カキフライ

@mariko1873

その1

 その店で食べた『カキフライ』は別格でした。


店で食べたと云っても、メニューに在る訳でも無いし、裏メニューと云う訳でも無いのですが…


私が、かつて勤めた「イタリアン」の賄いが、その日『カキフライ』だっただけであって、私でさえ、後にも先にもその店で『カキフライ』を食べた事はありません。


そもそも「イタリアン」に『fritto』は有っても『フライ』と云うメニューは無いのですから、賄いだからこそのメニューだったと云えます。


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 その店では 16:00 から賄いが始まります。

全員が一緒に賄いを頂くのがルール。

時代的に云えば「同じ釜の飯を食う」と、云う事でしょうか。


 そんな中でコミュニケーションをとったり、人となりを感じる事が、仕事をする上でも必要であったのでは無いかと、今更ながら思うのは最近の諸事情を鑑みての私信であります。


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話が逸れましたが…


賄いでは、最初にパスタが提供されます。多い時では十数人分のパスタを仕上げるにはフライパンを振るだけでも、相当な体力が必要です。


パスタを人数分の皿に盛り付けると賄いの始まりです。


テーブルには、大皿にサラダ菜、パンが置かれ、塩、胡椒、オリーブ油の他、賄い用のワインもります。(ワインは飲み放題でした)


パスタを食べ終えると各自パンを取り、自分の皿に残ったソースやオイルを拭い取り、お皿を綺麗にしてからサラダ菜を各自が盛り付けます。塩、胡椒、オリーブ油も自分の好みで…


賄い担当はこのタイミングで、厨房に戻りメインの料理を仕上げます。


もちろんメインのメニューは日替わりで、スーシェフの力量が問われる事となります。


〈幸いな事に、この店のオーナーシェフは寛容で、賄いに掛かる経費、ワイン代等を、とやかく云うような人では無かったのです〉


メインの料理を頂き、皆の皿が空くと、若いスタッフが皿を下げテーブルを綺麗にし、食後のコーヒーと為ります。


エスプレッソを人数分淹れるのが、当時の私の役割でした。

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