第31話 ベストとベルトとズボン
「ほうほう……ブラックタールサラマンダーの皮で作ったベストにベルト。このズボンはブルーフレアバッファローか」
「そうですな。儂の村の近くに季節毎にやってくるんですじゃ。これでエクチルさんのアイテムと交換してくれんじゃろか」
「物珍しいものじゃないかもしれませんが……いかがです?」
「むむむ……」
エクチルさんが顔をしかめる。
家にあった物で物々交換をしようと着替えの服を持ってきた。
ベストとベルトは黒い粘液を吐くトカゲの皮をなめして作ったもの。
ズボンは青色の毛深い牛の皮で作ったものじゃ。
やっぱり原材料的なアレでダメなのかのう?
ズボンの方ならまだ可能性があるかもしれんが。
「……ちなみに伺うが、センタローさんはこの世界に来て初めての交渉だったりするか?」
「はい?……あぁ、その通りですじゃ。この世界に来て50年余、ここに行商人が来ることなんてなかったですからな」
「そりゃそうだな。よし!じゃあこの世界の相場ってやつを教えておくか」
そう言ってエクチルさんが馬車から何かを持ってきた。
その手にあるものは……
「おや?これは……」
「ブラックタールサラマンダーのベストだ」
「あらあら。やっぱりこの世界じゃ珍しくないんですねー」
「いや、カズハさん。珍しいものではあるんだ。こいつを仕入れたのは約100年前、これも転生者が作ったベストさ」
「ひ、100年前?!けどボロボロになってないような?」
ベストを触らせてもらうと革製の割にはしっとり滑らか。
ヒビも入ってないし金属製のボタンもサビひとつない。
村で作ったベストよりも新品感がある……
「どうも転生者はとりあえず服装を気にするみたいでな。転生者いる所にファッションあり、と言われるぐらいさ。今確認されている転生者のいる村、町は約3、世界的な数な。」
「さ、3ですか。多いのか少ないのか……」
「3人も転生者がいるんですねー。てことは珍しい?」
「そ。つまり、今世界で3ぐらいしか生産地がない上質なベストってやつさそもそもブラックタールサラマンダーを討伐できる奴らが世界に100人いるかいないかだしな!だから余裕で高級品ってこと。確か1着で平均金貨2枚ってとこだな」
「「へー」」
「……やっぱりピンと来ねぇか。一応王都で生活するための資金が1年で約金貨1枚分って言われてるぞ」
ほう、王都での生活はそんな相場なんですなー。
……へ?2年分の生活費?
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