第13話 家康、小豆餅の婆に追われる

 昔々、三方原台地の中央部に小豆餅を販売していた婆がいたそうな。


 その小豆餅の婆は、戦が近くで起きようと毎日小豆餅を販売していたらしい。


 そして、1573年にその地域で武田と徳川が大きな戦を起こした。


 その戦は、三方ヶ原の戦いであった。


 この戦いによって、徳川は大敗北を喫してしまい、大将である徳川家康は、命からがら逃げていたのである。


 (このままでは、殺されてしまう。武田の追手が来る前に逃げなくては‥‥‥さもなければ、命を賭してわしを逃がしてくれたもの達に顔向けできぬ)


 (しかし‥‥‥くその匂いが結構する。それに‥‥‥尻がぐちょぐちょするわい。早く城に帰りたい‥‥‥)



 このような形で家康は、小豆餅の婆が営む店まで逃げてきた。すると、家康はお腹がすいたのか、店に寄ったという。


 「おい婆、お腹がすいて仕方ない故、小豆餅をはようくれぬか」


 家康は必死に逃げていたため、お腹がすいていたという。


 「分かりました。今すぐ用意しますじゃ」


 注文された小豆餅の婆はすぐさま小豆餅を用意し、家康に提供したらしい。


 「どうぞですじゃ」


 「おおすまぬの」


 家康は出された小豆餅をすぐさま急いで食べたという。


 その時だった。武田の追手が、「家康はどこじゃ~」といいながら追ってきたという。


 その声にびくついた家康は小豆餅を食べるのを止め、すぐに馬に乗ろうとしたという。


 「ちょっと、お客さん‥‥‥一体どこに行こうとしているのですか!? 代金をいただいてませんじゃ」


 「すまぬな、婆。追手が来ている故、わしは逃げねばならぬ。さらばだ」


 こうして家康は代金を支払わず、すぐさま逃げ出したという。


 「何を言われますじゃ。代金を支払わんかい!!」


 婆は怒りながら、ものすごい速度で家康を追いかけたそうな。


 その様子を逃げながら見ていた家康は驚きながらこう言ったらしい。


 「なんじゃこの婆は‥‥‥ええい、追いかけてくるな―――――――!」


  家康は驚いた様子で叫んだという。


 「うるさい。代金を支払ったら追いかけぬわ」


 なおも小豆餅の婆は追いかけてきたらしい。


 「全くしつこい婆じゃ!! どこまでも追いかけてくる。なんと執念深い奴なのだ!!」


 家康は慌てふためきながら大声で叫んだという。


 「も‥‥‥もう、しつこいわ。どこまでも追ってくる」


 家康はどこまでも追いかけてくる婆に観念したのか、逃げるのを止めたらしい。


 そして追いついた小豆餅の婆は追いつき代金を請求したそうな。


 

 その後、家康は、いろんな意味で疲れた顔をしながら、城に帰還したそうな。


 一方、婆は、代金をもらった後、店に帰還したそうな。武田の追手を途中で見かけたが悠々と帰還したそうな。


 また、小豆餅の婆が家康に追いついた場所は後に「銭取」という地名が残ったようである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る