第3章 心実
最終話 幸福の日常
「目を覚ましてくれ!!
お願いだから、、神様、どうか!」
ひたすらに
心香に触れている手には熱なんて篭っていなく、
ただ冷たいだけ。この光景を何度も見た気がする。
脈は動いていないただの、人。
現実とは、虚しく、そして合理的。
神様なんていないし、いたところで神は奇跡なんて叶えてすらくれない。
周りにはただの防波堤と波音。
心香の奥に見えるただ白い水平線。
そして横には桜の列。
その波音は僕の耳には雨のように聞こえていた。
いや、いつもは心地よく感じる波の音すら、
大嫌いな雨の音に感じるのだろう。
雨は嫌いだ。
それはいつでも同じ。
確かにあった筈だ。
目の前に本当の幸福が、
僕が求めていた心実が。
僕がいつかから始めた僕の物語の最終話が。
なのに、今、目の前には彼女が血を流しながら、
倒れているその光景しかない。
傷口は塞がる気配すらない。
いや、それが当然なんだ。
雨音に聞こえていた、波と同じく、
雨が降り出す。
降っても変わらないこの現状に、
僕は涙が溢れ出ている。
もう、あの
時計のガラスは完全に割れ、その周りにはガラスの破片が散っている。
破片に反射する白い光がただ、僕を苛立たせる。
時を戻ることはできない。
風が強く吹き、桜は舞い散る。
その儚さと共に、僕の後ろには見たことの無い姿が現れる。
「心香、ここにいたのか。」
壊れかけの遡行時計。それを青年は持っていた。
「すいませ、、」
その時、風が吹き、
桜が舞い散ると共に青年の姿が消えた。
そして手があった場所から遡行時計が落ちる。
僕はそれを拾う。
僕は立ち上がり、そして、海に近づく。
「心香、今から、助けるよ。」
僕は全身に力を入れて、腕を大きく振る。
そして、握っていた遡行時計を海に叩きつけるように投げ込んだ。
その瞬間、周りの空気が歪みだし、
時空が動き出す。
地面が空になって空が地面なんだ。
蒼い光が僕を覆う。
懐かしい感じだ。
ただ、ここを抜ければ求めているものが見つかるから。
僕は動き出す。
この現実を取り戻すために。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。心香。」
目の前には天使のような僕の彼女。
風が吹いて窓から入ってくる桜の花びらと
心地いい風が彼女のブラウンの髪を揺らす。
白い肌が日光に照らされて、ゆで卵みたいだ。
これが僕の幸せの日常。
今日は春。
綺麗な桜舞い散る世界。
外からは桜祭りの賑やかさ。
そして、僕は心香とキスをする。
【これは本当に幸せなの?】
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