登場しなくてもOKです。
●涼子(りょうこ):女性。30歳。夢子の会社の友達。
▼場所設定
●夢子の自宅:都内のマンション。
●会社:一般的なデザイン企業のようなイメージで。夢子が働いている。
NAは夢子でよろしくお願いいたします。
(イントロ+メインシナリオ+解説=3169字)
イントロ~
皆さんは趣味でパズルを組み立てた事はありますか?
一時期とても流行りましたよね~♪
最近はそんなパズルの中にも「光るパズル」ってあるんですよね。
今回はその「光るパズル」にまつわる怖いエピソードです。
メインシナリオ~
ト書き〈会社〉
NA)
私の名前は夢子。
今年30歳になる、どこにでもいる普通のOLだ。
周りはみんな結婚していって、なんだか私だけ取り残されたような感じ。
会社と自宅の往復で、1日を終えていく。
その1日が積み重なって1週間が過ぎていく。
その1週間が積み重なって1ヵ月が過ぎてゆく。
全部、1つ1つの組み立てによって過ぎていく。
「これが人生だ…」
そんな事が、私がこれまでお気に入りで読んでいた本の中に書かれていた気がする。
まさに私の人生そのものかも知れない。
夢子)「はぁー、私にも輝かしい未来があるのかなあ。出来たら結婚して、子供と幸せな家庭を作って、将来的にも安定した人生を送る事が出来れば、どんなにいいものだろう…」
NA)
そんな事を最近よく考えている。
ト書き〈パズルを組み立てる夢子のイメージ〉
NA)
でもこんな私の趣味はパズルを組み立てる事。
これは中学校の頃からの趣味で、パズルを1つずつ作っていく・組み立てて1枚の絵にする…と言うデリケートながらも芸術的な創作に、私は心の底から魅力を感じていたのだ。
夢子「よし、くよくよしても仕方がない。今日も帰ってパズルの続きやろう」
NA)
今も未完成のパズルが家にある。
私の家は都内にあるマンション。
会社から電車で1駅の所にあり、往復しても30分掛からない。
だから私は仕事を終えたその足ですぐ自宅へ帰り、作り掛けていたパズルの続きをやるのだ。
ト書き〈帰宅〉
夢子「ただいまー」
NA)
今日もいつも通りに帰ってきた。
「ただいまー」と言うのは家できちんと待ってくれているパズルに対して。
ト書き〈パズルの紹介の感じ〉
NA)
実はこのパズル、光るパズルとして売っていたもので、部屋のインテリアにも丁度いい置物・飾り物になると勧められ購入したものだ。
電気や月の光、太陽の光でもその光を吸収し、消灯後でも何分か明るく光を放っていてくれる。
夢子「今日も小さい光だけど、私の為に明かりを灯してくれているわねぇ。ありがと」
NA)
テーブルの上に大々的に広げられたそのパズルは、今日もパズル用に小さく灯しておいたミニライトを吸収し、そのライトを照射してくれている。
ト書き〈ミニライト〉
NA)
このミニライトはセットでタイマー出来るもので、私が帰る15分前ぐらいに自動的に点灯し、10分後に消える仕組みになっている。
それが恒例となり、私は何となくそのミニライトが消えて、その光をパズルが放ってくれているだろう時間帯を狙って帰るようになっていた。
夢子「ちょっと待っててね。ご飯作って、お風呂沸かしてきたら、またアナタの続きをやるからね」
NA)
私はいつも通りにやる事をやり、テーブルについて、またパズルに向かった。
ト書き〈数日後〉
NA)
それから数日後。
私はいつものように会社で仕事している。
夢子)「うふふ、なんだか最近楽しくなってきたわ。家に帰って誰もいないのが普通なのに、私の場合はあのパズルがちゃんと待っていてくれるんだもの」
NA)
私は最近、妙に仕事に張り切るようになり、プライベートも充実して来ていた。
もうすぐパズルが完成する。
完成したらまた次のパズルを買ってきて、部屋の中のレイアウトに仕立て上げる。
部屋のレイアウトも私は昔から好きであり、これまでに200ピース、500ピース、1000ピース、それ以上のピースのパズルを何枚も飾っており、部屋の中はまるで博物館だ。
夢子)「そろそろ次に買うパズルを見つけておかなくちゃ」
NA)
そんな事も考え、私はとにかく早く仕事を終えて、出来るだけ早く部屋に帰ろうと思っていた。
もちろんその時は、「あのパズルが私の為だけに灯してくれる明かり」が見える時間帯に。
ト書き〈帰ってもパズルが光ってない〉
