悪役?ライバル?に転生〜器用貧乏型が知識と努力で運命を切り開く〜

ヒバリ

第1話 プロローグ

         第一章

        プロローグ


 「やっとクリアしたぞー!!!!」


 『ハイ&スラッシュ』略してハイスラ


 子供から大人までみんなが熱中して遊ぶこのゲームを俺はやり込み、遂に世界で初めて隠しルートを発見クリアしたのだった。


 画面ではエンドロールとしてプレイしたストーリーが各場面の回想のような形で流れるのだが今回の俺がプレイして紡ぎ上げたストーリーは酷かった。


 そもそもこのゲームの正しい遊び方は、簡潔に説明すると、魔王を倒すための仲間を探して魔王を討伐する事だ。


 その過程で過去に魔王を討伐した時に使われた六つの英雄武器を手に入れ仲間に持たせて戦う。


 わざと英雄武器を持たせなかったり、世界を回る順番や敵を倒す方法、タイミングなどその人その人の選択でストーリーは大きく変わる。


 しかし、隠しルートでは仲間を探さず全ての英雄武器を自分で相手に合わせて変更しながらソロでクリアするというものだった。


 それのおかげで元々仲間になる予定だったメンバーからは嫌われ、なんなら全員を打ち負かしたり武器を渡さなかった所為で死んだりする。


 国からも渡すようにと再三の要請があったにも関わらず断った主人公の両親は爵位を剥奪され親からも恨まれるという始末。途中からは心を無にしてプレイしていた部分も多かった。


 しかし、俺はやり切った!正統派プレイだけでも人の数だけ正解があるこのゲームで公式が定めた隠しルートを世界で初めてクリアしたのだ!


 あ〜気持ちいいなこの瞬間は…


 エナジードリンクで決まった頭と身体からガンギまった鋭い感覚がこの不思議な気持ちよさを増大させている気がする。


 「みんな!ありがとう!今回のロウスラ続編、ハイスラは最高にやりこめて面白いな!俺のゲーマー街道はまだまだ続くぜ!今日はここまで!疲れたし感想会は明日しような!」


 コメント欄


 おめでとう! 最高だったぜ!


 ストーリー酷過ぎて草 俺もやってみる!


 それにみんなからの祝福コメントも俺の気持ちよさをさらに強くする。


 俺はエンドロールが終わったのを見て配信を切る。遠藤 司ことVtuberツカサとして俺はゲーム配信者をしていた。


 普段は大学生をしながら講義とバイト以外の日々は全てハイスラに注ぎ込んできた。たまに別のゲームもしているが。


 コメント欄では高額を示す赤のスパチャが流れ続ける。それを横目にゲームを閉じようとすると画面にある言葉があった。


 『転生特典を得てゲームを"体験"しますか?はいorいいえ』


 なんだこれは?変な言い回しをしているな。ここでセーブすることもできないようだし新たに配信の枠を取るのも面倒だ。一応録画だけしてセーブポイントまでプレイするか。


 そう思った俺は、はいを選択した。


 次の瞬間、司の意識は無くなっていた。




 『ロウスラ』正式名称 ロウ&スラッシュ


 今回司が遊んだハイスラの前作。


 β版の側面が強く、ハイスラの為の資金集め兼ユーザー獲得、広告目的の作品だった。


 しかし、この頃から短いストーリーながらハイスラのシステムはほぼ完成しており英雄武器などは出てこないもののやりごたえがあった。


 前日譚?のようなものである。


 主人公は平民の小さな村落の子供であった。近くにはたまに魔物が出る森があり大人達からは入ってはダメだと言われているが好奇心に負けて村の子供達と入ってしまう。


 魔物と遭遇してしまった主人公は一人逃げ遅れて森の奥へと逃げる。そこにあった小さな祠で精霊と出会い力を手に入れる。


 そこから村に戻るところまでがロウスラのストーリーになる。

 面白いのが、ロウスラで作ったキャラを元にハイスラを始められるのだ。

 勿論、そこで差が付くことはないがロウスラをプレイして作ったキャラには強烈なバックボーンがつく。

 例えば、魔法を使いまくったから最初から魔法に関する才能があるとか。



 『ハイスラ』


 スラッシュシリーズのメイン。


  ストーリーは様々で、根幹となる要素は、魔王を討伐した後の世界で、新たに魔王を復活させようとする邪悪な勢力と過去魔王を倒した子孫達が戦いながら成長し、自分の物語を作るという点だ。


 ヒロインは複数人おり恋仲になることも他のものと恋仲になった後に奪うことも可能という何故か恋愛ゲームかと思うような要素もある。


 6つの英雄武器を使って活躍したもの達の直系子孫が貴族となり、その子供達が同時期に学園に入学する。そいつらを仲間にして魔王勢力と戦うといった形だ。


 無限にあるストーリーの中でもクリアまでのプレイである程度ゲーム側がルート判断をしてくれる。王道ルート 覇道ルート 悪役ルート 

魔王ルートなどだ。そこで発見されておらず公式が設定していた隠しルートを今回司がクリアした事で明らかになった。


 『隠しルート』


 英雄武器を全て自分で装備、交換し一人で魔王を倒そうとするルート。全てを一人で集めようとすると魔王襲来までに時間がギリギリで、サブメイン問わず仲間キャラクターにが変わることが難しくなる。


 その為彼らが襲われていても見殺しにして英雄武器を取りに行く必要があり、選択を間違えると自分の手で殺すことにもなる。


 結局、魔王を倒すことにはなるのだが唯一友と言えた人物が魔王討伐後、他のキャラの復讐として主人公に襲いかかる裏ラスボス展開が唯一このルートで実装されている。


 しかも、魔王を倒した直後に襲われる連戦方式のためほぼほぼ初見殺しである。

 ちなみに、このライバル兼友?は普段のプレイでは自分のスキルや武器に応じて相性の悪いビルドをしてくる為どのプレイヤーにも心の底から恨まれている。

 

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