第69話 ミスリルを量産する



 私はガンコジーさんに闘気をながし、彼を闘気使いにした。

 結果、ガンコジーさんは魔銀ミスリルを、100%の確率で加工できるようになった。


 あくる日。 

 私達は魔銀の鉱山へとやってきていた。


「うぉ! すげえぜ先生! この魔銀ミスリル武器ってやつはよぉ!!」


 魔銀の大剣を手に持ったバーマンが、笑顔で言う。


「みてみて! ぜぇい!」


 バーマンが闘気をまとわず、魔銀の剣を軽く振る。

 鉱床から生えてる魔銀の塊が、たやすく斬れる。


「こんなかってー鉱物が! バターみたいに斬れちまうんだよ!」


 魔銀の武器はすさまじい。

 ごく少量の闘気を込めるだけ……いや、闘気を込める意識をせずとも、生命が発するごく微量の魔銀に反応して、切れ味を向上させてくれる。


 なるほど、だから、人気の武器なのだな。


 兵士達が訓練のため、魔銀を続々と採取していく。

 私はそれを見ながら考える。ふぅむ……。


「どうしたん、先生?」

「いえ、いずれこの魔銀も取れなくなってしまうなと思いましてね」


 ガンコジーさんが来たことで、魔銀を加工できるようになった。

 彼がいれば無限に魔銀武器や道具を作れるだろう。


「あ、そっか。魔銀は無尽蔵ってわけじゃないもんな」

「そのとおりです」


 この鉱山に生えている魔銀は、ミスリル・ドラゴンのリルちゃんの体からこぼれた血が、結晶化したものだ。

 自然に生えてきたモノではない。よって取り過ぎると、魔銀が枯渇してしまうのだ。


「つっても、リルのやつにまた血ぃ流させるわけにもいかねーしなー」

「私もバーマンと同意見です。さてどうしようかなと思いましてね」


「なんか、闘気で、ばーん! って解決できねーの?」

「闘気はそんな万能の力じゃありませんよ」


「んなことねーですよ、先生の闘気で解決できなかった問題ないじゃないかい」


 そうだろうか……。

 そうかもしれない。


 ふむ……。

 闘気。生命エネルギーの発露。そして、この魔銀はリルちゃんの血液……。


 血液は細胞……。まさか……。


「バーマン。ありがとう。あなたの発言がヒントになりましたよ」


 私は鉱床に近づく。

 すでに斬ったあとがあって、魔銀は根元くらいにしか生えていない。


 私はそこに手を置いて、白色闘気を流す。


 瞬間……。

 ずぉおおおおおおおおおおおおお!


「う、うぉおお! すげえ! ミスリルが生えてきたぜ!!?」


 目の前には人の体ほどある、立派な魔銀ミスリルの塊が出現したのである。


「ど、どうなってるんだい……?」

「簡単な理屈です。まず、この魔銀はリルちゃん……ミスリル・ドラゴンの血液が結晶となったものです。ここまでは?」


「あ、ああ……」

「血液とは細胞成分のこと。私の白色闘気は怪我の治療にもつかわれます。怪我の治癒とはすなわち、細胞の活性化をおこすし、細胞を増やすこと」


「お、おお……?」

「よって魔銀に強い白色闘気を直接流すことで……」

「…………ぷしゅうううう」


 バーマンの口と耳の穴から湯気が出ていた。 

 やれやれ、相変わらず座学は苦手のようです。


「ま、まぁ! なにはともあれ! さすが先生だぜ! これなら魔銀を量産できるって寸法じゃんな! すごすぎるぜ!」

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