幼少編・5『イタズラって楽しい』

 

「はふぅ。つかれた」

「いててて。クソババアめ、バカスカ当てやがって……」


 朝のトレーニングが終わり、訓練場のそばの木の下で寝転がる俺。


 単純な体力不足でキツかった俺と違い、ガウイはヴェルガナと打ち合いの訓練を行っていた。もちろん実戦形式だ。

 歳の割には力もあって見た目より動けるガウイだったが、盲目のヴェルガナにはまったくかすりもせず何度も打たれて転がされてを繰り返していた。正直スカっとしたね。でも、まだまだステーキの恨みは忘れてないぞ。


 木剣をヴェルガナに返したガウイは、なぜかひと休みしている俺に近寄ってくる。

 あっダメよ、いまは動いたばかりで汗臭いから気になっちゃうわ。やだ、汗のニオイが……そう、お前のな。臭いから近寄るなあっちいけ!


「おいモヤシ、ちょっと言うこと聞け」

「え、イヤだけど」


 ふつうに拒否してしまった。

 さすがに一言で断られると思わなかったのか、変な顔をしたガウイ。今までのルルクくんは気弱で頼みごとを断るようなことはしなかったんだろうな。

 うーん、仕方ない。これもロールプレイだ。


「まあ話くらいは聞いてあげるよ」

「……そうか。手伝ってくれるんだな」

「いやなにを?」

「クソババアの尻に、魔法をぶちこむ」


 諦めてなかったのかよ。


 さすがムーテル家の悪ガキ代表。嫌いな相手にはウォーターボールを叩き込まないと気がすまないらしい。あの魔術なら濡れるだけでケガはしないからそれくらいいいけどさ。

 しかし相手はヴェルガナ。さっきの打ち合いを見たところ、ガウイの速度じゃ目を閉じてても避けられるぜ? もともと閉じてるけど。


「作戦は?」

「モヤシが気を引いて、俺様が後ろからズドン! だ」


 ズドン? ピチョンの間違いだろう。


 まあいいや。それくらいならイタズラに付き合おう。無論、これは俺が子どもだから当然の遊び心であって、かつ兄弟の絆を深めるためにやることなのだ。だから決してさっきのトレーニングでケツを叩かれてまで走らされたことを恨んでいるわけじゃないからな?

 しかしガウイよ、その作戦には致命的な欠点があるぞ。


「問題は詠唱を聞かれないためにどうするか……」

「そんなもん、遠くからやればいいだろ」

「ヴェルガナは盲目だぞ。視力に頼ってないぶん、耳がいいに決まってる」

「そうなのか?」

「昨日、風呂で桶を崩しただろ。あの音でヴェルガナが風呂場にやってきたって考えたら、かなり耳がいいのは間違いない」

「そうか。じゃあどうするんだ?」

「……木を隠すなら森の中作戦でいこう」


 あれ? なんか俺が主導権握ってない??

 しかたない。頭脳労働が苦手そうな兄の代わりに、運動が苦手な弟が考えてやろう。


 作戦はこうだ。俺がウォーターボールの詠唱をリズムに合わせて歌い続ける。もちろん俺には魔力がないから魔術は発動しない。意味もなく何度も歌ってると、ヴェルガナの耳が詠唱自体を雑音判定として意識の外に弾き出すだろう。

 そこでガウイが詠唱すとほら不思議、ヴェルガナはその詠唱を雑音だと思って聞き逃すって寸法だ。

 まるで線路沿いに住んでいる人が電車の音を気にしなくなるみたいにな。

 その隙に後ろから不意打ちすればいい。


 ガウイに作戦の概要を伝えると素直に感心したように声を漏らした。


「モヤシ、おまえ頭いいな。10点やるよ」

「はは~ありがたきしあわせ」


 やったぜガウイポイント10点獲得だ。何に使えるかしらんけど。

 とまあやることは決まったので、あとは実行するのみ。


 俺はゆっくりと立ち上がり鼻歌を歌いながら、木製のトンボで訓練場の土をならしてるヴェルガナに近づいていく。ちゃんと木陰に隠れたガウイの反対側になるようぐるりと回る。

