第49話 別ゲー
「あ、戻った」
竜牙兵を討伐後、HP1なのでバグリンに空中から落として貰ってダメージを受けて死んで戻ろうと思っていたのだが、それをするまでも無く精神空間から戻って来た。
どうやら討伐でも戻って来れる様だ。
「ふぅむ……まさかあれを倒してしまうとはねぇ。あんたひょっとして……ゲームプレイヤーかい?」
「!?」
サミー婆さんの口から急に飛び出て来た、ゲームプレイヤーという言葉に俺は面食らう。
「その表情、どうやら当りみたいだね。まさか数百年後の未来に、アタシと同じゲーム世界に放り込まれた人間と遭遇するとはねぇ……」
やっぱ俺以外にもプレイヤーはいたか。
「ゲーム世界に放り込まれた……それじゃサミーさんも俺と同じ――」
「ああ、アタシは――」
「オーバー・ザ・レジェンドのプレイヤー」
「ファンタジー・オブ・エターナルのプレイヤーさ」
「ん?」
「へ?」
あれ?
聞き間違いか?
サミー婆さん、今全然違う名前を言った様な……
「えーっと、今なんて言いました?」
「ファンタジー・オブ・エターナル。通称FOEだよ。アンタは何て言ったんだい?」
「俺はオーバー・ザ・レジェンドです。通称OTLですけど……」
「……」
「……」
聞き間違いではなかった様だ。
まさか違うゲームのプレイヤーもこの世界に来ていたとは……いや、そう考えるのは早計か。
ゲームは海外版で名前がある事があるって聞くので、ひょっとしたらサミーさんは海外勢なのかもしれない。
名前もサミーだし。
「えーっと、俺は日本人なんですけど。サミーさんはどこの国の方です?」
「あたしも日本人だよ。本名は
バリバリ同じ日本人だった。
「あんたの名前は?」
「俺の名前は高田雄二です」
「高田雄二か。確かに日本人の名前だねぇ。ふむ。アタシは自分のプレイしていたこのゲームの世界に放り込まれたんだけど……あんたから見てこの世界はどうなんだい」
自分のプレイしていたゲームの世界に、か。
どうやらOTLとFOEは名前は違えど、舞台や設定は共通している様だな。
しかし謎だ。
それだけにてるなら話題に出てきたはず。
だが俺はファンタジー・オブ・エターナルなんて名前は聞いた事も無い。
ま、その辺りはどうでもいいか。
ゲーム世界に飛ばされるなんて超絶的異常の前に、その程度は所詮誤差だ。
「まんまOTLそのままです。イベントまでほぼ……というか、サミーさん思いっきりゲーム内のキャラでしたし」
そして彼女のイベントを攻略すると、強力なスキルが手に入る。
だからこそ俺はここに来た訳だ。
でなきゃ、見た目幽霊屋敷みたいなよく分からん場所に着たりはしない。
「あたしがゲームのイベントの一部……それは何と言うか……あれだねぇ」
ゲームキャラである事を伝えると、サミーが困惑したような顔になる。
この反応を見る限り、FOEのNPCとして彼女は出て来ない様だ。
「一つ聞きたいんですけど」
俺はふと、ある考えに思い至り尋ねる。
それは――
「ひょっとして、魔神竜エクセランサスを倒した勇者パーティーってのは……」
出自のしれない謎の超人達。
勇者一行がゲーム外からやって来て、急激に力を付けた存在ならその経歴が不明なのも納得出来るという物だ。
そしてもしそうなら――
「ああ、もちろん全員ゲーマーさね。ついでに言うなら……あたし達は同じクラン、神の雷――ゴッドサンダーのメンバーだったのさ。人数は5人と少なかったけど、FOEではちょっとしたとこだったんだよ」
名前は今一だが、まあメンバーは全員一騎当千だったんだろうなという事は分かる。
何せ、たった5人で魔神竜エクセランサスと戦ったぐらいだからな。
OTLでエクセランサスと戦う事は出来ない。
メインストーリーに絡みはするが、封印が解かれる事はないからだ。
だが、その分身である魔神竜の影となら戦う事が出来た。
最大200人まで参加可能な最高ランクのボス。
究極レイドの一体として。
でだ、結論から言うと、OTLにおいてこいつは現状討伐不能と言われていた。
何せ廃人が200人寄り集まって数十回挑戦して、一度もそのHPを半分以下にする事すら出来なかった訳だからな。
なので、こいつの討伐はアップデートによるプレイヤーの強化が入るまで不可能だと言われていた。
そしてそんな無理ゲーと言われていた影より、本体は更に強いはず。
それを勇者パーティーはたった5人で封じている。
つまり彼らの実力は、廃人200人を軽く凌駕している訳だ。
「なるほど。世界を救った勇者の肩書は伊達じゃありませんね」
別ゲーム出自というのが少し気になるが、彼らの強さの秘密や情報を聞き出す事が出来れば、俺は更に強くなる事が出来る。
つまりこれはチャンスだ。
何せイベントで得られるスキル一つとっても破格な訳だからな。
そう考えた俺は――
「OTLじゃ魔神竜は伝説レベルの魔物ですし。それを倒したプレイヤーがいるなんて、本当に凄い事ですよ。勇者パーティーの皆さんは、俺の目指す完成形ですね。尊敬します」
――笑顔で御機嫌取りを始める。
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