第6話 馬鹿野郎お前俺は買いに行くぞお前!
「あれ?」
リビングへと到着した後、俺は呆けたような声を零してしまった。
てっきり、あの超人高校生二人組は俺よりも早く戻ってくると思っていたんだが……リビングを一面見渡して見ても、この空間に居るのはどうやら俺一人だけらしい。
整理整頓やらに時間がかかってしまうのも頷ける。
それに、この別荘にも
謎だ……あのハイスペックイケメンが誰かと喋りながらやっているわけではないはずだと言うのに掃除と整理整頓にこれ程までに時間をかけるだなんて……。
まさか、俺が割り当てられた部屋よりも断然掃除が為されていなかったのだろうか。
いや、俺の部屋だけ掃除されていて後の部屋は掃除されていないだなんて事、普通考えてあり得るだろうか?
しかし、考えていても埒が明かないのがまた現実。
現状、ここから俺が取れる選択肢は二つある。
一つ目は、二人のうちのどちらかの様子を見るついでに手伝うか。
二つ目は、ここで大人しく二人が来るまで待つか。
――これらの二択である。
「……いや、普通考えて一つ目一択だな」
手が空いたのなら、誰かを手伝うべしというもの。
問題は、
なんて考えていた刹那、リビングのドアノブがガチャリと音を響かせると、一人。
やや疲れたような顔をして入ってくる。
「やっと全部終わったよ~……」
その声の主である
ここに来た当初は14時を示していた時計が、気が付けば18時を指していた。
「大丈夫か
俺はそんな海華に心配の言葉をかけながら、コップに入れたお茶を提供する。
「ありがと~。あれ?くーちゃんは?」
お茶を一口で飲み込むと、気分が回復したのか
しかし、残念ながらそれは俺にも分からない。
「それがな、まだ部屋から出てきてないんだよ。ちょっと心配だし見てくるから
この三人の中では一番最初に掃除や荷物なんかの片づけを終わらせて戻ってくると思っていたのだが――何かで困っていたりしたら心配だ。
……正直、
「ありがと~」
「
扉越しに言葉を浴びせてから数十秒待てども、中から返事が返ってくる事は無い。
おいおい、なんだ?なんで返事がねぇんだ怖いぞ流石に。
……いや、まさか…………。
俺はある予想を思い浮かべながら扉をゆっくりと、物音が立たないように慎重に扉を全開にすると、目の前には設置されていたベッドを背もたれにして床に座り込みながら寝ていた
見れば、部屋の汚れは綺麗に掃除されており、荷物が入っていたケースの中も空のようだ。
どうやら、すべきことをし終えてから眠ってしまったらしい。
「やっぱり寝てたのか……いや、普通ベッドを背もたれにして寝るか?」
俺はこの光景を見て思わず小声でそう呟いた。
恐らく、今日が楽しみすぎて前日あまり眠れなかったのだろう。
そんなの小学生までだろありえねーとか思われるかもしれないが、
これで起きたら悪いが……一応、俺はベッドの上にあった布団を取り
「……起きてないな」
そして、静かにその場を離れリビングに戻る。
「あ、おかえり~。くーちゃんどうだった?」
リビングについて早々、
「寝てたよ。通りで戻ってこないわけだ。とりあえず、起こしても悪いしそっとしておいた」
「あ~、なるほどね」
俺のその言葉を聞いた
どうやら、大体の察しがついたらしい。
そして、俊が寝ているとなると、当然飯は俺か
「それで飯なんだけどさ、
そんな事しなくても自分で作れよと思うか漏れないが、はっきり言って俺は料理が苦手だ。
火の扱い方すらまともに分からなければ、肉の焼き加減すらも曖昧でよく分からない……そんな人間なのだ。
「え!?」
俺のその提案に、目を大きくしながら驚きの声を発っする。
けれど、俺と違って
なので、調理実習では全然勉強してないわとか言ってテストで高得点をたたき出してくるような存在とほぼ同じになっている。
恐らく、料理に興味を持ったり、使用人さんや今は亡きおばあちゃんが朝昼晩とプラスお腹が空いた時に何かを作ってくれるといった家庭環境じゃなければ、それ相応の腕前を持っていただろう。
――しかし、そんな
「いやいやいや、いくらなんでも悪いよ、悪すぎるよそれは!」
分かっている。
この場面、
しかし、ここは是が非でも俺の顔を立たせてもらいたい。
たまには、少しくらいカッコイイ所を見せておきたいのが男というものなのだ。
「大丈夫大丈夫、
そう言って強引に
「ちょっと待ってよ!まだ来たばっかで道も分からないでしょ?危ないよ!」
「港までの道のりは下の方に下っていけば着くと思うし、スマホで録画しながら行くから帰る時は逆再生して同じ道を辿って帰るよ」
その為には、少し辺りを写したりと撮り方を工夫しなければ分かり辛い映像になってしまいかねないが……まぁ、問題は無い。
それに、普通に人に聞けば港の道順くらい教えてくれるだろうしな。
「んじゃ、行ってくるわ」
そうして俺は部屋から持ってきた空にしたリュックを背中にかけ、財布とスマホを持ったことを確認しながら港を目指して家を出るのだった。
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