威圧感

「威圧感があるよね」

僕は昔からそう言われることが多い。

大学生になってから更に言われるようになった。

そう言われる理由の大半は顔と頭が大きいことにあると思うが、きっとそれだけではない。

顔を小さくするために体を鍛えたこと、大学生になってから坊主頭にしたこと、僕は昔から話下手であることの三つも威圧感がある原因だろう。

威圧感をどうしたらいいか、と相談できる友達がいない僕はスマートフォンを介して、質問できるサイトで相談してみることにした。

「僕は顔が大きく、体を鍛えたため肩幅が広く、坊主頭にしてしまったため、威圧感があるとよく言われてしまいます。その威圧感を緩和させるためにはどのようなことをすれば良いでしょうか?」

と、質問できるサイトに書き込んだ。数分後、僕の質問に数件、回答が付いた。

スマホの画面をスクロークして、一件目の回答を見た。

「まずは髪を伸ばしましょう。話はそれからです」

そう書かれていた。僕はぼんやりとその回答を読むと、「何だこいつは」という言葉を無理やり飲み込んだ。ごもっともな意見ではあるが、言い方に棘がある。

それに坊主にした頭の髪が伸びるのを待つしかない。

画面をスクロールして、二件目の回答を見た。

「体を鍛えるのを辞めてみる、もしくは体を鍛えるのを少し抑えてみてはどうですか」

このようなことを書かれていた。

確かにそうかもしれない。体が大きい、角があるというのは恐ろしいものだ。

僕も僕より大きな体を持つ人、僕よりも筋肉で角がある人を対面して、怖いと思わないわけではない。

だけど、体を鍛えないという選択肢はなかった。

僕はスポーツをするのが好きで、体を鍛えなければ勝つことは難しい。僕は体を鍛えるのを辞めることはできない。

画面をスクロールして、三件目の回答を見た。

「垢抜けをしてみてはどうですか?」

垢抜け……。

動画サイトで垢抜けについて見たことがあったら、何となく知っている。

髪型を整え、スキンケアをして、ファッションを変えてみる。それで見た目が変わり、威圧感が消えるのだろうか。

一抹の不安が頭を過ったが、前の二つの回答に比べてどこか信用できる気がしたので、僕は垢抜けを実践してみることにした。

まず僕は簡単にできることとして、水を一日に二リットル飲んでみることにした。

どこかのネット記事で紹介していた方法だ。

早速、水が入った二リットルのペットボトルを購入し、僕はそれを一気に飲んでみることにした。

だが、三分の一も飲めずに、僕は手を止めてしまった。

この量の水を飲むのがここまで苦しいなんて知らなかった。そのため時間を空けて、水を飲むのを繰り返し、一時間くらいかけてようやく二リットルのペットボトルが空になった。

腹からポチャリという水を内臓の壁を叩く。腹が大きくなっているような気がする。鏡で腹を見てみても、はっきりとわかるくらいだ。

筋肉でも脂肪でもない水分で腹が肥大化している。

威圧感はないかもしれないが。これはこれで恥ずかしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る