第5話 オークションの沼

俺はオークションに疎かった。


ローゼンメイデン 、真紅のキャストドール。

……未開封、がいいよな。


疑問よりも、まずは入札をした。


〈¥301,000〉


突如、スマホが震える!


〈あなたが、現在の最高の入札者です〉


……嬉しかった。


認めてもらった気がした。あなたには、お金より、金額より、まず「求める欲」があると……。


だが、そんな気分はすぐ沈むことになる。


ショートメールが届く。


〈ほかの入札者があなたより高値をつけました〉


「……は?」


いま、入札したばかりだぞ……。


……こんなにすぐ、自分の「記録」が塗り替えられるなんて……。


……、俺は昨日。借入の手続きをし、翌日にあたる今日には入金を銀行にて確認した。昼休みにわざわざATMまで通帳記帳しに行ったのだ。


半年に一回のボーナスを思い出した。

それくらいデカい金額が、どこぞの金貸しから何十万とすぐ入る。


感動よりも不思議よりも恐怖よりも、

こんなもんか、という感じだ。


この感触はヤバイのだろう。

これは、人のお金。企業の金。返さなくてはならない、カネ……。


今日は真紅のオークションの締切の日だ。

夜中の9時。

俺は格闘していた。

金額を何度釣り上げても、入札金額を見直せ、みたいな表示が出る……。

現在、真紅の価格は〈¥310,000〉だ……。

こっちがコツコツあげれば向こうもコツコツ上げてくる……。


じっと、宣伝にも使われていた真紅のイメージ画像を見る。


俺はオークションに不慣れだった。


このままじゃ、負ける、負けるのはいい、でも、真紅は手に入れたい。


よくわからないジレンマが俺を少し悩ませた。


俺は、思い切って、入札金額を〈¥330,000〉と入力した。


すると……。


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