第11話 トビの才能
トビは使ってないツリーハウスを借りた。どうやら攫われたエルフが住んでいた場所らしい。
洗濯物や干物が干してあり、狩猟用の弓矢や槍などが飾ってある。生活感あふれる部屋だ。トビは部屋に入った後、一度頭を下げ、布団を使って眠った。
翌日。
トビはマロマロンの従者の案内でエルフの里の北にある訓練場へ連れてこられた。
大量の木の根を編んで作られたリング、そのリングを巨大な大木4本に紐で括り付け吊るしている。トビとマロマロンはその木で編まれたリングに上がる。
「このリングはエルフが魔力を込めて編んだものでな、巨人の一撃すら弾く強固さを持っておる。好きに暴れても大丈夫というわけじゃ」
「エルフの技術には驚かされるばかりです」
さて。とひと息つき、マロマロンはぶかぶかのローブを脱ぎ捨て、胸布と腰布だけの姿になった。銀色の長髪を髪紐でくくり、動きやすい格好になる。
「してトビよ。耐性関係なしに使える魔法をなんと呼ぶか知っておるか?」
「知りません」
「魔術、じゃよ。おぬしにはこれより魔術を教える」
「魔術……!」
トビはキラキラと目を輝かせる。
「魔術は大きく四種類。強化術、結界術、治癒術、召喚術。治癒術はおぬしも見たことがあるじゃろう」
「名の通り、体を癒す術ですよね。あれが魔術ということは、僕にも治癒術が使えるというわけですか!」
「無理じゃ」
ガクン、とトビは肩を落とす。
「一か月じゃ到底教えられん。治癒術は複雑でのう。才ある者がさらに多くの時間を費やしてようやくできるものじゃ。長寿のエルフが揃うこの里でも使える者は三人のみ。召喚術も同様に難易度が高く、時間がかかる」
「じゃあ、結界術ですね!」
「結界術も無理じゃ。教えられんわけではないが、対V・タイタン戦では役に立たん」
「ということは……」
残るのは一つ。
「強化術ですね」
「そうじゃ。強化術とは、名の通り魔力で体を強化する術のことを言う。おぬしも微量じゃが無意識に体を魔力で強化しておるぞ」
「そうなんですか? 自分じゃ全然わからないですね……」
「ふむ。まずは己の魔力を自覚するところからじゃな。そこに座れ」
トビが膝をついて座り、マロマロンがトビの背中に右手を当てる。
「今からワシの力でおぬしの魔力を引き出し、体を循環させる。籠手を外し目を閉じよ。全神経を費やして己の肉体に集中せい」
「わかりました」
マロマロンが魔力を右手から放ち、トビの体を刺激する。
「いま、なにか感じるか?」
「……右手が少し熱い感じがします」
「良い感覚じゃ。いま、おぬしの魔力を右手に集めている。利き手が一番魔力を感じやすい場所と言われておるからな。その右手で思い切り床を叩いてみよ」
トビは床を殴る。するとあまり力を込めていないにもかかわらず、リングを揺らすほどの力が出た。
「これが強化術……!! すごいや。全然力を込めてないのに全力で殴ったぐらいの威力が出た!」
「喜ぶのは早い。今のはワシがアシストしてやっただけじゃ。おぬしの力ではない。今度はいまの感覚を思い出しながら自分でやってみよ」
「はい!」
トビは立ち上がり、自然体の状態で瞼を下ろす。
(さっきのでわかった。魔力を生み出す器官は体中にある。頭のてっぺんからつま先まで、合計204個ほど魔力が噴き出す穴がある。だけど普段の僕はその穴に栓をしていて、204個中10個ぐらいしか機能していない。まずはこの栓を外す)
一個一個、魔力の穴を解放していく。
(心臓と脳にある穴から溢れる魔力の量が段違いだ。この二つだけで他202個が所有する魔力に匹敵するだけの魔力が出せる)
204個中、102個の穴を解放。
全身に魔力が溢れ出す。
(外した栓をまた戻すのも可能。でも今は、とりあえず一度、全部解放してみよう)
体中の栓を外す。
トビの纏う魔力は青みを帯びて、真っ青な魔力の柱ができるぐらいの放出量を誇った。
(あとは右手にこの大量の魔力を固めて、床を殴れば……!)
トビは右拳に魔力を集めて、振り下ろそうとする。
「よせ!!」
マロマロンが止めに入ろうとするが、時すでに遅し。
トビは右拳を振り下ろした。
――ドオォン!!!
巨人の一撃すら防ぐ特殊な木で編んだリング、その床に、巨大な穴ができたのであった。
---
トビが魔力を練り始めた時、マロマロンはトビの才覚に思わず笑ってしまっていた。
(素晴らしい資質じゃ。一度魔力を起こしただけで魔力を封じる蓋、
ゾクゾク、と逸材を前にしてつい鳥肌が立ってしまう。
(スラムロック育ちでありながら肉体の完成度も高い。エルフの精進料理できっちり肉体を構成すればさらなる身体能力向上が見込める)
トビがすべての
「ちょっと、この魔力量は予想外じゃのう……!」
トビが右手に魔力を集める。
――まずい!
マロマロンはトビがやろうとしていることを察して、急いで止めようとする。
「よせ!」
マロマロンの制止は届かず、トビはリングの床に大穴を空けた。
「なんと……!」
「あわわわわわ……! ごめんなさいすみませんごめんなさいっ!」
トビは訓練場の床を破壊してしまったことに大慌てし、土下座するが、マロマロンはそんなことどうでもよかった。
目の前の逸材に、目を奪われていた。
(こやつになら教えられるかもしれん。あの技を……!)
――――――――――
【あとがき】
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