石像に封印された姫君 世界一小さい牢獄での絶頂イキ地獄
MenRyanpeta
第1話 お転婆なお姫様
ここはとある国の王宮。
執務室で王女のエリシアが宰相のリヒターに何やらがみがみと怒られている。
「何度も言っているでしょう!許可なしに城から抜け出すなと!」
「で、ですがずっと城に閉じこもっていては体が鈍ってしまいますし、ちょっと街に出たり、お稽古ぐらい…ね?」
エリシアはリヒターから目を背けながらバツが悪そうにモゴモゴ話している。
どうやら変装して城下町に遊びに行ったり、兵士に混じって訓練に参加していたらしい。
「貴女は一国の長になるのですよ?何かあっては困るのです。亡くなった女王様、国王様に顔向けできません。ご自分の身を理解してください」
「ごめんなさい…」
エリシアは幼いころに先代の女王である母を亡くし、父である国王も数年前に病気で亡くしってしまった。
リヒターは口では身分などの建前を並べている。
しかし先代の女王に引き続き、王女の教育係をしてきたリヒターにとってエリシアは実の孫娘のような存在。
エリシアの身を案じ、気が気ではないのだ。
エリシアもそれはわかっているのだが、先代女王に似てお転婆なところがある。
剣の腕も魔法の才能も色濃く継いでしまい、多少のことならなんとかなってしまう。
また齢60を超えて未だに国王軍最強と密かに噂されているリヒターの指導により、その才能が研ぎ澄まされてしまったことも実に皮肉がきいている。
リヒターはいつもの仏頂面でまたエリシアにガミガミと言い聞かせた。
「稽古はいつでも私がお相手いたします。お出かけも…まぁいいでしょう。ただし護衛は付けます。よろしいですね?」
「でもでも!いつもリヒター相手では発見がありません!私の我がままで護衛をつけるのも迷惑が掛かりますし、もっと色んなことを自分で学びた…」
「でもではありません!」
「はい!」
リヒターは頭を抱えながら大きくため息をつく。
「全く、こんなところまで女王様に似てしまって…」
「お母様もお忍び癖があったのですか!?では私も…」
「いけません!」
「はい!すみませんでした…」
リヒターの凄みに気圧され俯くエリシア。
いかに一国の王女としても彼には頭が上がらないのだ。
元気を失くしてしまったエリシアに少し言い過ぎたと感じながらもリヒターは公務の話をし始めた。
「まぁ、この話はこれくらいにして、継承の儀が近づいています。おわかりですね?」
「はい、勝手に出歩きません」
「お願いいたしますよ?私はこの後すぐに出発し、しばし城を空けます。準備があるのでここで失礼しますよ。それでは…」
リヒターはエリシアに深々と頭を下げた後、執務室のドアに向かってスタスタ歩いていく。
その後ろ姿は還暦を迎えたとは思えないほどスっと伸びていて、動きがいちいち機敏で無駄がない。
(相変わらず怖いよ…でもリヒターがいないということは!)
お目付け役のリヒター不在と聞き、思わず顔が緩んでしまう。
それを察したのか、リヒターはくるりとエリシアに向き直りまたあの怖い顔になった。
「エリシア様。本当にお願いしますよ?」
「はぃい!」
その凄みにエリシアは変な声で返事をしてしまう。
やっと執務室から出ていったリヒターを見て、エリシアは大きくため息をつきながらだらしなく机に突っ伏した。
(はぁぁぁぁ…リヒターの頑固物!おじいちゃん!いいじゃない少しぐらい!確かに声をかけずに城から出た私も悪いけど)
伸びきった体を戻し、右手首につけている母の形見のバングルを触りながらエリシアは近々行われる継承の儀について考えていた。
(もう来月か、億劫…ちゃちゃっ!と済まないの?まぁそういうわけにもいかないよね)
継承の儀、文字通り王位を継承するための儀式だ。
女性君主制であるため、本来はエリシアの母である先代の女王アイリーンが亡くなった時に王位が継承されるはずであった。
だがこのとき、エリシアはたったの5歳。
国王が負担をかけまいと「エリシアが成人するまでの間」という条件で一時的に国の当主を務めていた。
しかし数年前に国王も病気で急死してしまった。
そこでエリシアが20歳を迎える来月に、友好国の要人たちを招いて正式に王位が継承されることになっている。
そのこともあってリヒターは最近頻繁に他国へと足を運んでいる。
今回の遠征もそのためである。
かなり多忙を極めているのだがエリシアにも目を離せない。
エリシアも公務があり最近は執務室に缶詰になっていて、余計に体がうずうずしてしまい、気分転換もかねて外に出たくなってしまう。
(何か王宮内で面白いことはないかしらね?退屈だわ…はぁぁぁ)
エリシアの大きなため息がまた執務室内に響く。
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