第3話 どうしてそうなるのか
さてA子さんの日常を覗いてみました。どうでしょうか、皆さんにも思い当たる状況ってありましたか?
A子さんがこの状況でカウンセリングに来られたら、とても大変な状況になりつつありますとお伝えすることになると思います。
え?特に普通じゃんと思われた方、正直甘いです。
ここから何が大変な状況になりつつあるのか、解説をしていきます。
⑴ 眠れていない
A子さんは眠れない状況が続いているようです。
なぜ眠れなくなっているのでしょう。
一番の原因は、疲労の蓄積です。疲労が蓄積することによって、A子さんのエネルギーが無くなってしまって、人間の生存本能のスイッチが入ってしまったと考えてほしいのです。
生存本能って、いきなり何?って感じだと思います。
何万年もの間、木の実や獲物を採取して食べ、洞穴に住み、動物として生き延びてきた人間には、生き延びるための本能が備わっています。
その本能は、自分の意志で働くものではなく、人間として、動物として、生き残るために勝手に働くのです。
ここで、本能がどう思っているか、ちょっと聞いてみましょう。
本能さんの言い分
体のエネルギーがもう無いぞ!!
エネルギーが無くなってしまっているので、もし何か危険なことが起こったときに対処することが出来なくなりつつある。早く危険を察知して逃げるなどの対処をしなければならない。早く危険を察知するためには、眠っている場合ではない。これは生存の危機なのだ。起きとけー。
クマに襲われたら戦うエネルギーは残っていないので逃げるしかないぞ~
逃げて生き延びるためには起きとけ~~!!
以上、本能さんの言い分でした。
どうでしょう、まさかこんなことが起きているなんて、と思っていただければ幸いなのですが、今まで眠れていたのに、思い当たることが特にないのに眠れないという人は、本能のスイッチが入っているかもしれません。クマは実際にはいないので、本能が誤作動してしまっていると思っていただくのも良いでしょう。
いよいよ体がもたないっていう状況になってで、ようやく眠れるという事になります。眠っていても、眠りが浅くて何度も目が覚めてしまったり、ぐっすり眠れていない感じが強いのは、危険に対処しようという本能の力で深い睡眠が取れなくなってしまっているのです。
⑵ 食欲がなさそう
A子さん、食欲がなさそうです。今回出てきませんでしたが、お昼とか何を食べているのでしょうね。晩御飯も結局コンビニで買ってきたおにぎりは食べていないようです。
ダイエットにもなるって言っていましたが、健康的ではないのは明白です。ウエストがゆるくなっているっていう事は体重も落ちていると思われます。
さて、ここでも本能さんに聞いてみましょう。
本能さんの言い分
体のエネルギーがもう無いんだって!!
食べるという事は、その間、周囲の警戒に隙が生まれる。そんな隙を見せるようなことをしているとクマを見つけるのが遅れる。確実に逃げるためには、食べている場合ではない。食欲落としていこう。
以上、本能さんの言い分です。
食欲については、別のパターンもあります。エネルギーが足りないので補充しなければならない。食べて食べてエネルギーをためよう。食欲全開!!
このパターンだと、過食傾向になって体重が増えます。忙しすぎて太る人の本能は、こっちのパターンですね。
⑶ 仕事が進んでいない
どうやらA子さんは思ったよりも仕事が進んでいないようです。
眠れていなくって、食欲もない。朝ごはんもいつ食べたか分からない、なんて言ってましたよね。そんな状況で、眠れていて頭はすっきり、栄養充分な状態の時と同じ量の仕事がこなせるでしょうか。
仕事の効率は確実に落ちているはずです。
仕事で疲れてエネルギーが無くなっているのに、その仕事をこなす能力が落ちる。同じ仕事量なのに時間がかかるようになる。残業でカバーする。仕事の時間が増えるので、余計に疲労がたまる。そしてもっとエネルギーが無くなる。
悪循環でしかありません。
帰ってお風呂に入ることも、面倒になってしまうくらいになるのです。
⑷ 体の不調
肩こり、腰の痛み、頭痛。A子さんは職業病と言っていますが、忙しくなる前は、そんなにひどくはなっていなかったのではないでしょうか。エネルギーが無くなってくると、動かないでエネルギーを節約したいと思いますよね。体が痛いと動きたく無くなるので、結局省エネになります。
ですので体のいろいろな場所が不調になるのです。
蕁麻疹が出たり、出勤前にお腹が痛くなったりというのも、動かない方が良いぞ、安全な場所にいようという本能の働きかもしれません。
お医者さんに行っても、特に悪いところが見当たらないという場合は、疲労を疑ってみましょう。
⑸ 嫌われていっている気がする
A子さんは、朝の挨拶で返事が無い事や、悪口を言われている気がする、上司からも評価されていないと感じているようです。
仕事が上手く行っていない状況で、自分を責めてしまっている時には、人の視線が気になってくるようになります。
すごく大きな話になりますが、日本人は農耕民族で村社会だった時代がありました。農業は一人ではできないものです。種まきや収穫など、村人同士で助け合いながら行うものです。そこで他の村人から、怠け者などのレッテルを張られてしまうと、その村ではすごく生き辛くなります。下手をすると村八分にされてしまうかもしれません。
そんな評価を受けないように、疲労がたまってきてエネルギーが無くなってくると、周りの人がどう思っているのかがすごく気になるようになります。周りの人から、悪く思われないためには、言い訳もいろいろ考えないといけません。
疲れていないときには思いもしないことが、疲れているからこそ起こることがあるのです。もちろんエネルギーを余分に使いますから悪循環です。
⑹ 仕事に行きたくない
起きて着替えて通勤する。これだけでも負担なのに、こんな状態では仕事に行きたくない気持ちもよく解ります。この状態が続くと、どんどん状況は悪くなり仕事に行けなくなってしまうかもしれませんうつ状態になってしまうと大変です。さて、どうしましょう。
⑺ アルコールについて
お酒は、寝つきはよくなるかもしれないのですが、脳を興奮させ眠りが浅くなるので、お勧めはできません。飲んでしばらくしたらトイレに行きたくなりますし。
お酒で眠ろうとするなら、睡眠薬で眠った方がよっぽど効果的です。
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