纏物語

其之肆話 『五珠の力』の表と裏（善と惡）

前回までの『纏物語』は……。

「まずお主にこのような目に合わせてしまい申し訳ないと詫びなければならぬ。しかしどうしても儂らは、お主と……舞美と話をしなければならなかったのじゃ……」

　オジイ達は虎五郎に合わせて頭を下げ、詫びの姿勢をとった。そしてしばらくの沈黙の後、頭を上げ話の続きを始めた。

　そしてどのくらいの年月が経ったであろうか。ある時、眠っていた儂らの封印が何者かに易々と解かれ、何処からか現れた若者が儂ら『五珠の力』を纏ったのじゃ。そしてその若者は言った。

『すまぬ、五珠の主たちよ。この力しばし私に貸してはくれまいか……』

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（私の中の『清い力』）

そう思いながら手のひらを見ている舞美。オジイが続けて語る。

「舞美の霊的な力は、とても強くそして清い。神守の力……と言うよりは宮司（みやづかさ）の神力に近い……。『五珠の力』の源はこの『清い力』。その力があってこそ強い神力。儂等の邪気を祓い、清める神力を纏うことが出来るのじゃ」

　舞美は、オジイ達が度々口にする「纏う」の意味が解らなかった。聞きたくても次から次にオジイ達が代わるがわる話を始めるので聞く事が出来なかった。そしてまた聞くタイミングを逃してしまい……。

「『五珠の力』もそれを纏う者によって正にも負にもなる、もし……」

　聞く間もなく次の話がはじまった。

「もし儂らが悪霊どもに屈してしまった時は、彼奴等の力は手が付けられなくなる程、強大な力、惡の力になる」

　そう言いながら目が細い物静かなオジイが前に出てきた。続けて虎五郎が語る。

「舞美、東城右近が編み出した『御魂の術』人の魂を霊体に導く事によって凄まじい神力を身に纏う事が出来る。しかしこの術は、皆が思う程完璧なものではなかった。それはこの術を成就した後、必ずと言っていい程に表と裏が作られるのじゃ」

　舞美が不思議そうに問いかける。

「表と裏？　良い人と悪い人とかそういう感じ？」

「その通り。儂らが持つ『五珠の力』は『表』即ち『善』。そしてその『裏』、即ち『惡』がある。表と裏が表裏一体と言われるように、善と悪も同じく表裏一体なのじゃ。そして彼奴等が欲しがっているのはこの『惡』の力じゃ。しかし『清い力』を持つ者でも怒りに任せて『五珠の力』を使うと『善』の力が消え、変わりに『惡の力』が己を支配してまう。『惡』が芽生えてしまうと己自身で日ノ本を滅ぼしてしまうかもしれん。それほど恐ろしい力を秘めておる」

　舞美は、その話を聞き浮かない顔を浮かべた。『惡の力』の事が気になっているからだ。もし私が怒りに任せて『惡の力』に芽生えてしまったらどうしよう、私のせいで日本が大変なことになったらどうしようと。そこで舞美の不安を察してか一人のオジイが口を開いた。

「舞美、心配ない。お前のその清い心は儂ら『五珠の力』によって必ず守られる。もしお主が『惡』に染まろうとしたその時は、我らの御魂に代えても必ず守って見せる」

　そう言うと五人は掌から光り輝く珠を出した。

「これぞ我らの力の源、『五珠の珠』この力を舞美、お前に授ける」

「頼んだぞ舞美」

「よろしく頼む……舞美」

「お願い致します、舞美」

「舞美……頼むぞ」

　オジイ達が放った光の珠が舞美の手のひらに集りひとつとなった。そしてその光が柔らかく広がり舞美を包み込んだ。その光に包まれながら舞美の意識が次第に遠のいていく。

　遠くから微かに誰かの声が聞こえてくる。

「舞美！…………舞美ぃぃ‼」

　母親が自分の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。ゆっくり目を開け顔を右へ向ける。そこには、泣きじゃくっている母の姿があった。

「お母さん……お父さん……きょうちゃん……」

　意識を取り戻した舞美を見て泣きじゃくっていたお母さんがさらに泣き叫んだ。

　「まみぃぃぃ！よかったぁぁぁ！よかったぁぁぁ！」

　お父さんが看護師さんを大きな声で呼んでいる。

（私、生きてるの？　オジイ達は？　さっきの事は……夢……？）

　そう思っていると右腕に何か違和感を感じた。右腕は動く、そう思ってゆっくり上げてみると綺麗な五色の透き通った珠が連なった腕輪を着けていた。

（夢じゃなかったんだ……私……生きてる……家族にまた会えた……よかったぁ……）

　その安堵感で満たされた舞美に再び睡魔が訪れ、深い眠りに入っていった。

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　つばき春花です。次話で舞美が変身します！イメージとしては『セー○ラー○ーン』を思い浮かべていただければいいのかなと……。

　　　　　　　　　次回予告　『其之伍話　魔法少女じゃないけれど』

「舞美よ、悪霊と対峙するときは、主ら生身の体では全く歯が立たぬ。そこで『五珠の力』を使い儂等を纏うのじゃ」

「『儂等を纏う』ってどうゆう事？」

　すると右手の腕輪が眩く光り輝き、その光が舞美を包み込みむ。しばらくすると……いや、時にすると一瞬の出来事だ、その光の中から白く輝く白衣と、緋袴を纏った舞美が現れた。それは神に仕える巫女の装い。そしてその腰には鞘に収められた短い銅剣が差してある。

「きゃー！　なに！　なんなの！　これ？　はずいけどカッコイー！　しかも浮いてるし！」

　　舞美は変身した自分の姿に感激し心が躍った！　何故なら子どもの頃から魔法少女の主人公になる事が夢だったからだ。　舞美はその纏っている衣を触ってみた。それは透き通るほど薄く、そして絹のような肌触りで衣全体からお香のような良い香りがしていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ご一読よろしくお願い致します。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つばき春花