第33話 ジーパンと黒歴史

「ジーパン……この国だと初代国王にして転生者、シンイチがこの地に降り立ち、最晩年まで履き続けたズボンだ。ダメージカット、スタミナ無限、足技の威力強化などなど……神によってあらゆる加護が授けられた唯一無二のズボンと言われているな。今は宝物庫に厳重に保管されているはずだ」

「は、はえー……」

「まぁ、ジーパンがそんなことに」

「国王が履いていたって事で当時は色々模倣品が出ていたが、どれもその生地を再現出来なかったからサラマンダーの皮などを着色して作っていたんだが……まさかバッファローの皮とは」


……いや、本物のジーパンはコットンで作られます。

上質な綿花が見つからなかったのと、染料が見つからなくてのう……

一応探してはいたんじゃが量がまだ取れなくてバッファローの皮をいじくり回して作ったんじゃよ。


「本物のジーパンが完成するまでにはあと数年かかりますかな?着色用の素材は集まっておるんじゃがコットン……綿花がいいものがこの森にはなくてですな……儂の道楽に村のみんなを付き合わせるのは悪いと思いここまでで終わらせておるんですじゃ」

「ほう!綿花ってふわふわの雲っぽいアレか!あれの産地なら伝手があるぜ」

「まぁ!それなら他の服も作れそうですね!ぜひ紹介して欲しいです!」

「おっけーだ!いやー、建国して800年近いからもうジーパンの存在を知っている人間も少ないからな。モドキとはいえ話題性は抜群だ。俺も好きだからな!シンイチが『ジーパンにスカジャン、これが湘南を走る正装だ!』って言ってたからなー」


……お、おう。

シンイチさんは湘南を爆走していた系ですか。

って、エクチルさんは初代国王と知り合いなんですかな?!

一体いくつよ!

あ、そういえばエルフさんでしたね!

なら仕方ない。


「ジーパンにスカジャン……おや?お爺さん、スカジャンって作ってませんでした?昔よく着ていたような……」

「なぬ?!スカジャンもあるのか!?」

「あ、いやー……あれはのう……」


スカジャン、確かに作ったよ?

皮のジャンパーって聞いたらまずはスカジャンじゃね?って。

あの頃は若かったからのう……

クロと一緒に空飛んでグリフォンとか殴っておった時じゃ。

ビシッとスカジャン着てカッコつけておったが長女から『ダサい』って言われてのう……


「確か村の倉庫に置いてましたよね?あの子からツッコミ受けた後泣きながら……フフッ」

「……やめなさい。今思い出しても涙出てくるんじゃから……今思えばあれが初めての反抗期じゃったのう……」

「スカジャンか!俺が欲しいから買い取らせてくれ!シンイチの着てたスカジャン、欲しかったんだがくれなくてよー……頼む!金貨5枚でどうだ?!」


……マジで?

スカジャン売れるの?



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