第88話 クラーケンも余裕



 私はドワーフ国カイ・パゴスへと向かうことにした。


 古竜はすさまじい早さで海上を飛んでいる。

『どうだぁ! 速いだろうっ!』


 古竜が得意げにそういうが。おや、おや。


「まあまあですね」


 私が闘気オーラで強化して走った方が速い。が、それを言うのはちょっと可哀想だ。


『まあまあってなんだよっ。古竜は速いんだぞ? すごいんだぞっ』

「そうですね。速いし凄いとは思いますよ」


 魔物にしては、だが。


『なーんかひっかかるんだけど……。海上で一番速いのは、空を飛べるおれだぜ!』


「あまり強い言葉を使わない方が良いですよ」

『へ?』


「足をすくわれる」


 私はガンコジーさんを抱きかかえて、古竜の背中の上でジャンプ。


『は?』

「何をしてるのじゃ!」


 そのときだった。

 ドパァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


『なんだぁ!? 触手!?』


 海中から巨大な触手が出てきたのだ。

 触手は凄いスピードで古竜の体に絡みつく。

「あ、あれはクラーケンじゃ!」


 ふむ、クラーケン。

 たこの魔物か。


『たちゅけ……おぼぼぼぼぼ!』


 古竜の全身、そして口の中に至るまで、触手で絡みつけられている。

 私は海上にふわっ、と着地。


「ど、どうなっておるのじゃ!? 海に立っておられる!」

闘気オーラを足に集中させることで、海上も歩くことができるんですよ」

闘気オーラ万能じゃな……」


 さて、さて。

 古竜は今クラーケンに海中へと引きずり込まれそうになっている。ふむ。


「なにじゃれてるのですか?」

『おぼぼ……じゃれてねえ! くそ! 振り払おうとしてるのに、ほどけねえ!』


 おやおや。あの程度のたこごときに苦戦してるとは。

 仕方ない。古竜は私の従魔。主人である私には助ける義務がある。


 ファルを使うまでもない。

 私は異空間に納めている、木刀を引き抜く。

「さて」

「ぴぎゅぅうううううううううううううううううう!」


 おやおや。どうしたことだろう。

 たこさんは私から逃げていく。


「武器を持った副王にびびって逃げていくのじゃ」

「古竜を返してもらいますよ」


 私は闘気オーラを放出し、浮き輪を作る。

 ガンコジーさんを浮き輪に載せた後、私は追いかける。


「ちょっと助けてきますね」


 とんっ! と私は海面を蹴る。

 トトトトトトッッ!


「海を当然のように駆け抜けているじゃと!?」


 足裏に闘気オーラを集中させることで、海上でも立てるし、こうして走ることも可能なのだ。


 私はすぐにたこさんに追いつく。


「悪いですが、返してもらいますよ」


 私は木刀を軽く振る。

 スパァアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 古竜に絡みついていた触手をすべて切断した。


『たすかったぁ~~~~~~~~~~~~!』


 古竜は私のそばへとやってくる。


『助かったぜおっさん……触手プレイされるところだった……』


 ドラゴンが触手プレイ……。

 あまりビジュアル的によくないですね。


「あれくらい自力で脱出してください」

『いやあのさ、クラーケンって結構強い海の魔物なんだけど……』


「そうですか?」


 正直延々たいしたことなかったような。

 あまりに弱すぎたので、殺さなかったくらいだし。


『ってあれ!? クラーケンの触手、全部戻ってね!?』


 私が斬った触手はすべて元通りになっているのだ。


「ええ、そうなるように斬りましたので」


 切断された触手が、再び同じ場所にくっついたのである。


『いやいやいや、無理だろそんなの!』

「いえいえいえ、できますよ。闘気オーラを鍛えればね」

『まーーーーーた闘気オーラかよ!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る