第3話「転・第二陣と第三陣」

 厳密には第零陣&第一陣と、第二陣&第三陣の間には天地の差がある。

 とは言っても、どちらもリュビアー大陸まで行って、そこで止まっているので大陸間で言えば大差無いのだが。【最後の大陸】エウローパ大陸を誰も踏破どころか足を踏み入れた者も居ないのだ。

 具体的には、第零陣&第一陣はリュビアー大陸の山頂、第六の街『戦乱都市アスカ』までは踏破成功しているのだ。

 だったらここが最前線じゃないじゃん、とも思うが。第二陣&第三陣にとっては最前線なのである。

 戦乱都市アスカへ仲間を連れての〈連れリスポーン〉が第一断層山地の何処か、からしか出来ないのだ。よって、第二・第三断層山地は否が応でも登山なのである。

 霊山なのか、氷山なのか、超能力山なのか知らないが。視えないモンスターが当たり前のようにうじゃうじゃ生息している。あと目に見えるもの以上のものが視える魔法とかも居る。何なのこいつら!? と言わんばかりの強さだったようだ。

 第三断層山地は【視覚出来ない概念】の敵だらけ、今でこそスキル〈心眼しんがん〉があれば何とかなると、攻略最上位陣からそう聞いたが。当時のノーマル冒険者は苦戦中の苦戦を強いられた。

 視えないし、攻撃は食らうし、呪われるし、当たらないし、時間操作してくるし。

 そりゃもう大変だったのである。

 それもコレもモンスターから恨みを買った第零陣、ギルド『非理法権天』のプレイヤーのせいで、第三断層山地は霊山とか化したと聞いたからもう第一陣と第二陣は怒った。プンプン丸である。

 で、そんな中凄まじい業運で駆け上がっていった第二陣、ギルド『四重奏しじゅうそう』組と。凄まじい不幸で置いてきぼりを喰らい、未だに第一断層山地と第二断層山地を上下で右往左往と迷走しているのが第三陣、ギルド『放課後クラブ』だったわけだ。

 そんな中、もう嫌になって匙を投げたのが、ギルド『放課後クラブ』のナンバー1、実質のギルドマスター、天上院咲てんじょういんさきことサキなのである。

 第三陣のトップが居なくなってから数日後? 彼女は再び第三陣へ舞い戻ってきたのである。

 ついでに第四陣も連れて来て……。力になるのか全く不明だが、足手まといかもしれないが、味方プレイヤーを連れて来たのだった。


 そんなこんなで第四陣のギルド『スキルビルダーズ』ことビルドは初戦闘に挑むのであった。

「さて、どうやって倒そう」

 ビルドのスキルは〈ビルドLv1〉と〈業魔幻滅剣Lv1〉と〈ウンドカッターLv1〉である。どれを試してもさしてダメージはない、〈ビルド〉に至っては攻撃技ですら無い。したがって……。

業魔幻滅剣ごうまげんめつけん!」

 迸るカルマを滅する業火の炎を纏った剣が、ナイトスライムを襲う! 

「勝った」とビルドは思った、だがここは曲がり形にも第三陣最前線! ナイトスライムは奇妙な動きを見せる。

「トランジスタ」

 シュン! ナイトスライムはそう呟くと一瞬で電子の海に消えた。

「消え……!?」

 そう思った瞬間には背後を取られていたが、ビルドはそれに気づき、前方向へ逃げる、斬撃を紙一重で避けた。

 あーなるほど、これは初心者じゃ無理だ。と悟ったサキは助け舟を言葉で出す。

「トランジスタは電流? を増幅・発振・スイッチングをする。簡単に言うと電気を自在に操るナイトスライムだよー!」

 全く初心者に優しくない攻撃だった。スイッチングって確か、絶縁体、つまり0や1に出来るって事だよね?

「なるほど、雷を纏う剣で、スライムの方は何だ……?」

「プルンプルン……!」

 ……、ただのスライムのようだった。つまり足は遅い。通常の足は遅く、特技を使うと意味不明な素早さになる敵のようだ。

(つまり、スライムに乗ってることによってむしろ弱くなってる敵か? ならナイトを倒してからスライムを殺れば……!)

 カチン! バチン! ブルルン! と斬撃音とスライムの弾力音を数撃聞いた後に……。ビルドはスキル〈地脈Lv1〉を拾った。


 〈地脈Lv1〉生きた地脈を操り、地属性攻撃を流れのままに相手に当てるスキル。

 ということで早速だが使わせてもらった。

「地脈!」

 地面は波を打ち、まるでゴムのような性質で、ナイトスライムに地震・・が襲う!

「今!」

 足場がグラグラ揺れ、動けなくなっている隙に。

 シュバン! と、地面から岩の柱を大砲のように錬金術錬成してから点火するように放った。

 上に乗っていたナイトスライムの鎧は砕け、驚いた下のスライムは逃げ出して行った。「へへ! どんなもんだい!」

 ビルドは、倒した事により経験値を稼いだが、今はまだレベルに振らないで貯めておこう。次期や必要に応じて使うのだ。

「80点」

 戦況を終始見ていたサキだったが、案外高評価? キビシめ? 最初の初心者にしては上出来なのか、判断に困る点数だった。

「それ、褒めてるの?」

「褒めてるわよ?」

「あ、そうですか……そっちは何か収穫あったか?」

「うんまあ、何となくね。久々に最前線へ来たら、泣いて喜ばれたわ……」

 サキにとっては、若干複雑な心境だった。良いには良いのだが、若干反応に困る、と言う意味で。

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