第36話 死地と人間

「...ここどこ?」


急に足元に魔法陣が出てきて光ったと思ったら外に出ていた。周りを見ると、


「き、さま。」


「狼?」


とても大きくて青と黄色の毛並みの狼だ。


「にんげ、ん。にんげん。にんげん!」


なんかどんどんテンションがあがっていってない?


「にんげんんん!!!」


と、唐突に巨大で早いお手が迫ってくる!


「はい!?」


《アイスシールド!!》


俺の後ろからマスターの声が聞こえてきて、目の前に氷の盾が生まれた!


「マスター!」


振り向くとそこには少し埃にまみれたマスターが立っていた。足元には人型の狼が横たわっている。多分あれが狼人族なんだろう。


「とにかく下がって!」


マスターの元まで急いで下がる!


「なんなんすか!なんで俺はこんなところに!」


「私が知るわけないでしょう。」


「マスターが呼んだんじゃないんですか?!」


「あなたが勝手に来たんです。」


「勝手にって、おわ!」


マスターに問い詰めていると目の前の巨大狼が動いた。


「にんげんんんん!!」


「避けて!」


「うぉ!!」


横に飛び辛うじて攻撃を避ける!動けたのはマスターとさっきまでの修行のおかげだろう。


「なんなんだよ!」


「とりあえず避けて!」


マスターが警告してからも狼の攻撃が続く!マスターが氷の盾を発動させている間に横に逃げることを繰り返す!マスターは氷の魔法で狼の魔族を逃がしながら攻撃を避けている。だが苛烈さは増していき、なんだが俺の方に意識が向いている気がする!


「なんで俺にヘイトが!?」


「あれは狼王です。」


「狼王って、狼人族の王様?」


「そうです。」


「...なんか、今までの王様とは違うっていうか、単なる狼っぽいっていうか。」


「色々あって今は狼なんです!人間に執着してるので逃げてください!」


「え!なんで!俺面識ないって、うわぁ!」


雷の攻撃が俺に向かってくる!メイガスさんとの修行を思い出して、右へ左へ逃げ回る!あまりその場からは動かずに避ける!


(メイガスさんの攻撃から逃げる修行がこんなに直ぐ役に立つなんて!)


マスターは最初は魔法で防御をしてくれていたが、俺が避けられるのを確認すると自分から離れたところに氷の槍を作り、それを狼に向かわせた!


モフッ


と場違いな擬音が起こりそうなほど柔らかく弾かれる。


(やっぱり効かない。強力な魔法で破壊するしかないか。)


サリヤが狼王の攻略法を考えている中、狼王の意識がサロヤに向かい、二人きりの雰囲気になったレイトと剣士。


「お前、人間、なのか?」


最初は蹴られまくっていた狼の魔族も立ち上がって逃げれるようになって、一緒に逃げているさなか聞いてきた。その腰には刀がぶら下がっている。


「まあ、人間っす。」


「......。」


めっちゃ俺のことを見てくる。というか匂いかいでない?


「人間が何故召喚される?何故あいつはお前を守る?」


「ンなこと今は...。」


「話してないで前を、」


マスターがこっちを注意しようとしたとき、狼がすさまじい雷を口から放った!


「ガァァァァ!!」


その魔法はマスターの向かってきていた氷の槍を一瞬で砕き俺たちの間に落ちた!


「うぉ!」

「くっ!」

「がぁ!」


お互いに吹き飛ばされ、マスターが俺たち二人とは逆の方向に吹き飛ばされる!


「マスター!」


「私より自分のことを...危ない!!」


狼から目を離した瞬間、雷の魔法が向かってきた!


「やば!!」


逃げようと横に目を向けたとき後ろにいる狼人族が視界の端に入った。


「あっ......。」


彼は雷で痺れて動けなさそうだ。その顔は何かを悟ったような顔だ。そして、俺の足は止まり、


《アイスシールド!!!!》


いつの間にか氷の盾を展開していた!

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