空の番人メネル
貴良一葉
【ようこそ? 番人の間へ】
あれ……客人? おかしいな、ここには勝手に人間は入れないはずだけど。
え、貴良って人が案内してくれた? 迷惑な人だね、あの人。
そうだよ。僕がメネル、空を管理する番人さ。
もしかして、天気の変更をしてほしいの?
へぇ、僕のことを知ってる珍しい人間だね。時々僕の噂が地上に出回るとは聞いたけど。だからっていきなりここに来られても困るよ。僕は僕の気まぐれで叶えたい天気を選んでるんだから。
僕はね、いつも風に乗って世界中を見回りながら、天気のことについて考えてる人間の声を聞いてるんだ。
通常、僕の姿は人間の君たちには見えないけど、聞こえた声の中で興味が湧いた話を聞きに地上へ降りた時だけ、その人には見えるようになるってわけ。その間、その人の声は口にしなくても全部聞こえるよ。
そういえば僕は青いものが好きだから、何か青いものを身につけてる人のところに降りることが多いかもね。
でもまぁ、簡単にいうと僕に会えるかは運次第ってことだ。
それから、天気を変えるには報酬をいただくよ。
そりゃあそうでしょ、天気は全て精霊たちが相談して計画を立てて決めているんだ。それを崩そうとしてるんだから、手数料を貰わないと彼らも納得しないよ。
こっちも仕事なんだから「たかが天気」なーんてバカにしたら、君の頭に雷を落としちゃうかもね。
報酬は何、って?
しょーがないなぁ。まぁ折角来たのなら、特別にこれ見せてあげる。
天気変更の手順書だよ、ほとんど誰にも見せたことないけどね。
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<天気のご変更依頼の手順>
1)ご希望の天気を選択ください。またご変更依頼の理由を教えてください。
【担当:
・快晴
空全体の雲が占める面積が2割未満の状態
・晴れ
空全体の雲が占める面積が2割以上、9割未満の状態
【担当:
・薄曇り
空全体の雲が占める面積が9割以上で、巻雲・巻積雲・巻層雲などが多い状態
・曇り
空全体の雲が占める面積が9割以上の状態
【担当:
・霧
視程が1キロメートル未満になっている状態
・
黄砂・煙・降灰があり視程が1キロメートル未満か、空全体がおおわれている状態
主に山で起きる現象
【担当:
・
直径0.5ミリメートル未満の水滴だけが降っている状態
・雨
直径0.5ミリメートル以上の水滴が降っている状態(強さはお好みで)
【担当:
・
雨と雪が混ざって降水している状態
・雪
結晶状態の氷滴が降っている状態
・
直径5ミリメートル未満の氷滴が降っている状態
・
直径5ミリメートル以上の氷滴が降っている状態
【担当:
・雷(嵐を含む)
10分以内に雷電か雷鳴がある状態
2)空の番人が気に入る理由であれば『番人の間』にご案内いたします。
正式な手続きをそちらで行い、契約は完了です。
◯注意事項◯
契約が完了次第下界に送還されますが、番人に関する記憶は全て抹消されます。よって契約後のキャンセルも不可です。
なお手続きでご利用者様に虚偽が判明した場合は、世にも恐ろしい事態が起こることになりますので、正直にお答えくださるようお願いいたします。また途中で番人が機嫌を損ねた場合も契約は無効となります。
◯報酬◯ ご利用者様の最上級に好きな食べものをいただきます。
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どうだい。ラインナップは豊富で、報酬だって誰でも払える簡単なものだろう。
……え、何で食べものなのかって?
イチイチうるさいなぁ、僕はグルメなんだよ。
それに人間が作る食べ物は美味しいから、精霊たちにも大人気なんだ。君の一番好きなものなら、絶対美味しいものにありつけるだろう? 僕って賢いなぁ。
それとも「お前の目玉をいただく」とかの方がスリルがあって良かった?
食べものを紹介するだけで君の望みの天気にしてもらえるんだ、どちらかといえばお手軽だと思うけど。
――あぁ、そうそう。ちなみに……って、ちょっと君!
あーあ、行っちゃったよ。説明はちゃんと最後まで聞いた方がいいと思うよ。
結構、重要なことだと思うんだけど。
紹介した食べものは、君は今後一生口にすることはできないよ。
僕と会った記憶と共に君から奪っちゃうからね。何でそれが説明に書いてないのかって、別に気まぐれさ。それにちゃんと今、君には言おうとしたよ。
ま、最後まで聞いてない君が悪いんだから、後で文句言わないでよね。どうせ記憶も消えちゃうけど。
さて、今日は面白いこと考えてる人、誰かいるかなぁ。あんまり頻繁に変更すると精霊たちに怒られるから、適度にしないとね。ふふ。
僕は空の番人、気まぐれのメネル。
精霊たちの間では〝気難しいメネル〟といわれてるらしいけど――。
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