セックス以上恋愛未満

さくら

第1話 恋愛が分からない

私がこうなってから、もう何年経つんだろう。


クローゼットを開け、今日仕事に着ていく服を選ぶ。


少し肌寒いから、これにしよう。

あとはこのスカートを合わせて……うん。いい感じだと思う。


「……子供の頃は、私もほかの人と同じだと思ってたんだけどな」


ふと見ると、この間寝た人がプレゼントしてくれたイヤリングが目についた。

久しぶりに女の人とすることになって、テンション上がったんだよね。

私みたいな人間相手でも、偏見なく接してくれたし、一緒に買い物して楽しかった。


その後、いい雰囲気になって、その人の家に誘われて。


男の身体と違った柔らかさ、しなやかさ。

肌を重ねる感触は、私に「本来の性別」を思い出させた。


それに「妬ましさ」を感じてることを認めつつも、相手が男の時とは違ったセックスは悪くなかったと思う。


でもやっぱり、終わってしまうと興味がなくなる。

相手の性別に関係なく、盛り上がっていた気持ちは、セックスという快楽が終わってしまうと、どうしても相手への興味も冷めていってしまう。


いや、興味が冷める、というのとも違う気がする。


別の日にまた会って、食事したりお茶したり、買い物をしたり、なんていうのはきっと楽しめると思う。


でも、それに恋愛感情が混ざっていると感じてしまうと、興ざめしてしまう。


でもその感情は、たぶん「友達以上の何か」ではない。

セックスするのは別にいいけど、恋愛感情が絡むのは本当に苦手だ。

正直、勘弁してほしいとすら思う。


それは相手が男でも女でも同じだ。

この間会った女の人の、落胆した表情を思い出す。


友達っていう関係なら歓迎できると思う。

でも私に「恋人」を求めないでほしい。


恋愛関係っていうと……正直、分からない。何が楽しいんだろう。

友達とセックスする、っていう関係じゃダメなんだろうか。


いや、普通は友達とはセックスしないのかな。


「はぁ……私って、やっぱり普通じゃないよね……」


手に取って、一瞬だけ着けてみようと思ったけど、やっぱりそのままにして家を出た。


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