第52話
ブー!ブー!ブー!…
それから数分が立ち。やがて
「待たせたわね!引きニート! それで要件…てなんだっけ…」
「いや。俺に聞かれても…。アンタが俺に用があってメッセージをよこしたんじゃなかったのかよ?」
「あ。そうだったわね! すっかり忘れてたわ!」
いや。自分からメッセージをよこしておいて忘れるとか…。やっぱりなんかムカつくなコイツ…。
「悪いけど俺も暇じゃないんだよ…切るぞ?」
俺が地団駄を踏んでは電話を切ろうとした時だった。
その間わずか0秒にも満たさなかっただろう。"俺の鼻につく言葉No. 1の台詞"を彼女が「ポロッ」と口にした。
「え?貴方ニートなのに暇じゃないの? ニートなんだから暇を持て余しているはずでしょう?」
「…べ、別にいいだろ!
「へぇ〜!知らなかったわ〜! 案外ニートも大変なのね〜!」
電話越しの彼女は本当に感心している様子で「うんうん」と頷いていた。
その時の彼女の様子を例えるのなら、頭の中がお花畑の世間知らずのお嬢様って感じが一番しっくりくるだろう。
彼女は案外チョロいのかもしれない。俺はほんの少しだけだが、不覚にも彼女の事が心配になってしまった。
「ま、まぁ。分かってくれたのなら別にいい。それはそうと…。アンタ俺に対して"ヤリ逃げ"がどうのとか言ってなかったか?」
俺がそう言った途端。何故だか彼女の口調に焦りが見え始める。
「それはっ!貴方が私に何も言わせずに賞金だけ渡してからさっさとログアウトして行ったからでしょ!?…うぅ…だ、だけど!その件については言い過ぎたから謝るわ! ごめんなさい!」
「…謝るくらいなら、最初から言ってくんなよな…」
「そ、それは!…」
「なんだよ?」
「…///」
俺の言葉に彼女が言葉をつまらせながらも慎重に言葉を選びながら言った。
「だって…もう一度。貴方とこうして話しをしたかったから…///」
「…え!?」
今…なんて…? こんな体験…そう言えば…
いや! 目を覚ますんだ!俺!
…俺には闇ドルがいる!
…俺には闇ドルがいる!!
…俺には闇ドルがいる!!!
俺は心の中で『俺には闇ドルがいる!』を"〇〇ジ少年"と同じくらいのスピードで3回唱えた甲斐あってか。なんとか
はぁ…はぁ…。マジで気持ちが持っていかれる所だったわ…でもなんだろうこの感じ。何処か懐かしい記憶…だけどあまり思い出したくはない記憶…。
と。俺が脳内でそう思っている所に、
「引きニート! 貴方はどうなのよ!?」
「え? 何が?」
俺の頭の中が「…………?」となったのは言うまでもない。
そこで再び彼女が質問を投げかけて来た。
「だっ!だから!…貴方も私ともう一度話したかったかって聞いてるの!?」
「……」
俺にはこんな経験をした事がないからあまりよく分からないけど。自分の気持ちを伝えるという事は凄く勇気がいる事だと俺は思う。
彼女は声色を震わせながらも俺に「告白?」を頑張ってしてくれたのだ。
だったら。ここは、俺も自分の気持ちを正直に伝えるのがいいよな。
俺は
よし。
俺は意を決して。ゆっくりとした口調で彼女を出来る限り傷つけないよう慎重に言った。
しかし…。俺のそんな気遣いも捻じ曲げるようにして彼女が直ぐに言葉を覆い被せて来た。
「なぁ
「なぁ〜んてね! ドッキリでしたぁ〜! どう? 引っかかった?」
「…」
「ど。どうなのよ?」
「くも……よくも俺の純情な男心をもて遊びやがって…」
「っ!大体この私が引きニートの貴方にそんな風に思ったりするわけないじゃないの〜! 想像しただけでも、うぇ〜。だわ!」
「アンタはやっぱり最低な尻軽女だ! よくも。よくも俺の純情な男心を…」
「だから! ビッチ言うな!この引きニート!」
ああそうだ。ようやく思い出したよ。なんで俺がこの記憶を思い出すこともなくずっと心の奥底にしまい込んでいたのか…。
この時俺は学生時代に受けたトラウマが脳裏に過った。
「……」
「ねぇ!ちょっと! 聞いてるの引きニート!?」
…………
………
……
…。
ーーーーーーー
俺がまだ中学生の頃。クラスのカーストにおいて容姿端麗でトップ層に君臨していた可愛い女の子がいた。
その女の子はうちのクラスだけではなく。同学年の女子達や男子達からも慕われており多くの人望を持っていた。
そんなある日のこと。俺が中庭を歩いている所へ、突然、その女の子が俺に急接近して来ては言った…。
「ねぇ?達人君? 達人君は私のこと…好き?」
当時の俺は今と変わらず他人に興味を持たなかったので何故こんなに可愛いくて俺とは違う世界に住むような子が俺にコンタクトを…? と。その時の俺は少し違和感を感じてはいたのだが…俺は直ぐ目の前にいる"高嶺の花''に少しだけ…。いや…。今思えば"かなり"浮かれていたんだと思う。
それ故に。"俺の人生を大きく狂わせる"こととなるきっかけでもあった、この"ハニートラップ"を見抜くことが出来なかったのだ。
そして。その時、俺が最初に感じた違和感は悲しいくらいに当たってしまうこととなるのだった。
to be continued…。
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