第42話 ご加護
「神よ、我らに守りの力を――ホーリープロテクション」
光の妖精――聖女ユミルが魔法を発動させる。
どうやらパーティー(?)単位の魔法の様で、俺とバグリン、それにユミルの体が薄っすらとした光の膜に覆われた。
「ホーリープロテクションは、属性と状態異常に対する防御魔法になります」
「凄いですね」
俺はホーリープロテクションの効果を素早く確認する。
この手の
光属性を100%カットし、闇属性・全状態異常を80%カット。
そしてそれ以外の属性は50%カット。
滅茶苦茶強力だ。
プレイヤーの使うこの手のバフは、どれか一種類30%とかそんなレベルだからな。
まあNPCは偶にそれ以上のバフをかけてくれる事もあるが、それでもここまで強力なのは早々お目にかかる事はない。
因みに、消費元は俺のMPだ。
ま、HPがそうなんだからそりゃそうだわな。
「純粋な強化は他にもホーリーブレッシングがあるのですが、お渡ししたポーションの強化と同一になりますので……そちらは私が使う意味はないかと」
「ああ、まあそうですね」
エリクサーのバフは、聖女の魔法が付与されている訳か。
本来はワンオフ品だからそうポンポン使えない訳だが、俺の場合は清涼飲料張りに気軽にがぶ飲みできてしまうからな。
「それ以外ですと……神よ、その神聖なる神雷の刃をかの者に授けたまえ。ゴッドライトニングブレード!」
ユミルが魔法を使うと俺のMPがモリッと減り、腰に差していた短剣二本がバリバリと雷のエフェクトを放ちだす。
どうやら武器に雷属性を与える系の魔法の様だ。
『わー、ばちばちしてるー』
あと、何故かバグリンもバチバチしてた。
ひょっとして俺の武器扱いなのか?
バグリンは。
「これは攻撃時に光属性の雷の刃を飛ぶ魔法になります」
「光属性なんですね」
「ええ、れっきとした光魔法になります」
この世界には雷の属性がちゃんとある。
だがこの魔法は雷っぽいけど光属性の様だ。
「威力はタカダ様の武器の威力と、私の魔力が基準になります。射程距離は私の魔力で伸びる感じですね。なので近距離なら追加ダメージで、遠距離なら神雷で攻撃といった使い方が出来ます」
「いいですね。それで射程はどれぐらいなんですか?」
「今の私の魔力が160程ですので、射程は160メートルになります」
「160ですか」
まあ何となく察しはしていたが、やはり聖女ユミルは超越者枠の様だ。
OTLは、NPCも基本的にプレイヤーと同じ仕様となっている。
そのため、レベルとステータスの上限は補正を除けば99となっていた。
だがごく一部のNPC――超越者と呼ばれる強NPCだけはこの枠から外れる。
彼らはステータスの上限は元より、プレイヤーでは絶対に身に着けられないキチガイレベルのスキルを有していた。
そのためSランク程度の装備しかしていないにもかかわらず、イベント戦闘などではレジェンド装備のプレイヤーを、パーティー単位で相手出来る程に強かったりする。
ダストンとか馬鹿みたいに堅かったからな……
臨時連合――複数パーティーで討伐する事を連合という――で挑んだ季節限定イベントのボスとして出て来た超重騎士ダストンを、1時間程かけて殴り倒したのは今でも鮮明に覚えている。
何せそれだけ時間かけて倒したのに、ドロップがゴミだったからな。
三回倒して三回共ゴミだったんだぜ?
他の奴らは良い物ガンガン出たってのに。
あれは俺にとって、史上最低のゴミイベントだったな。
ま、そんな事はどうでもいいか。
「凄い魔力ですね」
「神のご加護ですわ」
神のご加護とか羨ましい事で。
まあ俺は俺でバグのご加護があるから、嫉妬する程ではないけど。
「それで……他は回復魔法や範囲回復魔法。状態異常の範囲解除。それに結界などの防御魔法ですね。後、光属性の攻撃魔法も出来ますので、火力支援も可能です」
便利能力てんこ盛りである。
どうやらユミルは結構レベルが高い様だ。
でなければスキルポイント――魔法取得はポイントが必要――がキツキツ……いやまあ、超越者だからプレイヤーと一緒の考えは当てはまらないか。
「それじゃ……せっかくなんで、どの程度の威力か試してみますね」
まあ取りあえず、かけて貰った雷の威力がどの程度か確認させて貰うとしようか。
と、折角だし例の聖女印のエリクサーも飲んどこう。
俺はエリクサーを飲み、狩りを再開する。
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