episode.26
皆さま、ご機嫌よう。
夏休みですわっ!花火にお祭り、縁日、りんご飴、焼きそば、金魚すくい、市民プールの夏ですわぁっ!
ギラギラと照り返す太陽の下。
私はほぅっと青く透き通るような海を眺めていた。
この世界の海は、なんて綺麗なんだろう……。
ずーっと下まで透き通って、手を伸ばせば届きそうなくらい。
私はうんしょうんしよと下に手を伸ばすが、その度に浮き輪がクルクル回って全く話にならない。
「何してるの?キティ?」
水着姿で上半身裸のクラウス様が、クルクル回る私の浮き輪を押さえてくれる。
「あ、あの、下にある貝殻が綺麗で……」
クラウス様の裸に釘づけになりながら、私は答える。
目が血走って今にも鼻血を噴きそうだが、直ぐに海水で流せる、問題無しっ!
「ああ、あれ?あのピンクの」
そう言ってクラウス様が指差す方に、私はうんうんと頷いた。
貴方の彫刻のような上半身に夢中で、どれとか見てません、とかは絶対に言えない。
「ちょっと、待ってて」
そう言ってクラウス様は海の中に入水して行った。
改めて見ていると、実は深かったらしい。
こんなに近くに見えるのに、クラウス様の身長よりずっと深いみたい。
ややしてザバッとクラウス様は海面に上がってくる。
「はい」
濡れた髪を後ろにかき上げながら、掴んだ右手を私の前で広げた。
掌の上に、ピンク色の可愛らしい貝殻。
「あ、ありがとうございます……」
私は大事にそれを受け取りながら、クラウス様を見つめた。
ヤッフゥゥゥゥゥッ!
色っぺっ!水が滴って、ギガント色っぺっ!
前髪後ろに流しただけでこの威力っ!
私はクラウス様の美しい輝きに浄化されて塵に戻りそうな自分を必死に支えた。
まだっ!まだだぁっ!
獲るべく美麗スチルがまだまだあるんだぁっ!
ここで浄化されてなるものかっ!
ぐあーはっはっはっはっはっ!
気分は既に倒され掛かっているラスボスである。
「そろそろ浜辺に戻ろう」
そう言って、クラウス様は私の浮き輪を掴んでスイスイ泳ぐ。
私は浮き輪ごとスーッと海の中を移動する。
ふーーっ、楽ちん楽ちん。
浜辺に戻ると、生徒会のメンバー+王宮のメイドさん達+マリサが待っていた。
ティーセットの用意と、昼食の用意が整っている。
海の中って、時間があっという間なのね。
もうそんな時間?
マリサがタオルを持って私を迎えてくれる。
こんなに暑いのに、誰も汗ひとつかいていないのは、お兄様とレオネル様の水魔法と風魔法のお陰。
ちなみにミゲル様の光魔法の加護のお陰で、紫外線もカット。
日焼けの心配もない。
私はパラソルの下のシシリィの方に向かって行った。
「キティってば、浮き輪でプカプカ浮かんでどんどん沖の方に流されて行くから、クラウスが血相を変えてたわよ?」
えぇっ!そうだったのっ?
「まったく、呑気なんだから」
クスクス笑うシシリィはどこか楽し気だ。
「まぁ、これだけのメンバーが揃っていて、万が一も無いけど。
それにしたってさっきのクラウスの顔ったらっ!」
とうとう堪え切れず大笑いするシシリィ。
あんた、絶対私が流されてるのに気付いててギリギリまで誰にも言わなかったわね?
ジト〜っと見つめる私の視線に気付いたシシリィは、ペロッと赤い舌を出した。
やっぱりっ!はい、確信犯っ!
お巡りさんっ!コイツですっ!
……しかし、たまらんなぁ、おい。
私はビキニ姿のシシリィを上から下まで舐るように眺めた。
爆乳Gカップ大明神様が、水着の下ではち切れんばかりだ。
細い腰に長い足……。
くっ!性格はアレで残念だけど、女神っ!
