ひとりぼっちのスローライフ時々世界最強
霞千人(かすみ せんと)
第1章 ボッチ編
第1話 異世界に流される
俺、井久田和夫20歳は高卒で勤めている弱電メーカーの工場で、嫌な上司のいじめや、大卒インテリ同僚の嫌がらせに悩まされていた。憂さ晴らしに、知人から船外機付きの小船を借りて趣味の海釣りに来ていた。
雲一つ無い空の下でのんびりと糸を垂らしている。波も無く穏やかだ。魚信も無く眠くなってきた。糸を巻いて竿を寄せて船底に横たわる。余りの気持ち良さにいつしか眠っていた。突然強風が吹き荒れた。降ろしていた錨も役に立たず、船は猛スピードで沖へ沖へと流されていく。
何処まで流されるのか?不安な気持ちでいっぱいになった。と、周囲が真っ暗になって、小船が何かにぶつかったようで、そのショックで俺は船の何処かに頭をぶつけて気を失った。
目を覚ますと小石の浜に船ごと打ち上げられていた。
見覚えの無い浜である。釣りをしていたのはカキ養殖の筏が並ぶ波の穏やかな湾内だったのに、ここからは筏も船を出した漁港も見えない場所だった。
穏やかな湾内での釣りだったので、羅針盤も方位磁石も持っていない。外海まで流されてしまったのだろうか?
陸の方を見ると標高500mくらいの山が見える。1度高台に登って周囲を確認する事にした。
浜に小さな沢が流れている。その沢沿いに登って行くことにした。太陽の位置から考えると海は東側に有って、これから登る山は西側に位置しているようだ。
小一時間道なき道を歩いていると途轍もない空腹感と喉の渇きに襲われた。沢水を飲んでも大丈夫だろうか?腹を壊さないだろうか?
薬なんか持っていない。簡易絆創膏ぐらいしかない、転んだり掴んだ木の棘で掌は傷だらけだが。ええい、ままよと沢水をすくって飲む。
美味い!水がこんなに美味かったなんて……お陰で喉の渇きは無くなった。疲れも取れたような気がした。とにかく、水さえあれば何日か生きていけそうだが、腹の足しにはなりそうもない。何処かに食える果物とかないだろうか?
すると足元に小さな野イチゴ位の大きさの輝くような黄色いグミみたいな果実が見つかった。実に美味そうだが、食えるのか?毒ではなかろうか?
一粒食べてみる。小さいくせに溢れるような果汁。甘いのに後口も爽やかだ。美味い美味い。これはいける。だけど1粒だけでは物足りない。他にも無いか周囲を探す。有った。その後9個の実を見つけて食べると、頭の中に若い女性の声で
『叡智の実を10個食べたので、鑑定スキルを取得しました』
と聞こえた。
さっきの実は【叡智の実】と言うみたいだ。もっと食べたらもっといろんなスキルを入手出来るのだろうかと思ったら、『否、10個までしか食べてはいけません、それ以上は猛毒になります』
怖!危ない危ない、次からは鑑定してから食べるようにしないとな。そこからは身体が軽くなった気がして楽に坂を登れた。
そして山の中腹に差し掛かると平らな広場に着いた。麓からは木々で見えない。ここなら例え津波に襲われても安全だろう。
さて、明るいうちに寝場所を作るとするか。
どこがいいか探していると崖に穴が開いているのを見つけた。
熊とか猛獣の住処じゃないだろうな。
鑑定して見た。
【自然に出来た洞窟、ダンジョン化しているが、井久田和夫しか入れないので、安全 】と出た。
俺しか入れないなら獣なんかも入れないってことだよね。決めたここを住処にしよう。
洞窟の中に入り3m歩くと直径5m位の広場に出た。明るい。日は差し込んでいないのに昼の明るさだ。夜になってもこの明るさなのだろうか。寝れないかも知れないな。なので、もっと奥に行ってみることにする。
木の扉がみつかった。開けて見ると草原だった。やはり真昼の明るさだ。草原の中央に小さな泉が有った。こんこんと湧き出す清らかな水はちょっと流れると地に吸い込まれている。
ひょっとするとこれがあの沢の源流なのかと思った。
鑑定。
【奇跡の湧水】というそうだ。飲むと体力魔力回復特級ポーション並みの効果を持つ。普通に飲用、料理用、洗い物に使用可能らしい。試しに飲んでみる。あの沢水よりも美味い。身体中に付いていた切り傷、擦り傷が一瞬で消えた。疲労も回復した。
やはりあの沢水はここから流れたものらしいな。普通の水と混じって希釈されて大分効果が薄れていたようだが。
魔力?魔法も使えるのか?でもどうやって?
考えているうちに俺は疲れていたようで眠りについた。
目覚めると薄暗くなっていた。外は夕方なのだろうか。真っ暗くなる前に食料となるものを探そう。遠くに森が見える、何か果実でもあったらいいな。
まてよ、ここはダンジョンと言ってたな、下手したら魔物が居るかも知れないぞ、ここは鑑定してみよう。
【この森の魔物はホーンラビット。角を根本から折ってしまえば簡単に倒せる。肉は食用、美味。
この森にはは虹色ブドウ、金色スモモなどの特殊効果付き果実が自生している】
良し、張り切って探そう。俺はホーンラビット対策に、堅そうな棒を拾って森に踏み入った。
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