12 金属のトレイ

 こちら『金属のトレイ』でございます。


 盛る、運ぶ、供する、配するなどさまざまなシーンで大活躍する金属製のトレイでございますが、本来の用途以外にも、ボケた人物の頭を叩く、攻撃を防ぐ盾、そして、宴会芸と、大活躍でございます。



――――

 カランカランという音がしたのは、カルティが動いたときに、金属製の円形トレイを思いっきり蹴ってしまったからだろう。

 トレイが派手な音をたてながら、コロコロと回転しながら部屋のすみの方へと転がっていく。


「お嬢様! 安静にしてください! 急に起き上がってはだめです!」

「だ、大丈夫よ。カルティ……」

「え……?」


 涙でぐしゃぐしゃな従者の顔が、驚き……いや、怯えたように固まる。


「お、お、お、おっ、お嬢様、大丈夫ですか?」

「カルティ……大丈夫っていってるじゃない」

「いや、大丈夫じゃないです。お嬢様がわたしを名前で呼ぶなんて、ありえません」

「え……?」


 一瞬、あたしの目が点になる。


(今、問題なのはそこなの?)

――――(『お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす~激ムズ乙女ゲームに転生したけど攻略キャラの設定がおかしいです』本編より)


「よく転がるトレイだそうだ」

「まあ! どれだけ転がるか選手権があるのでしょうか?」

「う――ん。世界は広いからなあ。スイカの種の飛距離を競ったり、鹿せんべいの飛距離を競ったり、実に様々な競技が世界には存在するから、捜せばあるかもしれない」

「ぎねすにチャレンジですのね!」

「イトコ殿、参加しようなど思わないでくださいね」

「え…………」




〈イラスト掲載先・近況ノートに飛びます〉

https://kakuyomu.jp/users/morikurenorikure/news/16818023212475270773



〈この作品は……〉

1-10.カルティ・アザ

https://kakuyomu.jp/works/16817330667671419555/episodes/16817330668119935244

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