𝐒𝐜𝐡𝐨𝐨𝐥クエスト
碧海海月
第1話 始まりのはじまり
「面あり!勝負あり!」
審判の声が会場に響く。それと同時に会場の静かな空気はとび歓声があがる。
悔しく泣きそうな顔を手で抑える。そして、表彰式を終え手には準優勝の証だけが残った。
「応援してくれた、保護者の方々ありがとうございました!」
試合終わりに保護者への感謝を伝える。親からは、感動で泣いてる人もいた。監督は目を赤くさせており、それを見て自分や仲間たちも涙を流してしまった。
「先輩方、三年間お疲れ様でした。今回の悔しい思いを忘れず稽古に励み、来年の大会は優勝します!」
自分達が育てた後輩に自分達の思いを届け、自分の高校剣道は終わりを告げた。
「いやぁ、俺達の青春も終わっちまったな〜。にしても、お前の決勝戦は本当に凄かった!流石、うちのキャプテン。」
「まぁ、負けちまったけどな。これからは、大学受験に向けて勉強ばっかだよ。」
そんな会話を同期としている時だった。自分の体が光だした。
「なんかお前光ってね?」
「気のせいだろ、と言いたいところだけど、完璧に光ってるな。」
光は段々と強くなり出し、自分の手がというか体全体が透けてきている。
「やばいやばい、俺死ぬんか?死んでまうんか?」
「お、お、お、落ち着け!とりあえず救急車!」
「救急車でどうにかなるか!早く、霊媒師を…。」
これが俺の現世で残した、最後の言葉だった。
「真田君、起きて。」
この声は確か弓道部の日野森さん?何で俺を呼んでいるんだ?というか俺は何を……。
「はっっ! ここは、天国か!?」
ベットから起き上がり周りを見る。周りには見た事がある顔が九こある。
「勇気やっと起きたか、お前を待ってたんだぞ。」
「お、お前は。俺の親友、柔道部の矢守焔だと!?何でお前がここに!」
「わかりやすい、人物紹介ありがとな。とりあえず、お前が最後の一人だ。早く立て。」
焔が、俺の手を掴み強引に立たせる。今から、どこかに行くのだろうか。皆が動き出す。
「皆、どこに行くんだよ。ていうか、ここはどこだ?」
「魔王討伐の旅にだよ。」
「は?」
魔王討伐?そんな異世界ゲームみたいな事が現実にある訳……。
「おぉ!よく来てくれた九つの勇者たちよ!お主達を待っておった。そんなた達には、早速魔王討伐に行ってもらいたい!」
現実にあっただと!しかも、王様からのお願い!定番の定番!
「王様ー!質問でーす!どうやって僕たちをこの世界に呼んだんですかー?」
この呑気な声は茶道部の柊恵!なんて緊張感のない声を出しやがる。空気をよめ!ここは「こ、ここは、ど、ど、どこなんですか?」と、緊張した声で言うのが定番だろ!
「うむ、恵君の質問に答えよう!君達はこっちの世界に何故か来てしまっただけなのだよ。」
「え?あなた達が召喚したとかではなく勝手にこっちに来たんですか?」
これには俺も思わず、王様に質問してしまった。普通こういうのは王様が勝手に召喚し、俺達を理不尽に魔王討伐をさせると、決まってるのだが、
「その通りだ!勇気君。なんか城の目の前にデッケェー光の柱が落ちてきて、そこを見てみたら君達が倒れていたのじゃ!」
王様は、相変わらず威厳のない声で返答する。それにしても、まじかよ。そんなことある?
「それで、何で魔王討伐なんだよ。別に俺達がやる必要なくね?」
このやる気のない声は、eスポーツ部の八代夢。王様には、敬語を使え敬語を!
「その通りじゃ、しかし君達は非常に強い魔力を感じる、この世界の常識を知りここで働いて生活するのは苦になるのでは無いか、それなら魔王討伐に言ってもらうのはどうか、と考えての!」
ここまで言って王様の目と声のトーンが少し下がり雰囲気が変わる。
「と言っても、魔王はとても恐ろしいやつじゃ。この前は1つの国を落としてしまった。今の君達が戦っても魔王おろか、魔王の四天王の足元におよばんじゃろ。ここからは選択じゃ、別に君達は事故でこっちに来てしまっただけじゃ。普通に生活したいのなら、わしらもサポートしよう。」
国を1つおとす。普通の人間じゃ、あまりにも考えられない事だ。そんなやつと戦うのなんて考えたくもない。
「少し、みんなで考えさせてください。」
「うむ、じっくり考えてくれ。この選択は君達にとって運命を大きく左右するのじゃから。」
俺達十人は集まり考える。ここで、ようやく俺は誰がいるのか把握した。
弓道部の日野森咲夜
茶道部の柊恵
新聞部の八代心
文芸部の神楽桜
吹奏楽部の九条龍斗
テニス部の海国誠
空手部の矢守焔
eスポーツ部の八代夢
帰宅部の氷室蓮
そして、剣道部の真田勇気の俺だ。
計十人。そして、俺らは全員部長という共通点。(帰宅部はわからん!)
「ていうか、俺らは元の世界に戻れないのか?魔王討伐なんてまっぴらごめんだ!」
「それが、できるなら私達とっくに戻させて貰ってるでしょ。」
八代夢の意見に答える夢の双子の姉八代心。この2人は中性的な見た目と声をしているため、近くで顔を見ないとどっちがどっちなのか判断できない。
「帰るのが出来ないなら、普通に暮らそうよ。そんな危ない事やりたくないよ……。」
弱気な声で神楽桜が答える。
「確かに僕もその意見に賛成かな。国を破壊するやつとなんて戦えるわけない。」
意見に賛成する、九条龍斗。それに同意する海国誠。ずっと黙り込んでいる、氷室蓮。皆がそれぞれの意見を言い合い話がまとまらないな中一人の透き通った声が皆を静かにする。
「皆、静かに。そんな、意見をぶつけ合ってもどうしようもないよ。」
日野森咲夜の声が響く。
「私は、魔王討伐に賛成かな。だってどっちにしろいつかは魔王にこの国も襲われるんだから。」
「どうして、そんな事がわかるんだよ。」
強い言葉をかける夢にも、冷静に回答する。
「だって、私たちに頼るって事は私達の他にできる人がいないと言うことなんだから。」
みんなが、顔を、はっとさせる。俺もそんな事に気づかずにいた。
「そんなると、みんな私達がやる事は分かるよね。」
みんなが、黙って頷く。
「王様、答えが出たよ。俺達はやるよ、魔王討伐を!」
俺は王様にそれを告げ。始まりがはじまった。
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