第二話 装飾

 ブロックしたチバさんがワタシのことをSwitterで悪く言いふらしてるらしい。相互フォローしてるエミリちゃんから教えてもらった。

 

 スプレーで髪を整えてから親が寝静まったのを確認すると、箪笥たんすの奥から紙袋を取り出して、廊下を挟んで反対側にある今は亡き祖母の部屋に入る。薄ピンクとベージュのチェック柄のスカート、フリルと蝶ネクタイの付いた白いシャツに着替え、自撮りを開始する。全身鏡の前で、表情は気にせず、いろんなポーズや角度を試行錯誤する。

 

 一番かわいい画像を選ぶと、顔入れ替えアプリで加工を始める。海外のSNSで見つけた、中華系マレーシア人女子高生の顔を今日も貸してもらう。どことなくワタシに似てるのだ。


 体系の補正も加えて、何度もやり直してから、やっと自然な感じに仕上がった。『こんなポンコツな私でも存在してもいいのかな』と添えて画像を投稿する。

 

 しばらくると、Switterが騒がしくなる。数百件のいいねに続いて、『ガチかわいい』、『超似合ってる』、『かわいいは正義』、『天使降臨』などのコメントが飛び込んでくる。フォローも増えた。バズった。体中の細胞が歓喜に湧き立っている。


『今日は嫌なことあって凹んでたけど、みんなのおかげで元気になれたよ』


またしても、数分のうちにコメントやいいねが急増する。『ミッシーに嫌な思いさせるなんて許せない』、『辛かたね。ヨシヨシ』、『よかったら個別に聞くよ。いつでもメッセージしてね』、『早く元気になってほしいな』、『ミッシーは悪くないよ』、『味方だよ』などのメッセージがズラッと並んでる。


 大丈夫だ。減ってない。いつもの同じくらいの反応があった。


 今なら、分厚い雲をすり抜けて、星が満点の夜空を自由に飛び回れる。

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