忘れ去られた浄土池

すいむ

非日常の囁やき

心霊スポット巡りへのお誘い

「シノちゃん、心霊スポットに一緒に行かなーい?」


「……いきなりどうしたの?」


 唐突に友人の宮島美貴みやじまみきが言った。

 もう一人の友人斉木桃香さいきももかを連れて。


「廃墟化した集落跡に河童の住んでいる池があるって廃墟マニアや心霊スポットマニアの中で噂が流れててー」


 一緒に行かなーい?と美貴は先程と同じ事を言った。


「私も誘われたんだけど、発案者が依香よすが様で私も参加になったのよ」


 桃香が経緯を説明してくれた。

 依香様とは、本名は祝依香ほうりよすが、『常盤の庭』の管理者である祝実子ほうりみのりこ様の実の姉である。

 活動自体は実家の霊峰のお社ではなく母方の実家の政理まつりグループで働いていたりすることが多く政理依香と名乗って活動してる事も多い女性である。


「え、依香様が!?」


 私は普通に驚いた。

 昔霊峰のお社で新年の『常盤家の挨拶』に連れられてお逢いしたこともあるし、凄い大和撫子然なお嬢様であり華やかな美貌の持ち主で政理グループの年度の広報とかの表紙を飾ったり看板をしてたりしたからだ。

 御多忙な人のはずでそんな暇なんて無いはずなのだが、何でそんな人が心霊スポット巡りしてるのかとか色々ツッコミどころ満載である。


「あの人も変わったからね……ほら例の事件で」


 桃香がヒソヒソと私に言った。

 例の事件とは依香様が大学時代に酷い事件に巻き込まれて色々と泥沼化した話である。

 とある事件に巻き込まれてからは雰囲気が変わったり謎多き女性になったとか言われているらしいが、最近はお逢いして無いから詳しくは知らない。

 政理の内孫の従姉妹に色々引き継ぎを行って業務を減らす予定だとか聞いている。

 当の内孫の政理貴子様はまだ高校二年生で『常盤の庭』に偶に出没して間先輩の引き渡しをしてるらしいが、貴子様も生徒会役員もやってて忙しいらしい。


「そのあねさんが息抜きにシノちゃんを誘うようにって言ったんだよ」


 美貴は私に心霊スポットに行くのを誘った理由をそう説明した。


「姐さんてもしかして依香様のこと?」


 何でそんな呼び名なのか。


「そうだけどそうじゃないと言うか、とりあえず忍、貴方も参加で良いよね?美貴の姐さん呼びについての話もするし、直々の御指名だしね」


「わ、わかったよ……」


 珍しく桃香が強引に話を進めようとしてくる、なんか怖い。

 別に桃香が強引な事自体は珍しくも無いかと思い直した。


「まぁ、産美さんに報告すれば良いだけだし、依香様御指名なら産美さんも二つ返事だろうし良いけど」


 産美さんから帰ってきた後色々訊かれるかもしれないが。


「じゃあ、一緒に行こーねー!」


 約束だよー!と言って美貴は走って何処かに行った、電話でもしに行ったのだろうか。


「なんか見覚えあるなぁ」


「小学生かなぁ」


 私達は七不思議巡りの事を思い出した、あれから数ヶ月経っているのかと時間の流れが早く感じた。



 


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