モアイのコンプレックス

鈴ノ本 正秋

まえがき

僕は顔が大きい。頭も大きい。

それがずっとコンプレックスだった。顔が大きいことや頭が大きいこと以外にコンプレックスがないわけではない。


僕の腕や脚は短いし、太りやすい体質だし、目も一重だし、常識や知識もないし、ネガティブ思考だし、面白い話ができるわけでもない。

何もかもが足りないまま育ってしまった大人だ。


だけど、あるお笑い芸人さんが自分を曝け出して、漫才をして、エッセイを書いて、ラジオをして。

そんな姿を見て、読んで、聞いていたらいてもたってもいられなくなり、全てを曝け出すことが大切なのではないかと思うようになってきた。


僕に長所や特技があるのなら、それと一緒にコンプレックスも、弱点も、何もかもを曝け出してみたいと思った。

そして、全てを曝け出していく先に何が待っているのか。

僕はその景色を見てみたい。


このエッセイを読んで、参考にできるところは限りなくゼロに近いだろう。というか、確実にゼロだ。

日本に約六千万人いるサラリーマンの一人だ。

毎日朝起きて、通勤して、職場で朝の挨拶をして、勤務時間は働いて、帰路に着く。

ありきたりな人生を送る人間のコンプレックスなんか知ったことではないだろう。


だけど、みんな何かコンプレックスを抱えて生きているんだ。

僕も、あなたも、僕の隣人も、あなたの隣人も。

だから最後まで読んでいってほしい。救われてほしいなんて傲慢なことは言わない。

こんなコンプレックスだらけの人間が生きているんだって、心の奥底の端っこで思ってくれるだけでいい。

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