 ええと確か、詠唱はこうだっけな。


「我は乞う~、母なる命の源よ~、我に~清涼なる一滴の雫を与え~、彼を穿つ礫となりて~弾け飛べ~」


 いきなり俺が歌い出したことで、ヴェルガナが一瞬怪訝な顔をした。

 しかしさほど気にせず土を均し続けているので、俺はそのまま壊れたレコード再生機みたいに同じ詠唱を口ずさみ続ける。

 魔術は使えないけど魔術を使っている気分にはなれる。バカみたいな詠唱練習みたいに見えるけど、子どものやることだから大人は気にしない。


「我は乞う~、母なる命の源よ~、我に~清涼なる一滴の雫を与え~、彼を穿つ礫となりて~弾け飛べ~」

「我は乞う~、母なる命の源よ~、我に~清涼なる一滴の雫を与え~、彼を穿つ礫となりて~弾け飛べ~……『ウォーターボール』!」


 やったか!?


 俺の声に合わせて魔術を発動するガウイ。

 右腕に左手を添えて照準を合わせたガウイの水弾は、まっすぐにヴェルガナの背中へと向かって飛んでいき――


 パァン!


「……え?」


 何が起こったんだ?

 気が付けば水の弾が破裂していて、さっきまで土を均して中腰だったはずのヴェルガナが、持っていたトンボを振り抜いた姿勢になっていた。

 動きが速すぎて見えなかったんだが?


「さあて、これはどう判断したもんかねぇ……」


 盲目のヴェルガナは、低い声を出して俺とガウイ交互に顔を向ける。ガウイは「ひぃっ」と悲鳴を上げて尻もちをついた。怖い気持ちはとてもわかる。

 失敗したのは一目瞭然。きっと不意打ちの主犯がどっちか悩んでるんだろう。

 俺は迷わず行動した。


「あー! ガウイ、俺の詠唱練習を利用してヴェルガナに攻撃したんだな! 後ろから攻撃するとかいけないんだー! まったく根性叩き直してもらった方がいいよ。ってことでヴェルガナ、俺は先に屋敷に戻るけど、あの性根のねじ曲がった悪ガキのことしっかり折檻しててくださいね。じゃあよろしく! 疲れ様でした!」


 三十六計逃げるに如かずってね。

 とっとと退散した俺に向かってガウイが「うらぎりもの~!」と叫んでいるけど、知ったこっちゃないね。自分の行動は自分で責任を取りなさい少年。


 屋敷の扉を閉めるとき、後ろからガウイの叫び声が聞こえてきた。ああ、今日の朝食はさぞかし美味しいだろうなぁ!

 

 ちなみに、このあと追ってきたヴェルガナに俺も折檻されました。

 あの野郎俺を売りやがったな許さん!



□ □ □ □ □



 朝食が部屋に運ばれてきたときには、体の疲れや痛みは綺麗さっぱりなくなっていた。筋トレしたのにまだ筋肉痛は来ない。まあ即日来るようなものでもない……のか?


 俺の初めての異世界飯は、謎のひき肉を炒めて塩コショウで味付けしたものと、サラダ、薄味のスープ、パン、そしてほんのり甘いヨーグルトもどきだった。


 謎肉はあきらかに牛でも豚でも羊でもない臭みがあった。食べられないほどでもないし、独特な旨味もあったのでこれはこれで異世界飯っぽくていい思い出になった。スープにも薄切りの肉が入っていたけど、また別の獣の肉だったのだろうか。そっちも食べたことのないクセのある味だった。

