あだ名
顔と頭が大きい僕は小学生から中学生までの間、様々なあだ名で呼ばれた。
顔デカ、岩、岩石、ストーン、モアイ。色々な呼び方をされた。本当に色々な呼び方を。
顔や頭が大きいことをそのまま称されることは幼い頃から言われ慣れているし、特に気にしなかった。別に頭の大きさを称してなのかわからないがだが、モアイというあだ名は僕にとって衝撃だった。
モアイと言われ始めたのが小学五年生くらいの頃で、モアイの存在を知らなかった僕はあまりピンとこなかった。
モアイ?なんだろそれ?
だけど、馬鹿にされていることはわかったので、調べてみることにした。僕は小学五年生の時、携帯電話やスマートフォンを持っていなかったため、図書館で調べることにした。
最初は小学校の図書室で調べようと思ったが、調べているところを友達やクラスメイトに見られるのは恥ずかしかったため、住んでいる町の図書館を利用することにした。
僕が住んでいる町の図書館は、通っていた小学校の反対側にある。そのため、僕は家にランドセルを置き、図書館へと向かった。
小学生の僕の身長の二倍ほど見える本棚に歴史、芸術、哲学、文学などの様々な種類の本がびっしりと並んでいる。これほどの本を全て読むとなると何年、何十年かかるのだろうか。
もしくは一生かけても読み終わらないのかもしれない。十一歳ながら自分の頭の限界を知った。
しかし、今日の図書館の訪問目的は違う。今日はモアイについて調べに来たんだ。
僕は図書館の中で散歩するのを辞めて、辞書がありそうな場所に歩みを進めた。
分厚い本が並んでいる。透明なフィルムの端が経年劣化で茶色くなっている。けど、それが少し「良いな」と思いながら、僕は国語辞典を手に取ると、両腕にずしりと歴史の重さを感じた。
それを閲覧席まで持っていくと、椅子に腰かけ、僕は国語辞典を開いた。
ま、み、む、め、も。
僕は辞書の横に書かれた「も」の箇所を開く。その後に続く文字も「あ」と「い」であるため、簡単に見つかった。
モアイ。
イースター島にある人面の形をした石像、と書かれていた。
だが、次はイースター島とはなんだろうという疑念が頭の中で破裂し、次に地理という本棚に向かい、世界地図が描かれた大きな本を取り出した。島という単語が付くくらいならば、地図からどこにあるかわかるはずだ。
僕はハードカバーの世界地図を広げた。
目次からイースター島という単語を見つけ出すと、チリにあることがわかった。
しかし、正式名はイースター島ではなく、パスクア島ということがわかった。
それがわかった途端、絶対にバスクア島に行こうと思った。
モアイがモアイに会いに行く。
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