第39話 エクチルさん、目覚める

「ま、まぁ昔のことは置いておいて。というかボク気にしてないし」

「……忘れていいもんなのか?」

「クロらしくていいじゃない。あ、お爺さん。お茶飲みます?」

「お、頂こう」


ズズッ……うん、美味い。

やはり緑茶は美味いのう。

エクチルさんの言っておった別の地区のお茶も飲んでみたいもんじゃ。

東と言うとったけど距離はどんなもんじゃろう?

馬車とか用意しておくか?


「う、うーん……はっ!?ここは?!」

「お、目覚めたじゃん。おつおつー」

「エクチルさん。お目覚めですかな?」

「うっ……センタローさん……クローディオ様?!」

「だから様呼びやめぇって。ボクはそんなに偉くないよーって」

「し、しかし……」

「まぁまぁ、とりあえずお茶、飲みます?」


婆さんがエクチルさんにお茶を渡す。

お茶は気分を落ち着けるにはもってこいじゃしな。

グイッと飲むエクチルさん。


「……落ち着きました。けど、クローディオ様が目覚めているとは」

「……様付けはキープするんだ」

「……ここは譲れせん。そもそもクローディオ様は以前『目覚める時は世界が終わる時』と言って眠りに入られたじゃないですか!もしや世界が?!」


えぇ……そんな大層なこと言って寝たのか?

まぁ、洞窟の奥にいて寝てたから俺が倒そうとぶん殴ったんだけどね。


「いや、待ってよ。そもそもボクは寝るつもりだったさ?けどこのジジイがボクの結界をぶっ壊しながら殴りつけてきてさー。安眠妨害にも程があるって!」

「いや、結界壊したのはお前じゃん。寝返りで割れたやん」

「……記憶にございません」

「そりゃ寝てたからな!」


バキバキと洞窟の壁が崩れて耳を塞いでも響く崩壊音……

軽くトラウマだからな?!

村の何人かその出来事のせいで閉所恐怖症になってたし!


「と、とりあえず分かりました……エルフの民に目覚めたこと、世界が崩壊しないことを伝えます」

「あ、いいっていいって。キミ達無駄に団結力高いじゃん。ここに来られても困るって」

「しかし!エルフの民は貴方様を信仰しているのです。一目見て死にたいと思うもの達に救いを!」

「えぇ……死なれたら困るからなしで」

「そこを!」


……大変そうじゃなー。

あ、婆さんや、せんべい貰えるかの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る