頂きます
天野 みろく
第1章 熊井
私の名は熊井 晴明。
私は人付き合いが苦手で会社の飲み会や、集まりは悉く避けてきた。
それでも友人と呼べる人は何人かいた。
そんな友人に誘われてもしばしば断ったりした。
1人が好きなのである。
気を使って金を使うのが無駄だと感じていた。
果たして気を使う事自体友人と呼べないのかもしれないが…
休みの日は好きなマンガや、テレビばかり見てダラダラと過ごすことが唯一の至福の時間であった。
寂しさなんて感じなかった。若い時までは…
私は現在59歳である。
私『来年はいよいよ還暦か…』
親、兄弟は皆死んだ。親戚付き合いもした事がなく天涯孤独の身になってしまった。
今更後悔しても遅いが、結婚して子供でもいれば違う人生になっていたかも知れない。
職も転々としてきた。
今はパン工場のアルバイトで生計を立てている。
コンベアで流れくるサンドウィッチにピクルスを2枚入れる単純作業である。
熊井『あ〜また単純作業のお出ましかー!
サンドウィッチ班班長ピクルス担当熊井 晴明のお出ましだぞ〜』
と、心の中で威張ってみる。
自然と独り言が多くなる。心の中で思っている事も知らずに口に出すことも多くなった。
流れ作業の私の左隣は性格の悪い佐々木さんだ。佐々木のババァはトマト担当で4切れのトマトをパンに並べるのだか、その左隣りのババァとおしゃべりしながら作業しているせいかトマト1枚忘れている事がしばしば…
熊井『足りないよ。佐々木さん!』
佐々木『いちいち、うるさいわね!流れてるんだから気がついたもんが入れなさいよ!』
熊井『は、はぁー』
佐々木『だいたいアンタね、陰気臭いんだよ。本当キショいわー。ねぇ、田中さん。』
田中さんは、ババァの左隣にいるレタス担当のババァだ!
田中『本当!キショい!』
きゃ、きゃ、きゃ、きゃー
コイツら…クソがつくババァだな。
そして私の右隣は、きゅうり担当の横島さんだ。気が弱くいつもおどおどしている。
熊井『横島さん!きゅうりは3枚だって言ってるでしょ!一枚足りない!』
横島『す、す、すみません。』
どいつもこいつも…
俺は熊井なんだぞ。なんめんなよ!
と心の中で叫んだ。横島さんを見ながら…
横島『そ、そんな…わ、私、く、熊井さんのこと、なめてなんかいません。』
熊井『え? 俺は、な、何も…』
血の気が引いて行くのがわかった。
心の中で言ったと事だと思っていた。
次の日から横島さんは出勤する事は無かった。
熊井『俺は、頭がおかしくなって来たのかも知れない。』
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