第2話 あだ名
女性は「キノ」と名乗った。
本名を言おうとする気はなかったように思えた。
だから俺も「ユキ」と名乗った。
雪村だから、ユキ。
そんな単純な名前をつけた。
キノは俺の専業主婦のようになった。
俺が休みの日にやるような窓拭き、洗面台の掃除なんかもやってくれた。
おかげで俺は仕事で出世した。
キノのおかげである。
だからなおさら、キノを殺そうという気は
なくなった。
人を殺す時はどんな気持ちなのか、
そんなことを知りたいという思いだけで
キノを拾った。
キノを拾ってから俺にはいいことばかりが
起きている、
はずだった。
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