女神降臨です、ありがとうございました。
隣に静かに侍るエリーさんの黒のタンキニ姿もたまらんっ!
Dカップはあるな、あれは。
対して私は安定のお子様水着。
セパレートの水着はしっかりお腹を隠してくれて、どんなに動いてもチラ見え無し。
上は半袖にセーラ襟、胸の前にちょこんとリボンまで付いている。
下はヒラヒラフリフリスカート付き。
クラウス様セレクトとは言え、この格差たるや……。
「ねぇ、それにしても……」
私は相変わらずシシリィの水着姿を穴が開く勢いで眺めながら、前々から感じていた疑問を口にした。
「この水着とか、浮き輪とかってさぁ」
シシリィがサッと手を上げると、エリーさんがスッと距離を離した。
あっ、ごめんごめん。
シシリィは片目を閉じて笑った。
「エリーは何を聞いても絶対に口外もせず、記憶にも留めないように訓練されているけど、まぁ、一応ね。
いつものアレを使うと今日のメンバーには直ぐに見破られちゃうから、余計に興味を持たれそうだし」
私は静かに頷いて、シシリィの隣のビーチチェアに腰掛けた。
そして、シシリィにだけ聞こえるように、小声で話す。
「ここって、赤髪の魔女様の領地よね?」
「そうよ、あの人は色んな国で、まぁ、功績を残してるから、こうして領地なんかも賜っているわね。
管理は王家に丸投げだけど」
シシリィも小声で答える。
「でも、赤髪の魔女様のほぼ趣味で作られた土地って聞いたわよ。
ってか、完全にリゾート地じゃない?
しかも、前世の」
私の言葉にシシリィは片眉を上げて、続きを促した。
「赤髪の魔女様って、60年前くらいに突然現れたのよね?
それから、帝国を初め、近隣諸国まで急速に発展していった『ド・ライヤー』や『ソ・ジィキ』とか、あとこの水着に浮き輪にリゾート地。
どう考えても、赤髪の魔女様って転生者じゃない?」
私が転生者と言う単語をより一層声を小さくして言うと、シシリィはニヤっと笑った。
「どうかしらねぇ。元々この世界には魔法という存在があって、生活魔法で私達の前世で使っていた便利な物はほぼ全て再現されていたのよ?
帝国では生活魔法が当たり前の事だから、それを物で再現するって発想が無かった。
そこを赤髪の魔女がある意味新しい発想で切り込んで、それが大当たりしただけかもしれないじゃない?」
シシリィはそこで一旦言葉を切り、またニヤッと笑って続けた。
「それに赤髪の魔女が転生者だったとして、これだけ色々な前世の物や知識をこの世界に再現してるとしたら、1番肝心な物が足りなくない?」
そう言ってシシリィが、片手で小さな箱を持つような仕草をして、もう片方の手の人差し指で、それをスイッと上下になぞる動きを加えた。
私は、あっ!と小さく声を上げる。
そうだっ!スマホっ!
もし私が赤髪の魔女様で転生者だったら。
しかも魔法の天才だとしたら、まず再現するのはスマホだっ!
やっぱりアレがなきゃ始まらない。
〈キラおと〉アプリバージョンに課金も出来ないし、美麗スチルのスクショも残せないっ!
……まぁ、スクショは血の滲む努力と推しへの執念で、脳内で再現可能になったのですが。
だが今ならっ!お金持ちの令嬢にうまれ変わった今ならっ!
最推しに前世以上に貢げるのにっ!
くっ、口惜しやっ!
「でも、それだって、単にスマホ以前の時代の人間が転生しただけかも知れないでしょ?」
私の言葉に、シシリィはふむと頷いた。
「確かに、それは有るわね。
でもどちらにしても、転生者である私達的には不便が無くていい事じゃない」
まぁ、確かに。
そもそも赤髪の魔女様みたいな大物に、私達が会う事は一生無いだろうし、確かめようも無い。
シシリィの言う通り、与えられた利便性をありがたく享受しておくしか無いか。
結局、真実は有耶無耶のまま。
シシリィなら何か知っているかと思ったのに、うまくはぐらかされてしまったようだ。
口元だけでニヨニヨ笑うシシリィ。
こーゆー時のシシリィは、本当の事は絶対に話さないだろう事を、この数ヶ月の付き合いで私には理解出来ていた。
食えん女よっ!
「まぁまぁ、それより見てよ、キティ」
ブスッとする私に、シシリィはクラウス様達の方を指差した。
「……ジュルッ……眼福ですなぁ」
私はシシリィの指先を目で追って、涎を垂らした。
輝く半裸。すっかり青年らしくなった、逞しい体躯。
濡れて艶かしくツヤめく腹筋。
更に上腕二頭筋、背筋。
流石、夏休みイベント。
攻略対象者達の霰もない半裸っ!
夏だからこその裸祭りじゃ〜いっ!
ああ、目が幸せ過ぎる。
この光景を最後に、もう潰れてもいいっ!
あっ、いや、秋冬イベントスチルも見逃せない。
やっぱ無しで。
「これ、夏イベだよね?生徒会の夏合宿」
私の問いにシシリィはヘラリと笑って答える。
「ま〜そうでしょうね」
そう、今日は生徒会で夏合宿と称して海に遊びに来ている。
このイベントは、高速ルート(ヒロインの生徒会入り)に乗ると発生するイベントなのだが……。
まさかの二大悪役令嬢参加。
ヒロイン不在。
すごい絵面だわ……。
刺されない?
私、後ろからブスッと刺されない?
ゾワゾワ〜と鳥肌が立ち、私は辺りをキョロキョロ見回した。
「何してんの?ほら、お昼食べに行きましょ」
肝の座ってる方の悪役令嬢、シシリィに言われ、私はビーチチェアから腰を上げた。
クラウス様達の方に歩いて行くと、夏の太陽を背負った美神達(半裸)がこちらに手を伸ばして笑う。
その眩しい笑顔に、私はクラクラしながら、思わずにはいられない。
夏イベ最高ーーーーっ!
もう、何でもいいわ〜〜〜っ!
夕方になり、私達生徒会のメンバーは、今度は水着から浴衣に着替え、街で行われている夏祭りに繰り出していた。
美神達の超貴重浴衣ショットをバッシバッシとスクショしまくり、満足した私はふぃーっと良い仕事した感を出しつつ、額の汗を腕で拭った。
人ごちついた私は、笑顔で隣のシシリィにポソっと呟く。
「ねぇ、これって、アプリ版の夏イベじゃない?」
言いながら、笑顔がピクピク引き攣る。
「ね〜〜、だよねぇ」
シシリィも笑顔で答える。
そして目の前には、縁日の屋台……。
「やっぱ、赤髪の魔女様って転生者じゃね?」
笑顔を引き攣らせたまま言う私。
「だから〜〜気にし過ぎだって」
曇りの無い笑顔で答えるシシリィ。
「きさ〜ま、はぐらかすにも限度ってもんがあるわよ?」
ピクピク、もはや痙攣する私の口元。
「まぁまぁ、あっ、ほら。クラウスがリンゴ飴片手にこっちに来るわよ」
シシリィの言葉に、私は慌てて口元をむにむにと揉んで、元に戻す。
「キティ、これ。キティが好きそうだったから」
差し出されたリンゴ飴を受け取り、私はにっこり微笑んだ。
「ありがとうございます。美味しそう」
クラウス様はそんな私を優しく微笑んで見つめる。
「ちっ、2人だけの世界かよっ。爆ぜろっ!」
毒吐きながら、私達を置いてスタスタと去って行くシシリィ。
……あんた、最初の頃の公爵令嬢の面影、今や微塵もないわね。
私はそっとシシリィに胸の中で呟いた。
カリッとリンゴ飴に齧り付くと、口の中に飴の甘みとリンゴの酸味が広がる。
懐かしい味に、私は思わず涙ぐんでしまった。
「どうかしたの?キティ?」
クラウス様の心配そうな声に、私はフルフル首を振ってにっこり笑って答えた。
「……すごく甘くて美味しくて、感動してしまいました」
クラウス様は無言で、私の目尻に溜まった涙を親指で拭ってくれた。
そして、静かに背を屈め、顔を近づけてくる。
そっと唇にキスされて、舌でチロっと口の端を舐められた。
「本当だ、すごく甘い」
浴衣姿の艶かしさに加え、妖艶に微笑まれて、私はボンっと頭から火を噴いた。
顔に熱が集中して、たぶん耳まで赤くなっていると思う。
思わず涙も引っ込んでしまった。
「キティ、他に食べたい物は?
楽しそうなゲーム?もあったよ。
輪投げに金魚すくい?だったかな」
急に涙ぐんだわたしを気遣うように、クラウス様が優しく微笑んでくれる。
私はそんなクラウス様の優しさが嬉しくて、また涙ぐみそうになるのを、必死に堪えた。
「はい、あとたこ焼きと焼きそばと綿あめとクレープとかき氷が食べたいです。
輪投げと金魚すくいも楽しそう」
元気に笑って答えると、クラウス様がふふっと笑って手を繋いでくれる。
「全部、店ごと購入しようか?」
クラウス様の言葉に、私は慌ててブンブン頭を振った。
違う。祭りってのはそういう事じゃない。
クラウス様のロイヤルな物の考え方に、私は一抹の不安を覚えた。
本当に買いそうで怖いんだよなぁ……。
祭り会場は多くの人で賑わっていた。
赤髪の魔女様が夏祭りの正装だと広めたらしく、皆んな浴衣を着ている。
まるで前世に戻ったような気がして、私は郷愁に駆られた。
同じ転生者のシシリィはどうかしら?
やっぱり私みたいに郷愁に駆られ、涙を我慢してないかな?
私はシシリィが心配になって、キョロキョロとその姿を探した。
パンッパンッと爽快な音の後、女性の怒鳴り声が聞こえる。
「ちょっと!おっちゃんっ!今あれ当たったわよっ!」
「いやいや嬢ちゃん、倒れないとダメダメ」
「しっぶい商売してんじゃ無いわよっ!
じゃ、もう一回っ!」
射的の台に齧り付くシシリィを見つけ、私はふっと小さく笑った。
何の心配してたんだっけ?
もしかして、アレ?
無い無い、まったく心配無いっ!
はい、解散っ!
私はその後、皆んなとたくさん屋台の食べ物を食べたり、輪投げや金魚すくいを楽しんだ。
「……あんた……エグいわね」
シシリィが私の掬った金魚の数に、完全に引き気味で言った。
ま〜ねっ!これでも前世では金魚救いのボサ鬼子と呼ばれてたから?
ふっふ〜んと得意げな私に、シシリィが口元を引き攣らせる。
「この金魚達専用の池を作らないとなぁ……」
顎に手をやり、ふむと考え込むクラウス様。
やめてっ!ロイヤル発言やめてっ!
すごい池作りそうで、本気で怖いっ!