 異世界で初めての食事、それなりにウマくて満足でした。

 ……サンドイッチ? はて、なんのことやら。


 とにかく早朝から運動して満腹になった俺は迷わず二度寝。とくに予定もないし屋敷を探索したかったけど、幼い体は眠気に勝てなかった。すやすやと昼前まで寝てしまった。

 スッキリした気持ちで起床。


「よし、探索探索っと」


 太陽はほぼ真上。半袖でも過ごせそうな陽気だった。

 今日は二階と、三階も探索してみたい。いまのところ書斎は見てないので、三階にある気がする。というか俺以外の家族はみんな三階に私室があるみたいだから、そういう大事なものとかは三階にまとまっている気がする。


「右よし、左よし、悪ガキよーし」


 ヴェルガナをのぞくメイドたちは俺を見ないフリしてくれるので、用心すべきは父親と悪ガキだけだ。まあ父親に見つかっても家の中なら何か言われることは少ないだろう。問題は悪ガキ。絡まれたらふつうに邪魔だ。


 慎重に、かつ不自然にならないように二階の各部屋を開けていく。私室は鍵がかかっているから入れないけど、それ以外の部屋は基本は入り放題だ。

 最初は扉をノックしていたが、だんだんめんどくさくなってやめた。父や悪ガキの気配にだけ気を付けて、違いそうなら遠慮なく扉を開けてまわる。


 納戸、トイレ、家族風呂、謎のベッドが並んだ部屋、衣裳部屋……うーん、ヴェルガナ以外のメイドの部屋は一階にしかないな。ちょうど着替えのタイミングに入るハプニングとか期待したんだけど。ほら、もし着替え中でも俺五歳児だし精一杯のアルカイックスマイルを浮かべたら何とかなりそうじゃない?


「くそ、この世界にも欲望センサーがあるっぽいな」


 着替え中だったのは料理長(ガチムチの中年男性)だけだった。即座に扉を閉めたよね。料理長ってわりに筋肉ムキムキなのは凄いと思うけど、ひとこと言わせてもらうなら着替え中は鍵閉めてくれよオッサン。


 結局二階には書斎はなかった。荷物を置いてるだけの部屋や、がらんどうの空き部屋もけっこう多かったな。屋敷の広さを考えたら、どう考えても部屋が余るだろうから当然か。


 さて、では三階へ行こうか。


 大人じゃ気にならない階段も、五歳児にとっては登るだけで筋トレだ。えっちらおっちら登っているとなにやら視線を感じて顔を上げる。

 階段の先――三階の廊下の角から、ひょっこり顔を出している影がひとつ。


 俺と同じ茶色い癖毛に、くりっくりの青色の瞳。あれはまぎれもなく妹のリリスだ。不安そうな表情でこっちを見ている。


 ふむ。ルルクと面識があったのか、それとも……。

 まあ考えてもわからないから、無難な対応でもするか。

 俺は階段を登りきると、隠れているつもりのリリスに軽く挨拶した。


「やあリリス。今日もいい天気だね」


 自慢じゃないが俺はコミュ障だ。そして天気の話は会話に困ったら誰とでもできるってネットに書いてた。足りないコミュ力は外部から取り入れる……これぞ完璧な作戦。


「……。」


 無言だった。

 あれれ~おっかしいぞ~?

 アレかな。ずっと部屋にいて外見てないのかな。

 ならば。


「今日も暖かいね」

「…………。」


 うーん違うか。

 じゃあつぎは……くそ、ダメだ。もう天気の話題が思いつかない! 完璧なコミュニケーション作戦に思わぬ落とし穴が!

 どうしたらいいのかわからずに黙っていると、リリスはシュッと引っ込んだ。そのままテトテト駆けていく足音。


「あらら。野生の妹に逃げられたな」


 曲がり角を覗くと、三つほど向こう側の部屋にとびこんだリリスの姿。

 なんだか巣穴に逃げ帰る小動物みたいだったな。


 ま、いいや。気を取り直して。

 俺はリリスの部屋とは反対側の廊下を進むことにした。さすがに俺以外の家族の私室が並んでいると思われるので、礼儀をわきまえて行動しよう。具体的にはまず中の気配をうかがって、人がいそうだったら無視する。いなさそうだったらノックして返事がなければお邪魔します!

