年下の婚約者(仮)

いぎたないみらい

第1話

見慣れた幼馴染みの部屋。窓からは、綺麗に手入れをされた庭園が見える。この時期はネモフィラが咲いている。


「妹がお前に会いたくないと言っている」

「…俺、なんかしたっけ」

「知るか、ボケェ」

「まあ、殴られてないってことは、泣かせてないな。よし安心」

「おい、待て。心当たりでもあんのか」


ないが?


特に返事をせず、カップに口をつける。口の中に優しい甘さが広がり、少し苦味がある、いつも通りの味だ。彼女はこれに、角砂糖を2つ入れていた。

彼も言わんとすることが分かってくれたようだ。クッキーに手をつけている。少し不恰好で、微かに小麦の匂いがする。彼の妹が、焼いてくれたらしい。自慢された。ウザ。


グラジオラス・プロピオ、伯爵家子息。シスコン。俺より一つ年下の親友だ。幼い頃からよく一緒にいたため、互いがどういう人間かも、どう行動するかも、何となく分かる。


そして彼の妹、スターチア・プロピオ。俺の9才年下。彼女もまた、昔から仲が良く、3人で遊ぶことが多かった。喧嘩もあまりしたことは無いし、自分の気持ちを素直に話せるような関係だ。


まあ、喧嘩したらしたで俺の父親のゲンコツを喰らう羽目になるから、それが怖いというのもあるが…。


そしてスターチアは、俺の婚約者候補でもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る