眠り続ける不眠症
天川裕司
眠り続ける不眠症
タイトル:(仮)眠り続ける不眠症
▼登場人物
●根霧(ねむ)レナ:女性。35歳。徹底的な不眠症に罹ってしまう。どうしても眠りたいと願い続ける。いろいろ治療を受けるが、全く改善されない。
●双需沙羅(そうじゅ さら):女性。30代。レナの「どうしても眠れるようになりたい」という本心から生まれた生霊。
●強面(こわもて)先生:男性。50代。レナの主治医。レナの不眠症には正直のところお手上げ状態。
●同僚:レナの会社の同僚。女性。30代。
●上司:レナの上司。男性。50代。
▼場所設定
●各星(かくせい)企業:一般的なIT企業のイメージで。レナが働いている。
●レナの自宅:一般的なマンションのイメージで。ベッドは大きめで。
●ヤブ心療内科:レナが通院している。一般的な精神科のイメージで。
●バー「リラクゼーション」:お洒落な感じのカクテルバー。沙羅の行き付け。
▼アイテム
●「脱・インソムニア」:不眠症改善の液体薬。沙羅がレナに処方する。だがその実は「飲んだ人を永久に眠りに就かせる」という恐ろしい代物。沙羅は「不眠症を改善したい!」というレナの願いを叶える為だけに渡した。
NAは根霧レナでよろしくお願いいたします。
イントロ~
皆さんは、不眠症で悩んだ事ってありますか?
私はあるのですが、
「やっと眠れるようになったぁ」
なんて不眠症が治った時でも、ちょっと注意したほうがいいようです。
今回は不眠症で悩み続けた、或る女性にまつわる怖いお話・・・
メインシナリオ~
ト書き〈各星企業にて〉
NA)
私の名前は根霧レナ。
今年35歳になるバリバリのキャリアウーマンだ。
ト書き〈回想シーンを交えつつ〉
NA)
私は都内でも一流の各星企業に入社した。
入社1年目から思いきりキャリアを積み、私はこの歳で課長の座に就いた。
でも私には1つ、大きな悩みがある。
それは・・・
ト書き〈自宅ベッド上にて〉
レナ)「眠れない・・・!昼間はちゃんと起きて、生活リズムも狂わさないで一生懸命やって来てるのに、どぉして眠れないのよォ!?あームカつくわ!」
NA)
不眠症。
それも普通の不眠症ではない。
主治医が言うには、
「普通の人の10倍はひどい不眠症」
との事。
「10倍」と言うのがよく判らないが、詰りはそれだけ改善が難しいという事。
レナ)「はぁ~~。・・・ホントどうしたらいいのよォ・・・。今週末には重役会議もあるし、新企画のプレゼンもあるし、片付けなきゃいけない仕事は山ほどあるし、私の部署の環境改善の起案も出さなきゃいけないっていうのに・・・」
NA)
実はもう丸1週間、ほとんど寝てない状態。
こんなのいつまでも続けてられない。
「一刻も早く何とかしなければ・・・!」
そう焦れば焦る程、眠れない。
ト書き〈数日後〉
NA)
それから数日後。
同僚)「ちょっとレナ、あんた大丈夫?」
レナ)「ふぇ?」(やつれた寝ぼけ眼で)
同僚)「目の下、クマだらけ!それにめっちゃやつれてない?」
レナ)「ははは・・・そぉ?」
NA)
私も役職に就いている。
簡単には休めない。
ト書き〈新企画を任される〉
上司)「じゃあ頼むよ。今度の企画は大切だから、絶対ミスのないように」
NA)
今度の新しいプレゼン企画を頼まれた。
でもまともに仕事出来る状態じゃない。
これまで不眠症を理由に何度か休んだ。
だからもう休めない。
レナ)「はぁ、弱ったなぁ・・・」
ト書き〈ヤブ心療内科〉
NA)
仕事帰り。
私は掛かり付けの心療内科へ行った。
レナ)「先生、何とかなりませんか?どんなお薬も効かなかったんです!何とか眠れるようにして下さい!お願いします!でないと私、会社クビになるかも知れないんです!今も全く眠れない夜が続いてて・・・お願いします!!」
強面)「前にも言いましたがレナさん、あなたの不眠症は精神の奥深くから来ているもので、ちょっとやそっとの治療やお薬では効かない状態なんです。だから短期間で治そうとはせず、もっと長期的な視野で治す事を考えて・・・」
レナ)「それじゃ遅いんです!今何とかしてくれないと・・・!」
強面)「ふぅむ・・・」
NA)
結局、カウンセリングを受け、いつもの眠剤を貰って帰された。
レナ)「はぁーダメだ。もうホントに仕事辞める事、考えなきゃ・・・。こんなんじゃ、私の体が先にまいってしまうわ。仕事よりも自分のほうが大事だし」
NA)
そんなこんなを考えていた時。
ふと前方を見ると、全く見た事の無いバーがあった。
レナ)「バー『リラクゼーション』・・・?こんなのあったっけ」
NA)
「リラクゼーション」という言葉に惹かれ、私は入ってみた。
ト書き〈バー「リラクゼーション」〉
レナ)「へぇ。なかなか洒落た感じね」
NA)
私はもう半分ヤケだった。
薬もカウンセリングも効かないなら、お酒の力を借りる!
