番外編 僕は脚が短い

僕は顔や頭が大きいだけではない。

脚も短い。

それに気が付いたのは小学五年生の頃、両親と姉、僕の四人で買い物に行く機会が多々あった。

母と姉は衣服やコスメを中心に買い物をしていたが、父と僕は食品以外を熱心に買い物することはなく、ショップの外で待っていることが多かった。

最近はあまり見かけないが、大型ショッピングモールにある鉄棒のような腰掛けに父と一緒に座って休憩をする。

だが、僕は頑なにその腰掛けに座ることはない。

何故なら、僕の腰のあたりに座る場所があり、僕にとってこの腰掛けが高いのだ。

僕がこの腰掛けに座るには跳んで、座るしかない。


隣を見てみると、僕と同じ高さの腰掛けに座っているはずなのに、父は足の裏に地面を付いている。

だが、それは大人だからだ。

小学五年生の僕と四十代くらいの父では足の長さが違うのは当然だ。


しかし、父を挟んで向こう側。

そこに僕と同じくらいの年代の子どもが、僕と同じくらいの高さの腰掛けに足の裏をぴたりと付けて座っている。

僕は目を細めて、見ていないふりをした。

そんな僕を誰も見ていないというのに。



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