ガタガタ青ざめる私の肩を、ぽんぽんとジャン様が叩く。
「諦めろ、いいか、全て、諦めろ」
遠い目でそう言う、ジャン様。
私も同じように遠い目をする。
「……はい」
2人で乾いた笑いを浮かべた。
夜が深まり、祭りもそろそろ終わりかという頃。
ヒュルーーーーーーーーッ。
何かが空に打ち上がる音がして、次の瞬間……。
パーーンッバンッと大きな音が響き、夏の夜空一面に、大きな花火が打ち上がった。
「わぁ……っ」
私は夜空を見上げて、歓喜の声を上げる。
花火は次々に咲き乱れ、様々な色を夜空に映し出す。
「綺麗……」
また涙が滲みそうになる。
こんなに郷愁に駆られたのは、この世界に生まれ変わってから、初めての事だった。
きっと、日本人の魂に刻まれた何かがあるのだろう……。
夏祭りの飾り提灯、立ち並ぶ屋台、涼やかな浴衣、そして、花火の火薬の匂い……。
それら全てが、私を懐かしい前世の記憶へと誘った。
前世で生きていた頃、当たり前のように過ごしていた日々が、本当はきっと一つ一つ大切な物だったんだ。
学校に続く坂道、教室の窓を吹き抜ける風、グラウンドから聞こえる運動部の掛け声。
寄り道した帰り道、お母さんが夕飯を作る匂い、幼い妹のお絵描き帳、お父さんの帰宅する音……。
全部全部、当たり前の事で、でも今は抱きしめたいくらいに愛おしい……。
私は前世でどんな死に方をしたんだろう……。
高校生までの記憶しかないので、きっと若くして死んでしまったんだ……。
きっと、お母さんもお父さんも可愛い妹も、たくさん泣かせて、悲しませた……。
私はノワールお兄様の背中を見つめた。
ノワールお兄様、お母様、お父様。
きっと私が17歳の誕生日を迎えられず死んでしまったら、前世の家族のようにたくさん悲しませてしまう……。
それから、周りを見渡す。
マリサ、レオネル様、ミゲル様、ジャン様……そして、シシリィ……。
きっと皆んなも悲しませてしまうよね?
そして……。
私は隣に立つクラウス様をそっと見上げた。
クラウス様もきっと悲しませてしまうと思う……。
これから、クラウス様にヒロインとの楽しい時間が待っているとしても……。
それでも、きっと、私が死ねばクラウス様は悲しむ。
……本当にこのままでいいのかな?
私だって死にたくないし、死を回避する為に出来る努力もしてきた。
それでも、まだ、1番肝心な物が自分には欠けているように思える。
この気持ちは何なんだろう……。
正体不明の焦燥に駆られ、私は自分の足元にポッカリと黒い穴が空いているように思えて、ブルっと震えた。
その暗い大きな穴にどこまでも落ちて行くような錯覚に陥った瞬間、誰かに手を握られ、私はハッと我に返った。
私の手を握る大きな手を見つめ、ゆっくりと顔を上げる。
見上げた先で、クラウス様が優しく微笑んでいた。
私は泣きそうになりながら、必死に笑顔を顔に浮かべて見つめ返した。
「今日のキティは少し元気が無いね。
お祭り、気に入らなかった?」
心配そうなクラウス様に、私は首を横に振って、涙を浮かべて微笑んだ。
「いいえ、すごく楽しくて、素敵な時間でした……。
このまま時が止まってしまえばいいのに、と思ってしまうくらい……」
私は花火を眺めながら、呟くように答える。
「そうだね。今日はすごく楽しかった。
また来年も一緒に来よう」
クラウス様も同じように花火を眺めながら、静かに言った。
来年……。
私はその言葉に、素直に頷く事が出来なかった……。
ただ、クラウス様と繋いだ手を、縋るようにギュッと握り返した。
見上げた夜空を彩る一面の花火を、クラウス様と一緒に眺めながら、私は私の運命と、ちゃんと正面から向き合うべきなんだと、やっと心に決めた……。
数日後……。
王宮の庭園に立ち並ぶ、お祭りの屋台。
色とりどりの浴衣に身を包む宮廷の人々。
あっ、よく見たら、陛下と王妃様までいらっしゃる……。
私がこの前取った金魚達は、大きな池で気持ちよさそうに泳いでいる。
大きな花火が打ち上がり、呆然と眺める私の肩を、ジャン様がぽんぽんと叩く。
「諦めろ、いいか、全て、諦めろ」
遠い目でそう言う、ジャン様。
私も同じように遠い目をする。
「……はい」
2人で乾いた笑いを浮かべた。
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