そう思い、アルコール度の強いカクテルをジャンジャン注文した。
レナ)「ヒック!もうアタシ、どうなったっていいわ!何やったって眠れないんなら、ここで酒飲んで果ててやる!ヒック!ホント、何で眠れないのよォ」
NA)
カウンターで散々愚痴っていた時。
1人の女性が声を掛けて来た。
沙羅)「こんばんは。ご一緒してもいいかしら?」
レナ)「ふぇ?」
NA)
見ると結構キレイな人。
歳の頃、私と同じくらいか。
彼女は私の隣りに腰掛け、いろいろ話し掛けて来た。
彼女の名前は双需沙羅。
なんでも精神科でカウンセラーをしているらしい。
レナ)「カウンセラーさん、なんですか?」
沙羅)「ええ。こじんまりとした個人経営の病院ですが、郊外で心療内科を開業しています。先ほど少し聞いてしまったのですが、眠れないのですか?」
NA)
いきなり訊いて来た。
私はもうヤケクソだったので、今の悩みを全部ぶちまけた。
全く眠れない事!
掛かり付けの医者がヤブな事!
会社は会社でどんどんどんどん私に仕事をおっかぶせて来る事!
もう死にたいほど毎日の生活に嫌気が差している事!
疲れ果てている事!
すると沙羅は冷静にこう言った。
沙羅)「分かりました。それではレナさんに最良のお薬を差し上げましょう」
NA)
そう言って瓶入りの液体薬を1本差し出した。
レナ)「ヒック!・・・何ですかコレ?」
沙羅)「それは『脱・インソムニア』という液体薬でして、まぁ栄養ドリンクのようなものです。その昔、西洋の国で発明されたお薬なのですが、その効果が余りにも強過ぎた為、その後、市販も処方も中止になってしまいました」
沙羅)「ですが、不眠症を治すのには効果てき面で、改善の余地を埋める為にも、今度は人体に支障の出ない栄養ドリンクとして生まれ変わりました。今のあなたにとってはきっと、最適な、素晴らしいお薬になると思いますよ」
沙羅)「それを飲めば体の倦怠感が先ず無くなり、眠気もすっかり消えて、毎日の生活が快適なものになるでしょう。いかがです?お試しになられては?」
NA)
沙羅にはどこか、不思議なオーラが漂っている。
彼女にそう言われると、例えそれがインチキでも信じてしまう。
でもいきなりそう言われても、と私の理性が少し反発してみた。
レナ)「ハハ、そんなの嘘でしょう。そんなお薬あるワケが・・・」
沙羅)「いいえ、レナさん。信じる事ですよ。これを飲めばきっとあなたの『今の状態』は改善されます。そして新しい第2の人生を手に入れる事が出来、あなたの生活は見違えるでしょう。おススメ品なのでお薬の代金は無料です」
NA)
無料と聞いて心が揺れた。
取り敢えず貰い、試してみる事にした。
レナ)「じ・・・じゃあ、お試しで・・・」
NA)
そのあと少し喋ってから店を出た。
ト書き〈不眠症が治らない〉
レナ)「ホントにこんなの効くのかなぁ・・・」
NA)
その夜。
「脱・インソムニア」は怪しかったからすぐには飲まなかった。
でも・・・
ト書き〈深夜2時〉
レナ)「うぅ・・・ダメだ!眠れん!絶対、眠れんわコレ!」
NA)
やっぱりいつものように眠れない。
神経が昂っているのか、一向に眠れる兆しが無い。
体はクタクタなのに眠れない。
窮地に立たされた私は、「脱・インソムニア」を手に取った。
そして一気に飲んだ。
レナ)「もう何でもいいわ!飲んでやる!」
レナ)「これで眠れるのよね!もし眠れなかったら承知しないから!」
NA)
独りでブツクサ言いながら、布団を思いきりかぶった。
