第27話 幼女を抑え込め
「わー! 兄ちゃん! それ、なにができるの!?」
「これ? ちょっと試してみようか」
カルエはギアを起動し、エネルギーが腕に集まるのを感じた。瞬間、恐ろしい勢いでエネルギービームが発射され、部屋の壁に巨大な穴が空いた。
カリナは拍手し、興奮気味に、
「すっげえ!! 兄ちゃん、ヒーローみたい!!」
「裏社会の人間がヒーローかよ……。照れるな」
まんざらでもなさそうなカルエに、ルキアが溜め息と苦笑いを交えながら、「これでまた、問題がひとつ増えたわね。隠れ家に穴なんか開けちゃって。目立って仕方ないわ」と言う。
「まあね。でも、いまはこのギアを手にしたことが大事だよ。アラビカはこれだけの力があっても、確実に勝てる相手じゃないからね」
「そうね。本気でアラビカを潰すつもりなら、まだまだ強化が必要かも」
「ランクBのおれじゃ、もう身体改造のレベルをすこし上げるだけで精一杯だよ」
ジーターは満足そうに頷き、「良い能力じゃねェか。あのカス野郎、おれらを舐めてなかったら苦戦してたな。さて、おれはもう帰るぜ」と言い、テレポートで姿を消した。
大穴が空いた壁から、凍えるほどの冷気が入り込んできた。そんな状況下で、カルエはルキアとカリナに向き直る。
「さて、物話を進めようか。カリナ、ルキア」
「まるで創作物の主人公にでもなったような態度ね。まあ、いまの貴方ならそれを言う資格はあると思うわ」
「兄ちゃんのためなら、あたい頑張れるよ!」
カルエは、カリナの目をしっかり見据えるべくかがんで、
「なあ、カリナ。あの警官になんて言われてここへ来たの?」
「えー、うーん……なんだっけ」
「なにか明確な理由があるはずだよ。君ほどの存在を野に放つのを、なにも考えず決めたわけじゃないと思う」
「むずいな、むずいよ、兄ちゃん!」
「だよな」
カルエはルキアに近づくようジェスチャーした。そして、彼女へ小声で言った。
「(この子、なにかしらの洗脳装置で思考を遮られてる可能性がある)」
「(それってつまり……)」
「(分析したほうが良い。後々になって刺されるのはゴメンだ)」
「なーに? ひそひそ話?」
「いや、なんでもないさ」
先手を打つに限る。この物語の概要を知っていることが、カルエ最大のアドバンテージだ。であれば、その枠組みを越えてしまう存在を厄介に感じるのもおかしくない。
カリナは本来主人公勢と関わる。だというのに、『噛ませ犬』のカルエのもとへ送られてきた。なにかの伏線だと言うのなら、やはり使える方法すべてを使い、抑え込むしかない。
「そっか!」
(……子どもを手にかけたくないけどな)
「なんか、ふたりとも顔暗いよ? まだ夜でもないのに」
「いえ、元々こんな感じよ。カルエは」
「そうだっけ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます