第19話 初めての中層

         第一章

      初めての中層戦闘


 「見つけました…!アンガーベアなんて比じゃないレベルで大きな魔力ばかりです…!群れから行きますか…?」


 「そうだな、まずはボブゴブリン辺りを狙えるといいが…!いくか!」


 「はい!」


 父のダッシュに合わせて俺も走り始める。最近は父の後をつけて走りながらも風魔法を使って父の進行方向にある障害物を取り除いたりしている。


 「ボブゴブリンは体も大きくなっている!ゴブリンとは一味違うから気をつけろ!1体は残して置いてやるから一人でやってみるか?」


 「是非!お願いします!」


 父がボブゴブリンの群れに突貫していく。普通のゴブリンの群れのようにただ突っ込んで切り捨てて行くのではなく、3体ほどと多対一をしながらしっかりと剣や槍などの武器に対して技で返している。

 ボブゴブリン達は普通のゴブリンよりも体格だけでなく思考も優れているようで相手が3である事を活かして父の死角をつこうとしている。

 しかし、俺がいるのだからそんな事はさせない。父の隙を突こうとしているボブゴブリンに対してストーンバレットで牽制を入れつつもう一体の方に相対する。


 「ギャアッ!」


 俺が相手をしているボブゴブリンは剣を持っているやつで大上段から切り下ろしてくる。俺はそれを自分の魔剣で受け止める。


 ガギィン


 鈍い音を響かせて敵の剣を弾いたが剣の腹に添えていた左手がジンジンと痺れる。その痺れを振るうように手をサッと振り払いながら右手で相手の手元を狙って剣先で斬る。

 浅い傷だが奴の手首に切れ込みを入れられた。よし!戦える!


 その間に父は槍を持ったゴブリンをボコボコに斬り落としており、もう一体の方と戦っていた。俺はそちらの援護へ意識を割くのをやめて目の前のボブゴブリンに集中していく。


 力では遠く及ばないのは分かりきった。それならば打ち合わなければいいだけだ。

 ボブゴブリンの攻撃は避けるようにし、相手の攻撃の後の隙を的確に攻撃していく。

 最初のうちは恐怖に負け避ける動作が大きくなっていた。

 そうすると攻撃できる時間が少なく、どうにか攻撃しようと避ける動作が小さくなっていった。


 そしてできた時間で攻撃を重ねていくうちにボブゴブリンの動きが鈍ってきた。そろそろトドメだ。

 俺は準備しておいた魔法を展開する。

 地面から伸びてきた泥の手はボブゴブリンの鈍った足を引き摺り込んだ。

 この現象に動揺したボブゴブリンの隙を見逃さず俺は剣先を心臓に突き刺した。

 ボブゴブリンは一度ビクッとなると息を止めて倒れていった。

 

 「やったな!」


 父が木にもたれかかりながらこちらを見ていたようだ。父が片付けたボブゴブリンからは魔石だけが抜かれている。


 「はい、今回の魔石は僕が助けてもらった面が強いのでお父様にお渡ししますね。」

 

 「そんなこと気にするんじゃない。これからお前も倒せるようになるだろうし気にせず貰っておけ。」


 そう言って放り投げてきた魔石をキャッチすると本当にいいのか?と父に目線を向けると好きにしろと目線で返してきたのでありがたく麻袋に入れさせてもらっておく。


 「どうする?少し休憩してから次に行くか?」


 「いえ、今の感覚を忘れたくないので次に行きましょう。

 先ほどの戦闘でボブゴブリンの魔力はある程度判別できるようになったので今日はあいつらを中心に狩ることにしませんか?」


 「よし、わかった!なら次は剣以外のボブゴブリンと戦ってみるといい。俺も一気に敵を処理できるわけじゃないから最初はさっきみたいに魔法で助けてくれ。」


 「もちろんです!行きましょう!」


 この後も日暮前まで父と共にボブゴブリン狩りを続行した。ゴブリンと同じように剣や槍、棍棒や斧などを使う個体や魔法を使おうとする個体もいた。

 それぞれがゴブリンよりも力強く、知性も感じられた。

 特に魔法を使うボブゴブリンは顕著でただ魔法を放つのではなくこちらを妨害するように散らした魔法を使ったりもしてきた。

 逆に弓を使うようなボブゴブリンはとても少なかった。使ってきた様子はないが、一体だけ孤立しているボブゴブリンを探ったところ木の上や茂みに隠れて獲物を狙う様子を見せていた。

 明らかに狩りをする側であった。しかし、彼らと意思疎通ができるわけでもなく問答無用で襲いかかってくる魔物という点は変わらないようだったのでエルは心持ち楽に殺し切ることができた。

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