第71話 量産体制を一瞬で整える


 あくる日、私は兵士達、ガンコジー、バーマン&エルザをつれて、魔銀鉱山へとやってきていた。


 今日もまたここで兵士達に訓練を施してる。

 が。


「ふぎ! ふぎぎぎぎぎぎぎぎ!」


 ワンタ君がうなりながら、地面に触れている。

 シーン……。


「だ、めっすぅ……全然、魔銀ミスリルはえてこねーっすわ……」


 兵士達は全員が、フルフルと首を横に振るっている。


「おや、皆さんできないのですね。魔銀の人工製造」


 魔銀に闘気を流すことで、人工的に魔銀を製造できるということが判明した。

 これもいい闘気の訓練になるとおもって、兵士達皆を連れてきたのだが。


「だめです……」「1ミリも生えてこないわ……」「全力で闘気を注ぎ込んでも無理とか……」


 兵士達が闘気で魔銀を生成しようとしてるのだが、誰一人として、成功していなかった。

「ふ、んぎゅぅ~~~~~~~~~!」


 唯一、トイプちゃんだけ、地面からにょきっ、とタケノコくらいの魔銀を生やすことに成功。


 それを見たエルザが考察を述べる。


「おそらく、魔銀を生成するには、かなりの闘気オーラ量が、それも、高出力で必要みたいね」


 闘気オーラ使いとしてまだ未熟な兵士達では、魔銀製造はできないということか。


「バーマンはどうですか?」

「ぜえ……はあ……こんなもんです……」


 バーマンの手には30センチほどのインゴットが握られている。


 やはりエルザの言ったとおり、闘気オーラ使いとしての力量が、製造量に比例しているようだ。


 私は試しに軽く、壁に触れて闘気オーラを使う。

 魔銀の鉱床から……。


 ズォオオオオオオオオオオオオオオ!


「うぉ! すげえ!」「でっかーい!」「こんなデカい魔銀生やしちゃうなんて!」「やっぱ副王様すっごーい!」


 しかし、ふむ。

 

「少し困りましたね」

「そうね。現状では、アルしかまともに魔銀を人工製造できてないわ」


 トイプちゃん、バーマンも魔銀を作れるけれども、二人とも闘気オーラを使いすぎてヘロヘロ状態である。

 たくさん製造することはできなさそうだ。


「アルが居ればまあ、安定して製造できるだろうけど……」

「逆に言うと、副王がおらぬと魔銀の製造ができないってことじゃな」


 ガンコジーさんの言うとおりだ。

 私は人間なので、長生きしたとしても100年いくか行かないか。


 今は良いけど、私の死後、魔銀が取れなくなってしまうのは、困る。

 この国の名産品にしたいからな。


「どうしたもんかのぅ……」


 ……私はもう一度壁に触れて、魔銀を作る。

 ……今ので、なんとなくだが問題点が見えてきた。


 私は空間切りをして、異空間に収納していた、魔銀の剣を取り出す。


「それは、副王が作ったハイミスリルで作った剣ではないか」


「ハイ……ミスリル……?」

「わしが名付けた。通常のミスリルと区別したいからの!」


 まあ……名前は重要ではないから、どうでもいい。 

 私はハイミスリルの剣を手に持って、それをトイプちゃんに渡す。


「トイプちゃん。この剣を地面に突き刺し、さっきと同様に、魔銀を作ってみてください」

「わかりました!」


 トイプちゃんは言われたとおりハイミスリル剣の切っ先を、地面に突き刺す。


「ぜや!」


 トイプちゃんが闘気オーラを、ハイミスリル剣を通して地面に流した瞬間……。


 ズォオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「うぉ! や、やべえ! でけえ魔銀が! 生えてきたっすぅ!」


 ワンタ君が驚きながら、トイプちゃんの作ったミスリルの塊を見る。

 先ほどまで、トイプちゃんが作ったそれは、竹のこくらいの小さいものだった。


 だが今は、自分の身長を超えるほどの、巨大な塊を生成できていた。


「ど、どうなってるんす!?」


 エルザが「なるほど……」と何かに気づいた様子で言う。


「このハイミスリルには、闘気オーラを増幅する力があるようだわ。ミスリルを生成できるレベルの量と出力を、このハイミスリルを使うことで手に入れられる……」


「つ、つまりどういうこと?」


 バーマンがエルザに尋ねる。


「アルの作った剣は、闘気オーラを増幅するアイテムになってるのよ。この剣で闘気オーラを流せば、兵士でも魔銀が作れるようになるわ」


「まじか! す、すげええ!」


「ただ……ハイミスリル剣で作った魔銀は、ハイミスリルではなく普通の魔銀のようね」


 なるほど。増幅装置ハイミスリルを使ってできるのは、普通のミスリルってことか……。


「兵士達が、ハイミスリルを製造できないのは残念だ」

「いや、通常のミスリルを製造できてる時点で、たいしたもんじゃよ。やはり、すごいな副王は」

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