 という流れで順番に巡っていると、五部屋目の扉の先に書斎を見つけた。


「おおっ!」


 本だ。

 この世界の印刷技術がどれほど進んでて本にどれくらいの価値があるかもわからないが、とにかく壁一面に並ぶ本があった。ちゃんと移動式の梯子もついていて、子どもでも上段に手が届くようになっている。

 部屋の中央にはソファが二つとテーブルがひとつ。テーブルにはベルが置いてあり、メイドを呼んで給仕してもらうこともできそうだ。

 ゆっくり本を読める環境があるなんて、まさに公爵家最高。


「ふんふふ~ん」


 鼻歌まじりに書棚を眺めて回る。

 ちゃんと背表紙が読めた。『マタイサ王国史』『貴族の常識』『経営学基礎』『騎士育成論』……地味に心配していたけど、ルルクは真面目に勉強していたのか問題なく文語の知識もあるみたいだった。文字がアルファベットみたいに一種類だのも尚更助かった。日本語のような三種混合とかだったら勉強から始めないとならないところだったからな。


 うーん、史学に地理に経済に教育……お堅い本が多いな。伝記とか神話とかあればいいけど。そういえばヴェルガナも勇者の伝説があったって言ってたな。創作だとは思うけど、べつに俺は昔話みたいな伝承だけにこだわってるわけじゃないからな。物語であれば二次創作でもBLでもイケるくちだ。


「『三人の賢者と世界樹』……お、これは小説っぽいな」


 見れば、その周りにある本は小説や伝記ばかりみたいだった。

 俺はそこから何冊か手に取り、テーブルに置いてソファに体を沈める。

 まずは『三人の賢者と世界樹』から読んでいこう。


 ふむふむ。

 ……。

 …………。

 ……………………。






 ハッ!?


 あかん、読みふけってもーた。


 なにこれ普通に面白いんだけど。〝魔術〟〝理術〟〝神秘術〟の賢者という三人が旅をして、魔物を倒したり色々な人を助けながら冒険する話だった。


 魔術の賢者はそのまま魔術で戦ったり、理術の賢者は薬学や化学みたいな技術で人々を助けて、神秘術の賢者は不可思議な力で仲間を守って……単純に設定が面白いのもあるけど、三人のキャラが立っててものすごく読みやすい。ストーリーもしっかりしてていい意味で展開がわかりやすく、勧善懲悪ものだから章ごとに爽快感がある。物語の要所にちりばめられた世界樹の情報が、これからどう繋がってくか気になるところだったが……。


 気づけば外は夕焼け。集中しすぎて昼飯を食べ損ねてる。

 まあそれは仕方ない。

 それよりも、だ。


「…………。」


 書斎の入り口から、じっとこっちをみる影。

 リリスだった。


 なんだろう。目が合ったらちょっと引っ込むけど、視線を逸らしたらまた顔を覗かせてこっちを見ている。檻から解き放たれた珍獣でも見るような目だ。もしかしてルルクとリリス、いままでほとんど接点なかったのかな。


「えっと……何か用?」


 声をかけると、シュバッと振り返って走っていった。

 何がしたかったのか、女児はよくわからん。

 これならまだガウイのほうが扱いやすいなぁ。ウザいけど。


 そう思いながら、本を書架に戻していく俺なのだった。




――――――――――

〇あとがきTips


『三人の賢者と世界樹』


 全10巻からなる、約800年前の世界が舞台の世界的ベストセラー小説。

 初版は750年前と各国で記録あり。初版本は遺失しており原作者は不明で、確認できる最古の同題作品は写本版が二種類残っている。(どちらも一部結末が違うため写本と推定。個人所蔵により非公開)

 多くの種類の写本が出版されたが、約200年前に印刷技術が確立されてからは物語構成は人気のあるパターンに一本化されており、現在の『三人の賢者と世界樹』の雛形が出来上がっている。尚、一部ファンから原作版の結末は現行作品とは違うはずだと、よく論争が起こるほどの人気。