夢子)「あれ?光ってないじゃん」
NA)
その日、仕事を終えていつもの時間帯に部屋に帰ってみると、光っている筈のパズルが光っていない。
夢子)「もしかして…」
NA)
私はすぐミニライトの電池を確かめた。
夢子)「やっぱり…」
NA)
どうやら電池が切れていたようだ。
私はすぐ電気屋さんに行き、ミニライト用の単三電池を10個ばかり買ってきた。
夢子)「これでよし、と」
NA)
ミニライトにきちんと電池をセットして、次の日からの光るパズルの為の環境設定をしておいた。
ト書き〈地震発生〉
夢子)「え、なに?地震!?」
NA)
部屋に戻って数分後、結構大きめの地震が発生。
夢子)「きゃあぁあ」
NA)
結構長く揺れており、家の物がガタンガタンと落ちたりもした。
夢子)「ふぅ、おさまった?」
NA)
数分後、地震はおさまった。
でもどうやら停電したようだ。
私はミニライトを手に取り、家の片付けをし始めた。
このミニライトは置物用のライトにもなり、懐中電灯のように持ち運びも出来るから便利だ。
ト書き〈1年後〉
NA)
それから1年が過ぎた。
私はあのパズルをとっくに完成させて、これまでと同じように部屋のレイアウト用の置物にした。
ト書き〈失恋〉
NA)
しかし悲しい事があった。
私が密かに片想いしていた同僚の流鏑馬君に、私は見事にフラれたのだ。
夢子)「はぁ…わかってたけど、やっぱり失恋って辛いもんだなぁ…」
NA)
お先真っ暗。
世界がグラグラ崩れていくようだ。
私はその日1人で飲みに行った。
夢子)「私の人生の相棒って、あのパズルだけなのかなぁ」
NA)
そんな事をグチグチ考えながら、その日は適当に切り上げ、また部屋に戻った。
夢子)「ただいまー。あは♪ちゃんとまた光ってくれてるねパズル君。いつもありがとね」
NA)
習慣付いた行動で、やはりミニライトが消える頃に私は帰ってくる。
テーブルの上ではちゃんとパズルが暖かな光を灯してくれていて、暗くなった私の心をほんのり明るくしてくれた。
ト書き〈数日後〉
NA)
それからまた数日後。
私の部屋に友達・涼子が遊びに来た。
涼子)「大丈夫だって、元気だしなよ!又その内いい人現れるから」
夢子)「うん、ありがと」
NA)
涼子は流鏑馬君にフラれた私を慰めてくれ、その日ずっと一緒にいてくれた。
ト書き〈涼子の帰宅時〉
NA)
そして帰る頃。
どうも車のルームライトが壊れたようで、車内のどこかに落ちた家の鍵を探すからと、私にライトを貸してと言ってきた。
私はすぐいつものミニライトを手に持ち、マンションを降りて行って、涼子の車に持っていってあげた。
涼子)「あれ、つかないよこれ?」
夢子)「ん?うそ?このまえ電池変えたばかりだよ?貸してみて」
夢子)「あ、電池反対に入ってた!ごめんごめん」
NA)
そう言ってまたライトを渡し、涼子はそのライトを頼りに家の鍵を見つけたらしく、そのまま帰っていった。
解説〜
はい、皆さんわかったでしょうか?
今回の意味怖のカラクリを。
簡単に説明していきます。
今回の意味怖は2段階の形でやって来ています。
1つ目は、電池が反対に入っていて点く筈のないライトが光り、その影響でパズルが光っていた事。
2つ目は、地震の時に夢子はミニライトを片手に部屋の片付けをしますが、その時も光る筈がないライトが光っていた事、です。
涼子に言われて初めて電池が反対に入っていた事に気づく夢子ですが、夢子はそれまで電池が反対に入っていた事を全く知らず、ミニライトの電池部分を触った事も1度もありませんでした。
ちなみに余談ですが、どうやら夢子が組み立てていたパズルのデザイン原作者は、独身で生涯を終えた貴婦人だったとの事。
その貴婦人は自分の生涯の伴侶を自分のデザイン・そのデザインが使われるパズルだと決めていたようで、その事を考えると、夢子の淋しい心にそっと寄り添ってくれたあのパズルが、それとなくまた意味怖の奥行きを灯してもくれますね。
これまでに書かせて頂いたYouTube動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=gzVwcu6nWOs&t=332s
パズル 天川裕司 @tenkawayuji
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