第40話

「さてと。ここが荒野……なのかな? にしても雨足が強すぎて周りの音が何一つとして聴こえやしないな」


『よろしく。誰だか知らないけど、まぁせいぜい私の足を引っ張らないでちょうだ……ひゃあぁ〜!』


 突然、雷雨と共に強風が吹き荒れる。


「ん? 何か聞こえた気がしたが……風の音か。にしても雨足が強いな…。よし!とりあえず!何が何でも優勝賞金1000万を獲得して母さんに働かなくても生活出来るんだぜ! って所を見せてドヤ顔してやる!」


 ……


『もぅ〜! なんなのよ今の突風は……って! いけない! 見失っちゃったわ! お〜い! もしも〜し!』


 俺(達)が転移された場所……そこは広大で、辺り一面を見渡しても荒れ果てた山々が無数に広がっているだけで、荒野と言うよりかは、どちらかと言えば『荒れ地』のような所で、何処からか『』が出現してきても全く違和感のない所だった。


「……あ、荒れ地の魔女とか出て来ないよな?」


 と、俺がくだらない事をぶつぶつと言って辺りを散策していた時だった……背後に息を切らした何かの気配を感じた。


『はぁ……。あ、貴方ね!? 少しは反応してくれてもいいんじゃないの!?』


「っ!? どわぁあぁあぁあぁあ〜〜!!??」


 振り返って見ると…。そこに立っていたのは長い橙色の髪を濡らしては、俺と同じ黒いローブに身を包んだ女性プレイヤーだった…。とりあえず俺と彼女は近くの洞穴に身を隠しては雨宿りをすることにした。


 ……。


「おい! 誰だか知らないけど! マジで荒地の魔女が出て来たと思ったじゃねぇか! うっかりちびってしまいそうになる所だったぞ!」


「そ、そんなこと知らないわよ! それに貴方! 初対面の人にいきなり"荒地の魔女"って幾ら何でも失礼過ぎでしょ! 貴方と同じれっきとしたプレイヤーよ!」


「仕方ないだろ? 本当にそう言うふうに見えたんだから…と。そんなことより…」


「そんなことって!失礼ね! 私はあんなにしわくちゃな婆さんじゃないわよ!…カイル!私の名前よ! 一時ではあるけど貴方とはパートナー同志になるんだから…それで?貴方の名前は?」


「よろしくなカイル。俺の名前はNEET駅前だ」


「変な名前ね〜」


「ほんとの名前なわけないだろ。とりあえず。次に君の得意とスキルを参考までに教えてくれないか?」


「え?(ザルーザ以外教えてないんだけど…。まぁ…足を引っ張られても困るし……)いいわ! 教えておいてあげる!私が得意とするスキル。それは詠唱を得意とする魔法全般よ!」


 なるほど。オールマイティの詠唱スキルね……。


「私も話したんだから、貴方もちゃんと教えなさいよ?」


「奇遇だね。俺も君と同じく、詠唱系の"全般"さ」


「へぇ〜? あまりパートナーには期待はしていなかったのだけど。まぁ詠唱が使えるパートナーならとりあえずは大丈夫そうね。まぁ危なくなったらいつでも言って。少しなら援護するから」


「ありがとう(なら、遠慮なく頼らせてもらうとするかな)」


「それで貴方の名前は?」


 ……


 カイルがどのくらいやれるのか試してみるか…。


「……カイル!悪い! 援護頼む!」


「わかったわ! "引きニート"! 詠唱! 風の使い魔ウィング・サモン!」


「ありがとう。それから、俺の名前は"引きニート"じゃなくて、''NEET駅前"なんだが?」


「くっ、この"引きニート"だけならともかく。バックにいる女が面倒だぜ!」


「おいカイル! あんたのせいで俺、敵さんからも"引きニート"って呼ばれてるじゃねぇか!」


「そんなの知らないわよ。どっちも''ニート"なんだから一緒でしょ!」


 俺達は、その後鉢合わせた青髪の男2人の攻撃を片っ端から受け続けては、それを片っ端から受け流していく。


 男達の身なりは田舎の農家と言ったような装備をしているがPvPに出るくらいのプレイヤーだ。油断は出来ないな。きっと、目立たない装備でプレイヤーの油断でも誘うつもりなのだろう。


 俺は間合いを取りながら男に視線を預けたまま少しずつ近づいた。


「くそっ! "引きニート"のくせになんて野郎だ。何処にも隙が見つからねぇ!」


「いやっ! 引きニートは関係ないから! それに、そちらさんが来ないのなら俺から行くけど?」


「「チィっ! 舐めるなよ! 引きニート!」」


 男達が2人同時に、しかも"俺"ではなく、"カイル"へ向けて真剣を振り下ろそうとした。その時だった。


「「もらったぁ〜!!」」


 パッキ〜ン……。


 その振るわれた2つの真剣はカイルによって、情けのない音と共に真っ二つにへし折られた。


「「う、うそだろぉお!?」」


 その後カイルは、瞬時に男達の背後に回り込んでは魔法杖を2人の背中に押し当てると静かに言った。


「……チェックメイトよ」


「チィッ……」


「悔しいが……俺達の負けだ!」


「悪いな。俺の快適なNEET生活が掛かってるんだ。悪く思わないでくれよ?」


 ……。


〈荒野の男〉・・・脱落


〈ダンディな男〉・・・脱落


 ……。


 ひと段落がつくと、先程の事をカイルが掘り返して来た。


「そういえば、貴方さっき"快適なNEET生活"がどうとかって言ってなかった? 引きニートって私貴方の見た目から適当に呼んでみただけなんだけど。ねぇ? 貴方って本当に引きこもりのニートなの?」


「自宅警備員の間違いです!」


「どっちも同じ意味じゃないの! うぇ〜。ニートとペア組まされてたなんて気持ち悪ぃ〜」


 そう言いながら、俺を小馬鹿にしていたカイルだったが、急に何もない空間を見渡しては言った……。


「それはそうと。貴方達はそれで隠れてるつもりなのかしら?」


 すると。そのカイルの呼びかけに応じるかのように、何も無かったはずの空間が歪みだすと、中から赤髪で小柄な男(キャリー大佐)と、黒髪でローブを羽織った男(負けない男)の2人のプレイヤーが突如姿を現した。


「……へぇ。僕らの能力が見破られるなんて、団長以来だよ? ねぇ負けない男?」


「あぁ。そうだな。キャリー?」


「わかってるよ」


 そう言うと、キャリー大佐が腰に掛かっていた双剣を取るとカイルに向かって切り掛かってくる。


「出会った瞬間に即バトルって面白いよね? 先ずはお手並み拝見と行こうか! 紅蓮の乱舞グレンランブD2ドラグニスト・ツー!!」


to be continued……。


 


 

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