2時半・・・3時・・・3時半・・・4時・・・。
レナ)「くぅ~~~全っ然ダメじゃないのォ!!なぁ~にが不眠症を治すには最適の薬よ!ホントにただのインチキじゃないコレぇ!騙されたぁ~!」
NA)
遂に朝の5時。
窓を見ると、もう明け方の光が差し込んでいた。
一睡もせずまま、また会社へ行かねばならぬ。
この時、本気で辞職を考えた。
ト書き〈次第に体が楽になる〉
NA)
不眠の上、フラフラな私。
でも1日が始まった。
起きなきゃならない。
顔を洗いながら、今日、辞職願を本当に提出しようと考えていた。
でも・・・
レナ)「・・・なんだろ、なんか体がラクになってる感じ・・・」
NA)
最近ずっと引きずってた体の怠さを感じない。
すっかり軽くなった気分。
それにしつこい眠気も感じなくなっていた。
ト書き〈会社にて〉
NA)
会社でもらくらく。
驚くほど仕事が捗る。
やはり眠気を感じず、体が軽い。
すこぶる快適だ。
レナ)「なんか凄いじゃない・・・。すっかり変わったわ・・・私・・・」
NA)
目の下のクマも消え、やつれた顔にも生気が戻って来た。
ト書き〈数週間後〉
NA)
私は今日も元気に働いている。
更には驚く事に、不眠症がすっかり改善されていた。
「脱・インソムニア」の効果は確かなものだったのだ。
レナ)「はぁ・・・眠れるって、幸せ・・・」
ト書き〈解説の感じで:自宅ベッドで眠り続けるレナを見ながら〉
沙羅)「フフフ、幸せそうね。眠りながらこんなに笑顔を見せてくれるなんて。すっかり顔のやつれも取れて、健康体そのものね。でもずっとベッドで寝たきりだから、こうして私が定期的に栄養を与えてあげなくちゃ。フフフ」
沙羅)「私はレナの『どうしても眠れるようになりたい』という本心から生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れた。あのお薬『脱・インソムニア』はね、その人を永久に眠りに就かせる薬なのよ。眠っている状態だから眠気が無いのは当たり前、体も睡眠をしっかり取れてそれなりに健康を保てる」
沙羅)「眠りの中にドラマが生まれ、そのドラマをまるで本当の人生のように生活して行く。レナはそれに気付く事無く、生涯、暖かな夢を見続けられる」
沙羅)「私が今してあげている点滴には栄養の他に筋肉維持の成分も含まれてるから、運動不足に悩む事も無いわ。レナはずっとベッドの上で眠り続ける。でも、果たして本当にこの状態がレナにとっての幸せだったのかしら」
ト書き〈更に笑顔のレナを見ながら〉
沙羅)「フフ、また笑った。この笑顔を見ている分には、きっとこの状態でも彼女は幸せなのね。現実で普通に生活する、という本来の生活を捨てた事で、あなたは夢のような第2の人生を手に入れたのよ。夢の中で、お幸せにね」
エンディング~
現実で生活を続けていれば、いつ又、不眠症になるか分からない。
そんな面倒臭い現実よりも、夢の中の生活を選んだレナ・・・。
果たしてどちらが幸せだったのでしょう?
不眠症で心底悩んだ人にしか、分からない現実かも知れませんね。
これまでに書かせて頂いたYouTube動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=TOiC5Lq-Sgg&t=68s
眠り続ける不眠症 天川裕司 @tenkawayuji
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