第53話 収穫ゼロ

アイテムやスキルを受け取った後、俺はサミー婆さんにFOEというゲームの情報を聞かせて貰う。

有用なアイテムやイベント情報を得る為に。


――だが、残念ながらその収穫はゼロに等しかった。


その理由として、FOEの最高峰コンテンツのほぼ全てが魔法帝国に集約されていた点にある。

魔法帝国では強力なスキルや魔法を習得出来、更に勇者一行の装備なんかもそこでのみ手に入れられる物だったらしいのだが……


なんと魔法帝国は、魔神竜エクセランサスによって既に滅ぼされてしまっていたのだ。


サミー婆さん達がこの世界に来たのは既に滅ぼされた後の様で――彼女達の装備やスキルはゲーム内で手に入れた物がそのままだったらしい――生存者なしの完全崩壊状態。

なのでイベントNPCは元より、プレイヤーでは作れない装備やアイテムを生み出す技術まで完全に失われてしまっていた。


んで、それ以外の情報も大したものはなく。

情報として得られる物はほぼなかったという訳である。


ま、召喚や馬鹿みたいに強力な装備を手に入れられたから別にいいけどな。


貸して貰った装備は絆の力という指輪型のアクセサリーだ。

効果は全ステータス+30とかいう、聖女のタリスマン以上のステータス補正を持つ頭のおかしい物だった。

さすが世界を救った勇者パーティーの装備だけあるぜ。


で、これにはパーティー時に自身とメンバーを強化する効果があり。

パーティーの人数×20%攻撃力が上がり、人数×10%防御力――魔法防御も含む――が上がるとか言う出鱈目な物だった。。


人数は最大で10人なので、これがあればメンバー全員の攻撃力と防御力が三倍になる訳だ。

ステータスアップと言いパーティー強化と言い、マジでぶっ飛んでる。


三倍と二倍になっただけで、10人が100人分の仕事を出来るのか?


結論からズバリ言うなら余裕。

そもそも攻撃力三倍はダメージが三倍以上に跳ね上がるからな。


OTLは攻撃力から防御力を引き算して、各種補正をかけた物がダメージとなるからな……


例えば攻撃力5,000で、防御力3,000の敵を叩いた際のダメージは500だ――ダメージは引いた数から4で割り、PVPは8で割る。

で、攻撃力が三倍になると、15,000引く3,000でダメージは6倍の3,000にまで跳ね上がる。

まあ相手の防御力次第である程度変わるとは言え、この様にその差は倍率よりずっと高くなる訳だ――仮に補正を含めて考えても、基本乗算除算であるため割合的には同じ。


逆に防御の方は敵の攻撃力が馬鹿高いので半減は難しいだろうが、それでもダメージが大きく下がるのはデカい。

なにせ大型ボスの失敗理由の大半は、回復が間に合わずタンカー勢が潰され押し切られたり、広範囲の強烈な攻撃に耐えられず味方が死にまくって立て直しが間に合わずってパターンが大半だからな。


なので大幅な耐久力アップは、純粋にクリアの確率を大きく高めてくれるのだ。


因みに、OTLに蘇生魔法はない。

死んだらリスポーンポイントでペナルティ&5分待機後に復活する形式で、討伐空間のある大型ボスはポイントからボスまでは結構な距離があるため、復帰には最低でも10分は見ておかなければならない。


ぶっちゃけ、大量死はもうほぼ討伐失敗と考えて貰って差し障りないだろう。


「それじゃあ、影の討伐頼んだよ」


「頑張ります」


強力なアイテムを借りる事は出来たが、結局、強い奴を9人用意するというのがそもそも難しいのだ。


その上で、絶対成功する自信が無ければ挑むつもりはなかった。

なので任せろとは言わない。

日本人特有のふわっとした返答、頑張りますと返しておく。


『タカダ様、少し宜しいですか?』


婆さんの屋敷を出て狩場に向かう途中、ユミルからの念話が入った。


『どうかしましたか?』


『実は少々困った事になりまして……どうかタカダ様にお願いしたい事があるのですが……』


どういやらイベントの様だ。

レベル上げの気分をくじかれ、俺は内心ちょっと面倒臭いと思いつつも――


『俺に出来る事なら何でも言ってください』


――そう爽やかに答えた。


ま、なんかいい報酬くれる事に期待するとしようか。

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