少女inおっさん 第3話 おっさんウィザード(1)

『せっ戦闘用ゴーレムぅ!?』


 脳内で響いた『ミーナご本人』の叫びに意味は無いが狐耳を抑えたミーナは、懐からナイフを取り出してニヤリと笑いながら飛び出した。

 対する経年劣化で錆びた鉄のゴーレムは鎮圧すべき暴徒ミーナが目の前に現れたので、頭部の単眼を赤く輝かせた。両腕部を前に向けて腕に内蔵された銃をターゲットに向ける。


「まぁまぁ、俺様に任せておきな」

『死ぬぅ! 死んじゃう!』


「大丈夫、大丈夫! 民生用の警備ゴーレムだし実弾は積んでいないぜ」

『本当? 死なない?』


「積んでるのは鎮圧用ゴム弾だから……当たると死ぬほど痛いな!」

『痛いのは嫌ぁ!』


 あまりに『ミーナご本人』が良い反応をするので、からかい混じりに解説しながら手の中でナイフをもてあそんだミーナは、しっかりと順手に握りしめると、もう片手も添えて突撃を開始した。


 ――ミーナの金色の目が弧を描く!


 彼女の魔導核に刻まれた複数の模倣術式が並列起動する。


   ――z__

 【回避A】【魔術A】【魔導A】

  ――z__ 


「よっはっ! あらよっと!」

『ひゃー!わー!』


 ミーナは店内の棚を上手く使って跳んだり跳ねたりしながら、ゴーレムを回り込みながら接近していく。

 断続的な乾いた炸裂音と共にミーナめがけて連射されるゴム弾は、すばしこい彼女を捉えること叶わず、地面や棚に着弾した。


「魔の術をここに!」

『まっ魔法なのっ!?』


 あと一歩という所まで到達したミーナが引き絞るようにナイフを構えると、ナイフを術式の光で赤く輝かせながら突撃する。


「――貫き通せ! 【貫通ブレイク】!」

『まさか……』


 彼女の手から葉脈のようにナイフを伝った赤い光は、先端に収束されて金属音を鳴り響かせる。


 近づくなと言わんばかりに振り回されるゴーレムの腕をすり抜けた彼女は、敵の頑丈そうな胸部へ強く赤く輝く刺突を繰り出した。


 ナイフは装甲を紙扱いして突き破ると、柄まで埋まってしまった。

 それでも鉄錆のゴーレムは暴れようとするが……。


「さあ、仕上げだ! ――魔導の核よ! 【書換リライト】!」

『あなたは魔法使いだったの!?』


 ナイフで深々と刺された胸部を中心に青色の魔法陣が展開される!


――あとがき――

短いですが今回はここまでです。

続きもゆっくり描いていきます。

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