醒めないで!りとるとわいらいと
@hakka_ur371
第1話 夜の帳とブランケット
すれ違った瞬間、スポットライトを浴びたようだった。この世界には2人だけしか居なかったと錯覚する様な。それ程、君の無垢で穢れのない瞳に惹かれてしまったんだ。
ーーーー
「まーた言ってる!恥ずかしいからもう辞めてって言ってるのに!」
そう言ってむくれているモチモチのほっぺがたまらない。
「だって、まーくんは僕にとってのブランケットみたいな存在だもの。まーくんはお昼寝の時に使うブランケットが好きでしょ?包まれば落ち着くし、癒される。つまり…」
「…つまり?」
「友達が居なくて、趣味もなく、バイトも失敗ばかりの癒しが必要な僕には手放せない大切な存在ってわけ。
これでも言い足りないんだ。君と出会った時のこと。」
はぁ、とため息をついたまーくんは、「とてとて」と効果音が付きそうな可愛らしい足取りで僕の膝に座った。そして、一生懸命体を捻らせて僕の方を見ながら
「おれのことはもう分かったから、自分のこと卑下するのやめなよ。忍のいい所、おれはいっぱい知ってるもん!てか、友達1人はいるだろ!」
「いないよ」
「即答!?」
大福ほっぺをモチモチしながら
「何なら居なくていい。まーくんだけが僕のいい所を発見してくれているならそれでいい。」
と言うと、何故か唇をとんがらせている萎んだ大福ちゃんがいた。
「なーに?その顔。キスしていいってこと?」
「…ほっぺだけならね。」
なんて俯きがちに言われるとどうにも堪らなくなってしまう。可愛すぎるという感嘆のため息を漏らしつつ、サラサラの茶髪を撫で回す。色素が薄くて人間離れして見えるせいか、天使みたいだとぼんやり思う。
「…………しないのかよ!!」
僕がのんびりと物思いに耽けっている間、まーくんはずっと目を瞑って何かを待っていた様で真っ白なほっぺが苺色に染まっていた。
「いいんだ。僕は。穢したくないし。」というと、
外方を向きながら
「なんだよ。穢すって。チューニビョウって言うんだぜ、そういうの。忍のチューニビョウ」
と返される。
はいはい。もう寝るよ。と言ってベッドに案内すると、ぎこちない動きで僕と同じブランケットに包まる。優しいミルクの様な香りが鼻を擽り、満たされた気持ちになる。
明日も今日が来ればいいのに。そう願いつつ、小さな背中をさすってやるとキュっと抱き締められた。
小さな小さな力のはずなのに酷く締め付けられた気がした。明日が来る前にせめていい夢が見られますように。
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