第102話 氷鬼



 カイ・パゴスの街、ニサラキにて。

 みんなで食事を取っている。


「それで、街長。いったいこの街に何が起きたのですか……?」


 この街は私達が到着したときには、氷付けになっていた。

 彼らの発言から、自然災害ではなく、人為的に起きた現象であることがわかった。


 いったい、誰がこんな酷いことをしたのだろうか?

 街長は言う。


「【氷鬼の一族】が、やってきたのです」

「氷鬼……?」


 聞いたことがないな、氷鬼なんて。

 古竜も「知らん」とそっぽを向く。


「氷鬼は、鬼族の一種です」

「鬼族なら聞いたことあるぞ。魔族の一種だろ?」


 と古竜が言う。

 なるほど。鬼族のなかに、氷鬼というのがいるのか。


「はい。氷鬼の一族がある日、カイ・パゴスに乗り込んできたのです」

「目的はなんでしょうか?」

「おそらく……魔神の力を手に入れるためでしょう」


「魔神の……力?」


 魔神。聞いたことがないな。


「魔神とは地上に降りてきた悪しき神々のことです。わが国には、魔神を封印してる祠が存在するのです」


 なるほど……。

 

「祠の封印は我らドワーフが行っていました」

「つまり、封印を解くのにドワーフたちが邪魔だから、氷付けにした……と」


「そういうことです。今もやつらは、魔神を狙っていることでしょう」


 それは……大変だ。魔神がどういう存在かはわからない。

 けれど、討伐では無く封印しなければいけないということは、それだけ強い敵ということだろう。


 その力で悪さをすることは目に見えている。ドワーフたちの平和を理不尽に奪うような連中だから。


「おいおいおい、大変じゃあねえか。こんなとこでのんきに刺身なんて食ってる場合じゃなくねーか?」


 古竜がもっともな発言をする。


「大丈夫です。魔神の封印場所を、奴らは知りませんので」

「なるほど、今頃は魔神の封印場所を探してる……ということですね」


 時間的な猶予はあるけれど、あまり悠長にしてられないな。


「氷鬼の連中もあほだな。封印場所のめどがついていないのに、ドワーフを凍りづけにしてよ」


 確かに。ちょっと場当たり的すぎるきがした。

 魔神の居場所を聞き出す前から、居場所を知ってそうなドワーフを閉じ込めるなんて。


 まあ聞いたところでドワーフたちが答えるとは思えないけども。

 

「まるで当てがない、ってわけではないのかもしれませんね」


 たとえば、探知機のようなものがあるとか。

「なおのこと悠長なことしてらんねーじゃねーかよ」

「ですね。……街長、よろしければ魔神の封印場所を教えていただけないでしょうか」


 私が言うと、街長は目を丸くする。


「まさか……」

「ええ。氷鬼の連中を、成敗してきます」


 やつらが魔神の封印をとこうとしてるのなら、先回りしてそこで待っていれば、いずれやつらはやってくる。

 そこで、私が氷鬼をたおせばいい。


「ありがとうございます! ぜひに、お願いします!」


 こうして私は氷鬼討伐に乗り出したのだった。

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