ステータスが二個あるんだけど

第1話

転生初日。

「バブウ」

　赤ちゃんへの転生でした。

　いや〜。ほんとにあるんだね。異世界転生。ビックリだよ。

　俺が死んだとき、仏様に「転生したい」とお願いしてみたんだ。仏様、顔をひん曲げて驚いてたな。

「え、みんな極楽で悟り開きたがるけど、きみは異世界に転生でいいの？　しらないよ？」

とか言ってさ。

　でもさ、転生、してみたいじゃん？

　生前（？）はオタクだったし、俺つえーってやつしてみたいじゃん？

　んで、欲深いオタクの俺は、仏様にお願いしてみたわけ。

「記憶を残したまま転生したいんですけど、どうにかなりませんかね？」

　仏様困ってたな〜。眉間にしわ寄せてさ。

　しわ寄せ過ぎて顔全体がくしゃくしゃになってたもんな。仏様って案外表情豊かなもんなんだね。

　それからはお得意の思惟のポーズで、30分くらい長考したかな？

　その間も、怒ったり、しんみりしたり、急に無表情になったり、また怒ったり、コロコロ表情が変わるもんだから俺も飽きずに待てたよ。

　結局、めちゃ穏やかな顔で一言。

「仕方ないね。なんとかしてみよう」

　やったね。さすがは慈悲のお方だ。

　それからのことは覚えてない。なんだか淡い光に包まれて、気がついたら赤ん坊になっていた。

　やった！　赤ん坊から転生パターンだ！　

　俺は知っている。

　俺は全部知っているんだ。前世に散々予習したからな。バブウ。

　こういうのは序盤が肝心なんだ。赤ちゃん頃からコツコツとできることをすべてやっておく。この時期の積み重ねで無双するパターンが多い。バーブー。

　なんせ今回は残念ながら、今のところチートを貰ってないからな。

　いや、わかんないよ？　もしかしたら、すでになにかのチートを貰ってるのかも。

　でも、仏様は何も言ってなかったし。純粋な知識チートだけかもしれないから、今のうちに準備しておくに越したことはないだろう。ダァダ。

　勝利の方程式（ラノベ調べ）によると、

1.幼いうちから本を読んで魔法についての知識を身につける

→2.体内で魔力操作の練習　or　魔力を消費して魔力の絶対量を増やす

→3.バーブゥ

→4.規格外の力で神童としてチヤホヤされる

　ふむ。こんなところかな。まあまだ魔法がある世界かどうかさえ分かってないんだけど。バブゥ（笑）

――――んっだよこれえええああああ！！　さっきからバブバブうっせえんだよ！！

　バブバブバブバブ言いやがってよお！　勝利の方程式にバーブゥまで入れちまったじゃねえかよ！　どうしてくれるんだよ！！

　一体誰だバブバブ言ってんの！！　俺か！？　俺なのか！？　俺がバブバブいってんのか！？　バブウ！？

　もしかして肉体に精神が引っ張らられるタイプの転生か！？　記憶は引き継がれるけど、思考力は赤ちゃんレベルに戻されますってか！？

　そんなレアケース、求めてない！　頼むから、頭の中がバブバブうるさいのをどうにかしてくれ〜〜〜〜！！　

　バブゥ〜〜〜〜！！！！

　俺は大声で泣いた。助けを求めるように、縋り付くように泣いた。誰かが駆け寄ってくる音が聞こえた。

　泣いたら眠くなったので、寝ちゃった。

　異世界転生初日の出来事である。