 

 主人公(語り部)は〝魔術の賢者〟で、幼馴染の〝理術の賢者〟と祖国の王女で〝神秘術の賢者〟の三人で世界中を旅しながら、困っている人たちを助けたり魔物を倒していく英雄譚になっている。

 大筋としては、三人の旅の目的は創造神へと繋がると言われている〝世界樹〟を探し出し、それぞれの願いを神に叶えてもらうこと。

 魔術の賢者は、失った母の形見を取り戻すこと。

 理術の賢者は、生き別れた弟と再会すること。

 神秘術の賢者は、王国から飢えを失くすこと。

 三人はその目的のために旅をして数々の人を救い、そして賢者と呼ばれていく。そのなかで彼らが求める本当の願いを見つけていく、というもの。


 何百年間もベストセラーになっている理由のひとつが、賢者たちが人助けのために創設した組織〝冒険者ギルド〟が世界中の街に点在すること。現在の冒険者は荒くれものが多く、人助けよりも探索や採取物売買のための営利目的で活動する者がほとんどだが、それでも人々の暮らしにおおいに役立っているため、腕っぷしに自慢のある者はみな冒険者に憧れる。

 

 原作本は考古学的観点からみても大変貴重な歴史的資料で、いまだ考古学者たちが捜索している。初版の原作者は魔術の賢者だと一般的に認識されているが、一部の伝記によると原作者は魔術の賢者の弟子だという。弟子は特筆すべき成果を残さず亡くなったので、その名前も不明。一部ファンが原作版の結末が現行作品と違う、と豪語するのはこの原作者弟子説が有力なためである。理由は以下に詳細記述。


【原作考察班による現行版との差分予想】

〇現行版『三人の賢者と世界樹』の結末(終盤)

・賢者たちは世界樹を見つけられずに終わる

・ただしそれぞれの願いは、別の形になって叶う 

・賢者たちの各師匠がお助けキャラとして登場する

・勇者が出てくる(一時敵対する)

・最終決戦は魔族が相手

・仲間に竜種が加わる

・最終決戦で全員生き残る

・主人公は理術の賢者と結婚し、三人で冒険者ギルドを創設。以後、世界のために尽力する。



〇各国の歴史資料から読み解く、原作版『賢者と世界樹』の結末(終盤)予測

・賢者たちは世界樹を見つけて、願いを叶えてもらう

・だがその願いは、世界に破滅を呼ぶ

・賢者たちの師匠が破滅から世界を救うが、うち二名が死亡

・勇者が賢者たちを世界の敵とみなして殺し合い、彼らは勇者を殺す

・最終決戦は世界の敵になった賢者たちと、世界の人々

・仲間の竜種が裏切る

・最終決戦で理術の賢者が死に、主人公と神秘術の賢者は世界樹へと逃げ込む

・世界樹の力を使って、自分たちの愚行を無かったことにして歴史を捻じ曲げる

・主人公は神秘術の賢者と結婚し、冒険者ギルドを創設。以後、世界のために尽力する

・世界樹の存在は危険すぎると判断した神々は、世界樹を隠した


※諸説あるため、一番有力と検証されている学説を記述。ただしどの説にも共通して書かれているのが、賢者たちがすべての私財を投げうって冒険者ギルドを作ったのは、世界を危機に陥れた贖罪だということ。

※原作者弟子説によるこの説の根拠は、物語中に主人公がみせる破滅願望ともいえる危うさと、それに対する弟子の冷静な指摘シーンの数々、世界中に同時発生した歴史資料の不可解な一部消失事件、800年前に起こった世界樹消失、各国で記録されている初版本の販売時期が魔術の賢者の死亡した翌年だった、という理由によるもの。


 実際に『三人の賢者と世界樹』がどこまで事実に基づいているかは定かではない。しかしフィクション・ノンフィクションにかかわらず熱心なファンたちは、いまもどこかに現存するという原作本を探し続けている……。

 

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