第6話 ほかの人があなたより高値をつけました
「……とまっ、った?」
何度もくる、通知が止み、他の、入札者が沈黙した。
スマホが震える。このオークションの通知には今は緊張しかない。
〈まもなく終了〉
カウントダウン……。
いけるのか?
ブブーッ
聞きたくない音が鳴った。
また他の相手に抜かれたのかと、また千円単位で争うのかと思ったら。
〈まもなくオークション終了です。最高入札者はあなたです〉
あなたです。
こころが、穏やかになった。俺のことを、機会が、あなたです、と優しく慰めてくれている感覚がした。
オレは、真紅を出品者から買い取れるのか……。
と。
〈ほかの人があなたより高値をつけました〉
注意深く見る。
〈¥335,000〉
俺は、ゆっくりと、オークションのカウントダウンを眺めた。
そして、のこり、10分くらいで覚悟を決めた。
〈¥338,000〉
入札金額、入力。確定を押す時はいつも祈る気持ちだ。
なぜ高値にさらに高値をつけて突っぱねられるのか、俺にはわからなかった。
が、とにかく出せる金額を入力するロボットみたいになっていた。
画面がロードを示すクルクルを巻いて、
〈あなたが現在の最高入札者です〉
もう、興奮はない。あとは、見守るだけだ。
俺は、ただオークション終了を待つ。
そして。
〈オークション カウントダウン 0〉
スマホが、ぶるぶると歓喜に震えるように、
〈おめでとうございます。あなたが落札いたしました〉
落、札……。
必死になりすぎてオークションにも疎くて入札と落札の違いもわかっていなかった。
〈出品者と取引連絡をしてください〉
取引連絡?
ああ、あれか、たしか、コメントで話したりカードで払うかコンビニで払うか決められるやつか……。
俺はちょっと悩んで、
「コンビニ振り込みにしてみるか……」
よく見たら数万円以上の買い物なら数千円引きになるクーポンも持っていて、送料はそれで帳消しにできた。
お得だ。
それよりも決まったことは進めないと気が済まない。
コンビニ決済にしたのは改めて自分が借りた額と払う金額を再認識した方がいいと考えたからだ。
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