第4話 使い魔と魔力
サリヤについて城の中を歩いているとき、レイトはティーナに話しかけてみた。
「ティーナさん。」
「はい。なんでございましょう?」
「マスターって自分が魔王の一族って事、嫌なんですか?」
「何故ですか?」
「だって、さっき魔王の一族って凄いですねって言ったら不機嫌になったじゃないですか。」
サリヤに聞かれないようこそこそと聞くレイト。
「そう...ですね、申し訳ありません。私は理由はわかりません。ただ、サリヤ様は何事もご自分で行動をするのがお好きなので、世襲で受け継ぐのに抵抗があるんじゃないでしょうか。」
「なるほど。」
「……ちょっと。」
はっ、と二人で前を向くとサリヤが部屋に入ろうとしていた。
「儀式の部屋に着きましたよ。」
「申し訳ありませんサリヤ様。直ぐに参ります。」
「すいませんでした。」
中に入ると、
「何も、ない?」
「儀式を行う場所はこういう所が最適なんです。魔力が満ちて、何も障害がない場所が。少し待っていて下さい。私とメイガスで魔方陣を描きます。」
そう言われて部屋の隅に追いやられるレイトとティーナ。
「あの、ティーナさん。」
「はい。なんでしょうか?」
「魔力があるって事はそれを使って魔法を使うんですよね?」
「はい、その通りです。」
「どんな魔法があるんですか?」
「使える魔法は人それぞれ、というか一族によって違います。まあ、適性があれば後から違う魔法も使えるようにはなりますが。」
「一族で?適性?」
「はい。まず誰がどの魔法を使えるかというのは産まれた一族によって決められます。例えばサリヤ様の御一族は闇魔法を得意としています。他の魔法も使えないことはありませんが、他の魔法を使うには個人個人の適性が重要になってきます。サリヤ様でしたら氷魔法の適性があるのでその魔法を学べば使えるようになります。それ以外の例えば、光魔法などはどんなに修行しても会得することは出来ないです。」
「つまり、最初から使える魔法は一族でそれぞれ違って、後から覚える事が出来る魔法は個人で違うってことですか?」
「その通りでございます。ただメイガス様のようなエルフ一族はこの世の全ての魔法の適性を持っているので学べば学ぶほど色々な魔法を使えるようになります。その分全ての魔法を基礎から学ばなきゃいけないので大変らしいんですけどね。」
「へー、頭良さそうですもんね。ティーナさんはどんな魔法を使うんですか?」
「私は…魔法を使えません。」
「えっ?」
「私は龍人族なんです。代々炎魔法と龍の変身魔法を使うんですが、私はそれらを受け継げなかったみたいで……。加えて龍人族は他の魔法の適性が全くない種族なので、私は魔法が使えないんです。」
「そう、だったんですか。すいません、変なこと聞いちゃって。」
「いえいえ、馴れてますから。それに私のような者がサリヤ様にお仕え出来るだけで幸せですから。」
「そんなにマスターの事が好きなんですか?」
「はい。敬愛しております。本来王族にお仕え出来るのは魔法が長けたものだけなんです。元々私は城下町の食堂で働いていたんですがたまたま視察に来たサリヤ様の目に止まり、お仕えする次第となりました。」
「へーー。ティーナさん的には良かったんですか?」
「勿論ですよ。王族にお仕えするのは憧れでしたから。」
お仕えの感覚がわからないレイト。バイトもしたことがない彼からすると更に未知の領域だった。
「さて、こんな感じでしょう。」
魔法陣を書き終えたようなのでサリヤのもとに向かう。
「契約を始めます。メイガスとティーナは外に。」
二人だけで魔方陣の真ん中に立つ。
「……レイト。」
「はい?」
「一つ確認があります。部分契約とはいえ、契約を行うと私達はほぼ離れられなくなります。」
「はぁ…。」
「なので、もしかしたら……あなたは元の世界に帰れなくなるかもしれません。それでもいいですか?」
(帰れなくなるかもって言ってもなぁ。)
「あなたがこの世界に来てからあなたの意思に関わらず物事が進んでいるかもしれません。」
サリヤの声がどんどん小声になっていく。
「ごめんなさい。私のせいであなたを捲き込んでしまって。」
(……そんな顔で、そんな声で、そんなこと言うなよ。)
「帰りたいと言うなら、契約はしませんが……でも、私は」
「あー、もう!マスター!」
「!!な、なに!」
「マスターは俺でもいいんですか!全く戦力にならない俺で!」
「………勿論です。私が戦力にしてみせます。契約をするというのなら大船に乗ったつもりでいてください。」
「じゃあ、大船に乗ったつもりで契約するんでよろしくお願いします。マスター。」
「…はい、よろしくお願いします。」
(……みんなに会えなくなるのは寂しいけど、あんな顔されたら放っておけない。)
レイトの中でも覚悟が決まった。
「それでは部分契約をしましょう。私の手を握ってください。」
「はいよ。」
手を握って見つめあう。
《主はサリヤ、従はレイト。二人を繋ぐ契約をここに。私の力の一部を授けます。》
魔方陣が光った後、サリヤの手から冷たい何かが流れ込んでくるのを感じたレイト。
(これが魔力?)
「ふぅ、契約は終わりです。魔力をあなたに流していますがなにか感じますか?」
「なんか、冷たいのが流れてきてる感じはします。っていうか魔法を使うのって結構簡単なんですね。」
「詠唱の事ですか?必要なのは頭の中でのイメージですから極端な話詠唱はどうでもいいんです。定型文はありますけど、自分で分かればなんでも。」
「へーー。…というか、なん、か、ごふっ!」
手を放した瞬間、レイトは血を吐いて膝をついていた。
「レイト様!?」
「静かに!」
心配するティーナをサリヤが静める。
「メイガスに言われたでしょう?あなたと私が契約をすると血液が増えるみたいな感じになるって。今の状況がそれです。因みに今は一割程度の魔力での契約です。それに慣れなければ今後やっていけませんよ。」
「こ、の…、言って、くれる……。」
レイトは意識を失わないように気を張り続けていた。過去に受けた手術での全身麻酔を思い出していた。血管の中を冷たいものが巡ってるのがわかる。
「抵抗せずに魔力に身を預けてみて下さい。それで変わるはずです。」
(言うのは簡単だよな…。)
深呼吸をして全身の力を抜く。
「………っ。」
冷たい感じが全身を一瞬で駆け巡り、全身を痛みが襲う。
「……あれ?」
痛みに備えていたレイトだったが痛みが直ぐに引いた。体の中もいつも通りに戻って、ある意味拍子抜けしてしまったレイト。
「とりあえず私の魔力に順応はしたようですね。」
「はぁ、なんとか。」
「また後で何か起きるかもしれませんから今日は部屋で休んでいた方がいいですね。ティーナ。」
「はい。」
「私と彼の昼食を私の部屋に持ってきて下さい。」
「かしこまりました。」
「メイガス。」
「はっ。」
「彼の世界の事が分かったら教えて下さい。どんな些細なことでもね。」
「全力でかかります。」
「よろしくお願いします。ではレイト。部屋に戻りますよ。」
「はいっす。」
その後部屋に戻ってティーナお手製のおにぎりを食べたらまた眠くなってしまい、寝てしまった。寝るときに考えたことは
(流石におにぎり以外が食べたいな。)
であった。
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